根抵当権の不思議(2)
以前、根抵当権について不思議に思っていることをまとめて書いておいたのですが、馴染みのない根抵当権のことなので、不思議なことがまだまだあるのです^^;
▼抵当権と根抵当権の性質の違い、というのも自分なりに消化して当然と思えるようになるには時間がかかります。たとえば、株式会社Aの債務を担保するためにAの土地に抵当権が設定されていて、この抵当権の債務者をAからAの代表取締役Bに変更したとしますよね。形式的にはAはBの物上保証人になるので利益相反行為になりそうですけど、この債務はもともとAの債務だったもので、それをBが引き受けてくれたことになるのだから、Aにとって有利であるため利益相反には当たらないのだそうです。
一方、株式会社Aの債務を担保するために、株式会社Aの土地に根抵当権が設定されていて、この根抵当権の債務者をAの代表取締役Bに変更したとします。この場合、変更前に担保されていたAの債務は、変更後は一切担保されなくなります。一方、Bの債務はAの土地に設定された根抵当権で担保されることになるので、Aにとっては不利、Bにとっては有利ということです。だから利益相反に当たるという結論になるのですね。…どっちもやってることは同じじゃないの?と思うんですけど^^;
▼ある被担保債権を担保するためにいくつかの不動産に抵当権を設定するとき、登記の目的に「抵当権設定」と書いておけば、そのままで共同担保になりますよね。しかし根抵当権の場合は、単に「根抵当権設定」とだけ書くと累積式根抵当になり、普通の抵当権と同じく共同根抵当にしたいときは「共同根抵当権設定」としなければいけません。でもこれ、逆に「根抵当権設定」と書いたら共同根抵当になり、累積式を希望するときだけ「累積式根抵当権設定」と書くってことにしてくれていれば分かりやすかったのに…と思いません? なぜ普通抵当と同じ処理になる共同根抵当のときに特殊な書き方をするんでしょうね。
もう一つ、累積式根抵当権があるのなら、累積式抵当権というものは設定できないのでしょうか? 普通抵当の場合、共同抵当にしないのなら普通の抵当権をバラバラに成立させれば充分ってことなのですかね。
▼共同担保とするときの抵当権と根抵当権の違いは、処分制限の登記にも表れています。共同抵当権設定の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の登記を申請する場合は、登録免許税法第13条の適用があります。つまり登録免許税が金1,500円でよいということです。しかし、同一の債権を担保するために数個の不動産について根抵当権設定の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分を申請するときは、登録免許税法第13条の適用はありません。というのは、共同根抵当は共同である旨の登記が効力要件であり、保全仮登記の段階では共同根抵当にはなっていないからなのだそうですよ。そんなことまでよく気が付くなぁ…と思いました(笑)
○細かいけど言われてみれば確かに…ということもあります。根抵当権の債務者、債権の範囲、確定期日の変更は元本が確定する前でなければ登記できません。変更契約が確定前に成立していても、登記する前に確定してしまったらもう登記はできないし、その変更はなかったことになってしまいます。確定すると普通抵当と同じく付従性と随伴性が発生することから当然かなと思います。一方、根抵当権が準共有されている場合の優先の定めは、合意自体は確定前でなければいけませんが、登記は確定後でもOKです。根抵当権者同士の分け方の話だから、多少緩くてもいいということでしょうか。さらにさらに、順位変更や転抵当は確定前後を問わずいつでもできます。もちろん登記も可能です。これらはいつやっても当事者以外に影響がないからご自由にどうぞ、ということですかね。
とまあ、根抵当権にはこのようにいろんな変更があるけど、そのタイミングや自由度は変更の内容や他の人への影響の大きさによって細かくコントロールされているのです。このへんは整理されていて分かりやすい気がします(^^) …あ、極度額変更も元本確定の前でも後でもできますが、極度額ってその根抵当権がどういうものかを決めるにあたって一番大切な要素ですよね。それがいつでも変更可能というのは、他の変更事項とは違う理由があるのではないかな…という気がします。まあ、おいおい考えてみることにしましょう^^;