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共有持分の売却(1)

最近、不動産に関する動画を見たり調べ物をしたりしてたら、ウェブ広告に不動産会社がよく登場するようになりました。まあ現時点で何らかの不動産を買ったり借りたりすることは考えていないので普段はそういう広告は全然気にしないのですけど、この前“共有持分を高値で売却”という文字がバーンと出てきたので、思わず見入ってしまいました笑 不動産の共有持分を専門に取り扱う不動産会社というものがあるのだ、ということは知っていたのですが、こんな広告を見るのは初めて。せっかくなのでクリックして、その不動産会社のページを見てきたのでした。

 

ところで不動産の共有って、たとえば甲土地という1つの土地をAさんとBさんの2人で所有している、という状態ですよね。それで、甲土地の購入資金をAさんが9、Bさんが1の割合で出したとしましょう。お金を9対1の割合で負担したのだから、権利も9対1の割合で持つことにしよう、という話になったら、Aさんの持分10分の9、Bさんの持分10分の1の共有になります。ただ、持分10分の9とか10分の1とかいっても物理的に9割とか10%の面積だけ権利があるとかいう意味ではありません。各共有者は共有物の全部について持分に応じた使用ができます。つまり物理的には、AさんもBさんも甲土地全部を使用できるわけですね。そして具体的な使用方法は、AさんとBさんが話し合って、合意した内容に基づいて決められることになるのでしょう。まあ、土地にしても建物にしても不動産の価格は一般に高額なので、何人かで資金を出し合って共同で購入しよう!と考えるのは自然なことかもしれません。夫婦で家を買う、友人何人かで別荘を買う、キャンプのための山林を買う、みたいな感じですね。そして、その不動産を購入する資金をみんながそれなりに負担しているのなら、誰もがそれなりに権利も確保しておきたいと思うのもまた自然な流れ。そこで、夫婦で共有になっているとか、友人何人かで共有になっているとかいう状態になるのだと思われます。

 

しかし、実は共有は不動産の所有形態としてはあまりオススメできない、ともされているのです。「共有は紛争の母」とまで言われるほどトラブルが多いのだそうですよ。たとえば、先ほどのAさんBさん共有の甲土地を、Aさんが賃貸して収益を上げたいと考えているのに対し、Bさんは自分で使用したいから賃貸はしたくないと考えているとしましょう。共有物を賃貸するのは管理行為であり、持分価格の過半数の同意によって決めることができます。なので、持分の過半数である10分の9を持つAさんは、持分10分の1のBさんが反対してもAさん1人だけの意思で甲土地を賃貸できるのです。でもこれ、Bさんとの関係に禍根を残しそうですよね^^; それからしばらくして、Aさんに突然お金の必要な事態が発生して、甲土地を売ってお金に換えたいと考えたとしましょう。共有物の売却は処分行為にあたり、共有者全員の同意が必要です。ここで、Bさんが甲土地は自分で使用したいから売るのはイヤだ!というと、Aさんが持分10分の9でBさんが持分10分の1だとしても、甲土地の売却は不可能になってしまいます。AさんとBさんがモメるのは必至。今まで賃貸していたのを我慢していたのだから、絶対に売却など許さん!などとBさんが強硬に主張したりなんかとすると、もう話し合いでどうにかするのは難しいかもしれませんね。実社会の共有物については、これよりもっとエグい話も多々あるそうですよ^^;

AさんBさんのように、自分の意思で土地を買って自分の意思で共有にするのなら、その後の管理行為や処分行為についても事前にきちんと調べておくべきで、トラブったとしても自業自得といえばそうかもしれません。しかし、共有にする意図はなかったのに共有になってしまうこともあるのです。それは相続の場合。乙土地を所有していたCさんが亡くなって、相続人がCさんの子供であるDさんとEさんの2人だったとします。Cさんの遺言もなく、DさんEさんに欠格事由や特別受益のような事情もなかったとすると、乙土地はDさん持分2分の1、Eさん持分2分の1の共有状態になり、上のAさんBさんと同じような状況になります。DさんとEさんの兄弟仲が良ければ、共有を続けるにしても解消するにしてもちゃんと遺産分割協議で決められるでしょうけど、仲が悪いとどうなるか…。何しろDさんとEさんの共有状態はDさんEさんの意思には関係なく法律上当然にそうなってしまうのですが、そんなこと言われたって顔も見たくない!なんて状態だったら遺産分割も何もまったく話が進まなくて、そのまま何年も放置されてしまうことにもなりかねません。また、子供が相続放棄して亡くなった方の配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になったという場合は、もっと面倒なことになりがちだそうですよ。これについては相続放棄の落とし穴みたいなタイトルの本とか動画とかいろいろありますね^^;

 

さて、最初のAさんBさんのケースで、甲土地を丸ごと売却するにはAさんBさん両方の同意がなければいけませんが、Aさんの持分10分の9だけなら、Bさんに断ることなくAさんの意思だけで売ることができます。つまりAさんの共有持分を第三者Fさんに売却して、AさんからFさんへのA持分全部移転をすることが可能です。すると甲土地は、Fさん持分10分の9、Bさん持分10分の1の共有になるわけですね。Bさんから見ると、いつの間にかAさんがいなくなって、全然知らないFさんて人と共有になってるなぁ…ということになります。ちょっとコワイですね笑 ただ、共有持分なんて中途半端な状態の権利を欲しがる人は普通はいなくて、それでも売ろうとすると買い叩かれてしまうようです。実際、共有状態の土地の価格は、共有でない場合の価格の7〜8割と言われており、共有持分だけの価格となると7〜8割の金額にさらに持分割合を乗じた価格となって、相当に目減りしてしまうことになりそうです。だから何とかして共有者全員の同意を取り付けて、ひとまとめの所有権としての売却を目指すわけですよね。そして、そこがとても大変だ、と言われているのですが^^;

 

おっと、共有についてダラダラ書いてたら長くなってしまったので、続きは次回。