目指せ!47歳からの司法書士受験!

法律初学者のおっちゃんが合格するまでやりますよー

判例変更されてます

憲法の勉強って、試験対策的には判例を覚えるというのが基本だと思います。学説問題も判例と絡めると、実際の事例とセットになるので記憶しやすいですね。…と単純に思っていたのですが、この手の試験にも時折出題される話でつい最近判例が変更されているものがあります。それは“地方議員の出席停止処分に司法の審査が及ぶか”ということです。今までは、地方議員の除名には及ぶけど出席停止には及ばない、とされていました。昨年受験した行政書士憲法の勉強でも、そのように覚えましたよ。ところが、令和2年11月25日に出た最高裁判所大法廷の判決は、60年ぶりに従来とは違う判断をしたのです。で、結論としては「出席停止にも司法審査が及ぶ」ということになりました。ちょっと前の話ですが、今回の司法書士試験の出題範囲ではあるので、備忘録的に内容をまとめておきます。

 

意外なことに、日本国内で発生した事柄にはすべて日本の法律が適用されるのかと思ったらそうではないのですね。ある団体が独自のルールを持っていて、そのルールによって団体に所属する個人に何らかの処分をしたというような場合は、団体の外の市民法秩序に影響がない限り司法審査の対象にはならないのです。たとえば、ある地方議会に「○○した議員は出席停止とする」という内部の規則があり、にも関わらず○○した議員に対して出席停止処分を下したとしても、その処分には司法審査が及びませんでした。団体の中のことは団体の中だけでやって下さいよ、ということなんですね。これを「部分社会の法理」というのだそうです。それにしても司法審査が及ばないというのは、処分された議員としては事実上訴えることができないってことですよね(訴状を出すことは可能でしょうけど本案の審理まで辿り着かない?)。これ、地味にスゴイこと言ってません? 条件が揃うと裁判受けられないってことなんですから^^;

 

部分社会の法理が成り立つ理由は、その団体に所属している個人には所属するかどうかを決める自由があるから、ということです。○○したら出席停止というルールを団体が持っているのは事前に分かることで、それを承知の上で入ったんだからルールに従うのは当然でしょ、イヤなら最初から入らなければよい、という意味ですね。とはいえ、部分社会のルールだったら何でもかんでも好き勝手にやっていいわけではなくて、団体の外部にまで影響が出るのなら、それは司法審査の対象になりますよ、ということになっています。たとえば、

▼大学の単位が認定されなかった!→司法審査の対象にならない

○大学専攻科の卒業が認定されなかった!→司法審査の対象になる

大学が単位を認定するかどうかは大学の内部の問題だから司法審査には馴染みませんよね? でも専攻科を卒業できないことは一般市民が大学を利用活用することに影響する(=市民法秩序に影響する)から部分社会の中だけの話じゃなくなりますよ、ということです(富山大学事件、最判昭52.3.15)。単位を認定しなかったことが何らかの法律に違反する!という訴えは、表面的には資格試験の合否判定について訴えるというのと似たトホホな感じがしますね(笑) 逆に、専攻科を卒業したと言えるか言えないかは、大学を離れてからも実社会のいろいろな場面で違いが出てくるでしょうから、いざとなったら裁判所に訴えることができないと実際困る場面が出てきそうです。

 

それで今回判例が変更されたのは地方議会についてです。従来、地方議会は自律的な法規範を持っていて、その実現は内部規範の問題ということで、それによって下された処分について裁判所が裁判をすることは適当ではないと考えられていました。つまり議事進行のためなどに議会が自律的なルールを定めていて、それに従わない議員が何らかのペナルティを課されたとしても裁判所が立ち入る話ではないってことなのです。で、議会への出席停止は司法審査の対象外(村議会議員出席停止事件、最大判昭35.10.19)だったことは上記しました。しかしこれが除名処分までいってしまうと、議員の身分を喪失するという重大な話で内部規律の問題ではなくなる、だから司法審査の対象になる(板橋区議事件、最大判昭35.3.9)とされていたのです。つい先日までは。

ところが令和2年11月25日、最高裁判所はこの日の大法廷判決で、地方議会の出席停止処分についても司法審査の対象になると言いました。地方議員は地域住民の代表として活動しているのに、議会への出席ができなくなったら住民の負託を受けた議員としての責務を果たせなくなるではないか、というわけです。確かに議員の仕事の内容を考えれば、議会への出席停止は単なる内部規律の問題とは言い切れないですよね。だから、議会に一定の裁量を認めつつも、出席停止についても裁判所が適否を判断できる、という結論を出したようです。…まあ、議会としては裁判所から余計な干渉を受けるような気分になるかもしれませんけど、個人的には部分社会の法理によって裁判が受けられない場合があるかもと不安になるよりは良いのではないかと思います。

 

ということで今後の試験では、地方議会の処分について問われたら出席停止も除名も司法審査が及ぶと解答するのが正しいってことになります。つい出席停止は司法審査の対象外と思ってしまいそうなので気を付けないといけませんね。それにしても、昨年11月8日に行政書士試験を受けた時は及ばないとされていたものが、その半月後の判決で正反対の結論が出て、それが今年7月の試験範囲に入っている…って、世の中が動いているのを実感できます(^^)