地面師とか
地面師…て司法書士の話になると時折出てくる言葉ですよね。自分は司法書士のことに興味を持つまで地面師が何者であるか知りませんでした。たまに新聞などで不動産絡みの詐欺事件が報じられることがありますし、そういうのの騙す側のことかな…と漠然と思っていましたが、要は土地などの不動産の所有者になりすまして、その不動産を売却したり、抵当権設定によって銀行から借入をしたりして、不正にお金を騙し取る詐欺師のことです。2017年の積水ハウス事件では約55億円も奪われてしまったというから、物凄い金額になるんですよねぇ…
そういう地面師のノンフィクション作品を読みました。
巧妙な詐欺の手口や詐欺師の人物そのものも興味深いのですが、それよりも目を惹いたのは、登場人物の中に司法書士が何人も出てくることです。そして、騙す側の司法書士もいます。ニセモノの地主を用意して土地の名義を別人に移そうとするなら、それを取り仕切る司法書士が不可欠と言えるかもしれません。本人確認なんていかにも悪用されそうな制度だなぁ…と思ってましたが案の定これで地主に成り済ました別人の登記申請が通っちゃったりしているわけです。毎日勉強していることが悪用されるのはとても残念なことだし、社会的な善悪以前に自分の努力やそれによって得た地位が汚れてしまうってことに何か思うことはないのか、と思いますが…莫大なお金の話になると、どうしても揺らぐ人が出てくるでしょうね^^;
また、司法書士の実力が直接問われることになる手口もいろいろあるのです。印鑑が同じかどうかはもちろん、印鑑証明書が偽造されているとか、パスポートの記載の形式がおかしいとか、見破る自信はありません。預金残高を証明してもらっても、その直前にペーパー会社が振り出した小切手で入金したものだった…なんて、自分がその場で立ち会っていたら何の疑問も持たずにコロっと騙されそうです。恐ろしいことですね…
詐欺に加担する弁護士、詐欺を見逃す弁護士というのも登場します。弁護士は司法制度改革によって競争が激化しており、食い詰めた弁護士が良からぬ誘惑に負けてしまうこともある…みたいな話が出てきます。そこは弁護士だって人間だから、食えなくなったら何でもするって人が現れるのは当たり前ですが、弁護士のような深い法律知識と強力な権限を持った人が不安定な立場にあるというのは、社会的に良くないことだよなぁと思います。詐欺師を捕まえるのは大変ですが、司法制度はきちんと整備できるはずなので、食いっぱぐれる人が出てこないようになるといいですよね。