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立場の違い

テキストの解説にしても択一問題の選択肢にしても、同じ話の中に全然立場の違う人が出てきて、どの立場で物事を見るかが瞬時に切り替わったりしますよね。法律の勉強を始めてからというもの、この立場の切り替えが鮮やかで見事だな…と思うことがたびたびありました。

 

●夫A、妻B、子供Cがいて、CがAを殺害して刑に服しました。するとCはAの相続人になれないのは当然ですが、Bの相続人にもなれません。なぜなら、Bから見てAとCは同順位の相続人だから。相続欠格事由の中に「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にあるものを死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」というのがありますよね。まずAから見るとCは“故意に被相続人を死亡するに至らせ、刑に処せられた者”なので相続欠格に該当するのは分かりやすいです。ここでBから見たCはどうなるかというと、“故意に相続について同順位にあるものを死亡するに至らせ、刑に処せられた者”に当たります。なのでBの相続人にもなれないのです。

→事例だけ聞くとAとCのことだけに気を取られてしまいますけど、Bの立場からは見たらどうなるかという視線の転換が含まれていて、とても面白いなぁと思いました。

 

●取得請求権付株式というものがありますね。株主から会社への請求によって株式が会社に移転し、その対価として会社から金銭などの財産がもらえる株式です。取得請求権付株式が種類株式であれば、取得対価をその他の種類の種類株式とすることもできます。で、ある会社の発行する取得請求権付種類株式(A種類株式)の取得対価が他の種類の種類株式(B種類株式)だったとしましょう。ここでB種類株式に譲渡制限を付けるためには、株主総会の特別決議とB種類株式の種類株主総会の特殊決議が必要ですが、加えてさらにA種類株式の種類株主総会の特殊決議までもが必要です。なぜなら、A種類株式の種類株主は、いずれはB種類株式の種類株主になる(ハメになる)からです。

→B種類株式に譲渡制限と聞くとB種類株式の株主のことにばかり意識してしまいますが、A種類株式の株主の立場からすると、B種類株式の株主と同じくらいイヤなことかもしれませんからね~。同じような話が全部取得条項付株式にもありますね。

 

●所有権と制限物権が同一の人に帰属したら、原則として制限物権は混同で消滅しますよね。AがBに対し債権を持っていて、その担保のためにBの土地に1番抵当権の設定を受け、さらに2番抵当権者Cがいるとしましょう。AがBを単独で相続した場合、この土地は第三者(つまりCのことですね)の2番抵当権の目的となっているから、混同の例外に当たるのでAの1番抵当権は消滅しないことになりそうです。ところが、AがBを相続したということは、Bの債権者であるAがBのAに対する債務を相続したということになり、Aの債権は混同で消滅します。これはつまり、Aの抵当権の被担保債権が消滅したということです。すると、抵当権の附従性によってAの抵当権も消滅してしまうのでした。

→これは同じAという人が債権者でもあり債務者でもあるケースですが、さらに細かく見ると債権者というのは被担保債権の債権者でもあり抵当権者でもあるし、債務者は被担保債権の債務者でもあり抵当権の設定者でもある、という複雑な(?)立場にあります。そして抵当権が混同の例外で消滅しないのかと思いきや、まず混同で消滅するのは被担保債権の方で、その結果として結局は抵当権も消滅するというドンデン返しがあって、ちょっとした小説のようですね(笑)

 

現実の社会には、テキストや問題文なんかよりずっと微妙な立場の人がいっぱいいて、それぞれの立場からすると同じ物事が全然違うように見えているわけです。それを意識するだけでも、自分の視界が広がりそうな感じがします。法律の勉強って面白いですね!