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包括受遺者

自分に死期が迫っていて、しかもある程度財産があって、それをどうするのかまだ決まってないという状況になったら、誰に何を遺そうかと考えたりするものでしょうか。自分の妻と子供(いないけどw)の生活は大丈夫だろうかとか、あの時あの人には大変お世話になったから感謝の気持ちを表したいとか。

しかし、資格を取るために法律の勉強をするってことにならなかったら、相続について知識を得たり考えたりすることはなかっただろうなと思います。小説とか映画とかを見て、妻2分の1、子供2分の1で分けるんだな~程度のことを断片的に認識していたくらいで、最初は相続と遺贈の区別もついてませんでしたからね^^;

 

ところで、民法の試験勉強をしてて初めて包括受遺者という立場の人がいるのを知りました。相続人ではないけど、被相続人の権利義務をまるごと全部または割合的な一部を承継する人です。割合的な一部とは「財産の2分の1」みたいな遺産の分け方のことで、権利義務の全部または割合的な一部を遺贈することを「包括遺贈」といいます。これに対して「どこそこの不動産を遺贈する」みたいに特定の財産を指定する分け方は「特定遺贈」です。で、包括遺贈される人のことを包括受遺者というのですが、相続人みたいなものだけど相続人じゃない、という微妙な立場の人なのです。立場が微妙ということは、試験に出てくる確率も高いって感じがしますよね。

 

被相続人の権利義務の全部または割合的な一部を承継する、という包括受遺者の立場は相続人にとても似ています。そこで、包括受遺者の取り扱いは相続人と同様となっているところが多いです。まず包括遺贈の承認・放棄は相続と同じく3ヶ月の熟慮期間があり、放棄するには家庭裁判所に申述する必要があります。特定遺贈だったら、受遺者がいらないと思えばいつでもそう言うだけでOKなのですが、包括受遺者は相続人と同じく家庭裁判所で手続きをしなければいけないのです。何の手続きもしないと、遺贈を承認したものとみなされます。まあ、莫大な現金だけがドーンと手に入るのなら断る人はいないと思いますが、後々コストがかかりそうな山林がドーンと遺贈された!となったらちょっと考えちゃいますよね。 

 

○包括受遺者は遺産分割協議に参加できます。相続人のようなものだから、ですね。遺産のうち2分の1を包括受遺者に遺贈し、残り3分の1を相続人Aに、6分の1を相続人Bに相続させる…という遺言があったとすると、具体的にどの財産を誰が引き継ぐかを話し合って決める必要がありますので、包括受遺者が遺産分割協議に参加できるのは当然なのでしょう。とはいえ、上記のような遺言があってAとBが包括受遺者のことを何も知らないみたいな状況だったらモメそうですね。遺留分侵害額請求ガー、てことになるんでしょうか^^;

 

○包括受遺者が農地を承継する場合、農地法の許可はいりません。これも相続人と同じようなものだから、ということですかね。これが特定遺贈だったら、受遺者が相続人でないときは農地法の許可が必要になります。また、農地が共有の場合、共有者間で共有物分割をするには農地法の許可が要りますけど、相続人間で遺産分割をしたときは不要です。遺産分割には包括受遺者も参加できるから、遺産分割協議で包括受遺者が農地をもらうってことになっても許可を受ける必要はないわけですね。

 

▼包括受遺者は相続人のようなもの、とは言っても相続人そのものではありませんので、法律上の取り扱いが違うところもあります。被相続人が不動産を含む全財産を1人の受遺者に包括遺贈していたとしましょう。その包括受遺者が相続人なら、遺言書に遺贈と書かれていても相続を登記原因として所有権の移転登記ができます。しかも相続登記だから単独でできるのですよね。しかし包括受遺者が相続人でなければ、文字通り遺贈になります。登記原因は相続ではなく遺贈としなければならず、包括受遺者の単独申請はダメで相続人全員との共同申請になるのです。このへんは相続人と包括受遺者との間に明瞭な違いがありますよね。それにしても相続人がいるのに全財産を相続人以外の人に遺贈する状況って、要は被相続人と相続人との仲が悪かったってことでしょう。それで相続人には財産を残したくない(遺留分は別ですが)と考えてそういう内容の遺言を作ったはずなのに、登記手続きで相続人が関わらなければいけないのは、かなり不穏な空気を感じます^^;

 

▼ちなみに、相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税率は1000分の4ですが、遺贈の場合は1000分の20となります。結構違うのですよねぇ。それだけ相続の方が優遇されているわけですよ。さっき包括受遺者が相続人だったら相続による登記ができると言いましたが、同じことが特定遺贈でも可能です。特定遺贈の受遺者が相続人であることを証明すれば相続登記ができるのです。もちろん登録免許税率は相続ですから1000分の4。相続人のことはできるだけ相続ということにしよう、みたいな意図が感じられますね。

 

▼所有権保存登記は、表題部所有者の相続人であれば自己の名義でできます(不動産登記法第74条第1項第1号後段)。しかし包括受遺者は、相続人そのものではないのでこの要件に適合せず、直接自己名義で保存登記をすることはできません。この場合、いったん表題部所有者名義で所有権保存登記→包括受遺者へ所有権移転登記、という手順を踏むことになるんですかね。

 

▼親、子、孫という3世代で、親より先に子が死亡し、次いで親が死亡すると、孫は子を代襲して親を相続できます。これに対して遺贈者よりも先に包括受遺者が死亡した場合、包括受遺者に相続人がいたとしても、その相続人は包括受遺者を代襲することはできません。まあ、遺贈って「この人だから」と思ってやることなのであって、たとえ包括受遺者の子供といえども、遺贈者から見て財産をあげたい人とは限らないですもんね。 

 

▼包括受遺者は権利だけでなく義務も承継します。被相続人が生前に不動産を売却して、その登記をしないうちに亡くなったという場合、包括受遺者が登記義務を引き継ぎます。この場合、遺言執行者がいても包括受遺者が登記手続きをすることになるのです。この手の財産を受け継ぐ話ではなくて“義務を受け継ぐ”方の話は何となく頭から抜けやすい気がしますね^^; 相続による根抵当権債務者の変更をするときに、相続放棄をした人は義務者にならないけど特別受益者は義務者になる場合がある、というのと似た間違いやすさがあるな~と思います。

 

▼この他の違いとしては、包括遺贈者が複数いて、そのうち1人が遺贈を放棄したとしても、他の受遺者の取り分が増えるわけではないこととか。相続人の場合は、相続放棄した人の相続分だったものは他の相続人のものになりますよね。しかし遺贈を放棄すると、その分は他の受遺者ではなくて相続人に帰属します。それから、包括受遺者に遺留分はありません。包括受遺者は相続人ではないし、遺贈は相続より先に行われるから遺贈分を侵害されるって事態は特に考えなくてもよさそうですしね。

 

思い付いたことをつらつら書いてみたら意外と長くなってしまった^^; こうやって書き出してみると、包括受遺者と相続人は確かに似てるけど違う部分も多いことが分かります。というか、相続人は財産を受け継ぐという意味ではいろいろ有利なんですねぇ。それも当然と言えば当然かな。