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集中治療室にて(4)

そうそう、自分のいた集中治療室は患者が自分一人の完全個室でした。隣に別のベッドがあって、急に他の人がむくりと起き上がって自分に向かって「末期ガン患者はこんな感じだよ。よろしく」と言ってた記憶があるのですが、これはきっと妄想ですね笑。部屋は六畳間くらいの大きさで、壁側に寄せてベッドが置かれていました。そしてベッドを起こすと正面に見える壁面には、大きなガラス窓と室外へのドアが付いているのでした。それで、そのガラス窓から外の様子が見えます。ベッドの上にいたときは他にすることもないからよく窓の外を見ていましたが、部屋の外は医師や看護師が書類を書いたりする事務机が並んでおり、その奥にエレベータがあったような。時折、事務スペースでミーティングとかしているのを見かけました。さらに、事務スペースの横に回転寿司があって、休憩中の関係者がちょっと寿司などつまんでいるのを見て、この部屋から出ることができたら自分も寿司を食べたいな、などと思っていたのでした。後に集中治療室を出るときになって、当然ながらそんなものは存在しないことがはっきりするのですが^^;

 

ちなみに、病院の中はCOVID-19の患者を収容する部屋(エリア)が一般の人も立ち入りできるエリアから隔離されています。コロナの患者は一般のエリアへ出て行くことはできません。またコロナのエリアに入ってくる医師、看護師は必ず決まった人だけで、みんなフェイスガードやヘッドカバー+ボディカバーで防護しています。それで、いくつかある集中治療室のうち、自分がいたときはコロナの患者は自分だけのようでした。自分の部屋にはいつも決まった看護師さんが来てくれて、その他の看護師さんは他の集中治療室に出入りしても、自分の部屋には決して入ることはありません。自分の部屋から出るゴミとか、看護師さんが1回1回使い捨てるヘッドカバー+ボディカバーも、他の部屋のゴミとは別に処分されるようです。でも、集中治療室でのコロナとそうでないエリアとの区別はちょっと曖昧なところがあって、自分の世話をするために頻繁に部屋を出入りしていた新人の看護師さんが「この部屋はハイリスクだから、気軽に入ってはいけないよ。気を付けてね」と先生に軽く注意されてました笑 一般病棟の方が、一般の患者さんやお見舞いの人がすぐ近くにいるせいか区別が厳密で、いかにも隔離って感じだったと思います(当然ですが一般の人がコロナのエリアに入ることもできません。「関係者でも立入禁止!」と書かれた貼り紙がしてありました^^;)。

 

一度、看護師さんが頭を洗いましょうと言い出して、寝たままなのにどうするのだろう?と思ったら、ビニールのシートなどを敷いて洗面器に入れたお湯を使って手際よく洗髪し、ドライヤーで髪を乾かしてくれました。頭がスッキリしてとても嬉しかったです。また、ある種の点滴(看護師さんは“栄養”と言っていたのですが)をするとき、万一点滴の管が外れてしまうのを防ぐために手を拘束されました。コレ、すごく苦しくてイヤなのですよね。看護師さんにそう言ったら、最初は栄養の点滴の時はすみません、と言っていたのですが、それでもイヤそうな素振りをしていたら、点滴の管を接続しているところを触らなければ大丈夫なはず。絶対に触らないと約束してくれるなら拘束を外します、と言ってくれたのです。え、ホントにいいの?てことで、外してもらいました。そして看護師さんは、30分くらいで終わるので、その間は気を付けてくださいね、と言い残して部屋から出て行きました。おー! 手を拘束されていると姿勢を変えることもできなくなって辛いんですよ。でも拘束がなければ楽勝だ~と思っていたら、点滴の影響なのか次第に気分が悪くなってきました。ベッドの背を起こして座った状態だったのですが、どうにも横になりたい感じ。でもヘタに動くと管が外れてしまうかもしれないし…ナースコールで看護師さんを呼ぼうかとも思ったものの、拘束しているはずなのに外れているのが他の看護師さんにバレたら外してくれた看護師さんに迷惑がかかるかも…ということでひたすら我慢してました^^; 30分経過して点滴を外し、横になれたときは心底ホッとしたな…あ、でもこのへんの話は全部妄想かもしれません。

 

あるとき、看護師さんが「音があるとちょっとは気が紛れるでしょ」と言ってラジオを持ってきてくれました。だんだんと頭が回復してくるにつれて、起きているのか寝ているのかはっきりしないぼんやりした状態ではなく明確に覚醒している時間が長くなり、それとともに何もすることがなくて退屈…と思うことも多くなりました。だからラジオは本当に有り難い! 最初に流れてきたのはJ-WAVEで、音楽とおしゃべりが聞こえてニュースや交通情報が流れてくると、病院の外ではいつも通りの時間が流れているんだなぁと不思議な気分になりました。そしてホントに時間を潰すのがラクになりますよね。消灯時間(といっても集中治療室内の照明は消されませんが)を過ぎてからもずっとラジオをつけっぱなしにしてました。ちなみに、集中治療室は割と防音性能が良いらしく、ラジオの音は外や隣の部屋には全然漏れていないそうです。

 

いつの時点のことなのかはっきり分からないのですが、一度家人が見舞いに来てくれました。ベッドの背もたれを起こして座っていたところ、看護師さんが「おうちの方がいらっしゃいましたよ」といって窓の外を指さしました。そちらを見ると、窓の向こうに家人が立っており手を振っています。ちゃんと生きてるぜー、と手を振り返しました。「会社には連絡を入れておいたから心配しなくていいよ、ですって」。家人には悪いのですけど、会社のことは言われるまですっかり忘れてました^^; そんな家人との面会は10秒ほどで終了し、後で聞いたらいかにも病人然としていたそうです。

…と、ここまで現実なのは確実なのですが、その後また別の日に家人がやってきて「いつになったら退院できるのか」とクレームを入れている、ような気がしたのです。というか、自分の中ではそれは紛れもない現実なのです。先生も看護師さんもすごく良くしてくれているのにクレームなんて…と、その時は思いました。よくよく考えてみれば室内のラジオの音が外へ漏れないのだから、外での話し声が室内まで聞こえるはずがありません。だからこれは妄想なのだと、今は分かります。しかし、その時は家人が何てことをと思って、後から看護師さんや担当の医師に謝ったりしたのでした。多分、患者さん頭が混乱してるな~と思われただけなのでしょうけど…もしかしたらそれも妄想なのかも^^;

 

それにしても、自分の実感としては目を覚ましてから1週間くらいは集中治療室にいたような気がしていました。でも実際はそうじゃないみたいなんですよねぇ…。その1週間は食事が1日おきに1回のペースで出てきて、あ~今日は食事のない日か~つまらないな~と思ったり、土曜か日曜はなぜか救急外来全体が弛緩したムードに包まれて、ある医師が隣の部屋に自分の趣味をてんこ盛りにした集中治療室を作っていたり、ラジオから流れる放送内容や音楽によっていろんな人たちが扇動されたりしていたのを目の前で見ていた…はずなんですが、こうして書き出してみると全部妄想で間違いないですね^^; どうも、目を覚ました6月6日に1日3回の食事があり、翌7日に一般病棟に移ったようなのです。目は覚めてはいるけど頭が覚めきっていないというか、現実と妄想が入り交じってしまっているのです。こんなに記憶が錯綜するのは初めての体験で、ちょっと気持ち悪いですね笑

 

思ったよりも話が長くなってしまいましたが、次回は一般病棟へ移りますよー^^;