集中治療室にて(2)
さて、目を覚ましても特にやることもなく、ウトウトと寝たり起きたりしていたような気がします。何しろ自分の目が届く範囲に時計がなくて、時間が分からないのです。それで寝たり起きたりを繰り返しているので、集中治療室に何日もいたような気がしていました。こんなに長いこと集中治療室にいて、治療費とかどうなるんだろう…?などと薄ら寒い思いをしたのですが(COVID-19の治療費は公費負担なので杞憂に終わったのはよかったです)、後からいろいろ話を聞き合わせてみると、目を覚ましてから集中治療室にいた日数はごく短く、割とすぐ一般病棟に移ったようでした。時間の感覚がなくなるのは記憶が混乱する元ですよね…。
しかし、目を覚ましてからの集中治療室で一番衝撃的だったのは、退院するためにはリハビリしなければいけない、と言われたことです。リハビリ?なぜ?脳卒中になったわけでもケガをしたわけでもないのに?と思いました。しかし先生の説明によると、2週間近くも寝たきりだったせいで、全身の筋肉が弱ってしまっている。人間の筋肉は、使わないとびっくりするほど急速に衰えてしまうのですよ。今はもう立つこともできない状態なので、リハビリして少しずつ足の筋力を戻していかなければいけないんです、とのこと。あまりにも意外な話で、最初は自分のこととは思えませんでした笑 しかも、筋力だけでなく体力も低下していて何をするにもすぐ息切れしてしまうので体力を戻す必要があるし、食事の仕方も練習しなければいけませんよ、と言われました。はあ?食事の仕方って…自分はもう47歳のおっさんなんだけど?と、少し腹立たしい気分になったりもしたのでした。まあ、後で事態の深刻さを思い知らされることになるのですが^^;
身体を動かすということについていうと、まずベッドの上で寝返りを打つことはできました。鼻カニュレとか点滴とか膀胱バルーンの管が付いているので、それらが外れないように気をつけながらゆっくりと、ではありますけど。それから、頭の位置と枕の位置がズレてしまった時に、仰向けになったまま身体をズリズリと移動させて頭を枕の位置まで持っていく、という動きも割とすぐできるようになりました。どちらの動作も寝転がったままですしね。
しかし、身体を起こして何かしようとするのは相当に大変なのです。リハビリの手始めに、ベッドの横から足を床に降ろして自力で座ってみようってことになりました。電動ベッドなので身体を起こすところまではベッドにもたれていればいいのですが、そこから足を降ろして座る姿勢を取ると…ちょっと頭がフラフラします^^; でも座っているだけなので、少し待っていれば落ち着いてきますけどね。いったんベッドに戻って一休み。それからまた座ってみる→ベッドで休む、を何回か繰り返しました。
次に、まあ座るのは大丈夫そうだから、試しに立ち上がってみますか?と先生が言ってきたので、是非!と返事をしてベッドから足を床に降ろしました。自分の両手を先生と看護師さんが取って支え、さらに腰や肩に手を回して転倒しないようにします。そして足に力を入れて立ち上がってみると…なにこれ自力では全然立てない! 支えの手が離されたらすぐにぶっ倒れてしまうでしょう。ふくらはぎがピキピキと痛くて攣りそうになるし、ただ立っているだけの姿勢を維持することすら不可能なのです。この時、正直言ってちょっと絶望を感じました^^; それでも30秒ほどは立っていて、それから座ってベッドに戻ったのですが、「…まあこういうことなので、これからリハビリ頑張って退院を目指しましょうね!」と力強く言って、先生は部屋から出て行かれたのでした。それを見送った自分の方は、この状態から本当に退院できる日は来るのだろうかと目眩がしました。退院してもまともに日常生活や仕事ができるのかな…とか。そんなことを看護師さんにこぼしたら「重症のコロナから退院して社会復帰した人はたくさんいますよ。まだまだお若いんだから大丈夫です。頑張りましょう!」と言われました。まだまだお若いと言われても…この言葉の意味は、もう少し後になってから聞いてみたのですけど、この時は聞き返す余裕はありませんでした^^;
その後はずっと寝たきり(ベッドを起こして座る姿勢になることはありますが)の状態で、理学療法士の指導による本格的なリハビリは集中治療室ではやってませんでした。でも少しでも何かしら動かした方がいいとのことで、手を動かして腕の筋肉を刺激したり、足の指でグーパーグーパーと繰り返したり、みたいな簡単な運動をやってました。あまりやりすぎると酸素飽和度が下がって看護師さんに「どうしました?」とか言われるので、時折気が向いた時にやればいいですよ、ということでしたけど。
またまた長くなってきたので、続きは次回〜。