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共有持分の売却(2)

前回の続き。もう一つだけ共有についての説明です。甲土地をAさん持分10分の9、Bさん持分10分の1で共有しているとします。それで、管理行為は持分価格の過半数の同意で決するので甲土地についてはAさんだけで決めていけるわけですが、日頃からAさんの管理行為に不満のあるBさんが甲土地の共有状態を解消したいと考えたらどうなるでしょう? こういう場合、BさんはAさんに対して共有物の分割を請求できます。つまり、共有状態解消に向けて話し合おう、というわけですね(共有物分割協議)。言われた方のAさんは、これを拒絶できません。話し合おうと言われたら、いかにAさんが分割したくないと思っていたとしても、話し合いの席につかなければいけないのです。どの共有者がいつ請求してもいいし、持分がどのくらいかも関係ありません。甲土地の10分の1しか持分がないBさんも、問題なく分割請求できます。

まあ話し合いに応じなければいけないと言っても、ホントにAさんの身体を拘束して連れてくるわけにはいきませんし、電話やメールを強制することもできないので、Aさんが分割したくないと思っていたら現実には話し合いなんてできないでしょう。でもそうなったら、Bさんとしては共有物分割請求調停、共有物分割請求訴訟へ進むことになります。結局のところ、Bさんが共有を解消したいと考える限り、Aさんがどう思っていようと最終的に共有物が分割されることになるのです。これも考えてみると結構怖いですよね。共有のままにしておきたい!という人の気持ちは考慮されないのですから。もっとも、何もかもが分割したい側のBさんの希望通りになるとは限りません。共有物分割訴訟は形式的形成訴訟とされていて、仮にBさんが甲土地を9対1の割合で現物分割することを希望したとしても、裁判所はそれとは関係なく、甲土地全部を競売して得られた金銭を9対1の割合で分けなさい(換価分割)、といった判決を出すことができます。ということで、最後にはAさんもBさんも完全に満足することはできない結末に至る可能性があるのでした。こういうところも、共有がオススメされない理由ではあるのでしょうね。

 

と、ここまで共有の基本知識を確認したところで、やっと本題です笑 自分が見た広告主の会社は、共有名義の不動産を専門に仲介してくれます。そして、共有不動産の売主と購入を考える投資家のマッチングシステムを独自に構築して、売主から見れば高値で迅速な売却を可能にしているとのこと。こういうシステムによって専門的に仲介するのは、この会社が業界唯一なのだそうですよ。そして、トラブルの多い共有不動産を取り扱うだけあって、専門家集団のサポートというものを強くアピールしています。専門家というのは関連する士業のことです。つまり弁護士や税理士、不動産鑑定士、そして司法書士ですね。また、今後相続登記が義務化されたら、何人かの相続人が共有する不動産が増えるかもしれませんし、共有不動産についてのトラブル…とまでは言わないまでも、売却したいという話は増えるでしょう。そうすれば、共有不動産専門の会社はその専門性ゆえに取り扱い件数が増えていきそう。関係する司法書士の仕事も増える…ということになりそうですね。

ところで、この会社のQ&Aにこういうのがありました。

Q.(共有持分を)買った人は、その後どうするんですか?

A.  共有状態の解消に向けて他の共有者と時間をかけて協議します。

よく考えると、この会社は共有不動産の仲介をするのであって、自社で買い取るわけではないのですよね。共有持分を購入するのは投資家なのです。そして投資家は、残りの共有持分を持つ共有者に対して何らかのアクションを起こすはずです。それが上のA.のような時間をかけた共有物分割協議で穏やかに話せれば良いのですが、そうでない場合も充分考えられます。たとえば投資家が訴訟をチラつかせながら、あなたの持っている残りの共有持分をこちらの言い値で売りなさい、と言ってくるとか。当然安く買い叩かれるでしょう。または、残りの共有者が思い出のある実家だから残しておきたい…などと考えている場合に、投資家が訴訟をチラつかせながら自分の持分を買い取ってくれ、と言ってくるとか。こちらのケースでは高値でふっかけてくるに違いありません。素人の親戚同士でワーワー言い合うよりもドライでキツそうですね。ただ、本当に訴訟になるのは最後の最後に投資家が匙を投げたってときなんでしょうけど。何しろ共有物分割請求訴訟では、投資家の思い通りの判決が出る保証は何もないですし。

で、これを投資家から共有持分の売却か買取を持ちかけられた残りの共有者から見ると、一難去ってまた一難って感じですよね。共有者の一人が不動産の帰属などについて騒いでいて、それが落ち着いたと思ったら、今度はよく知らない人からまた共有不動産の話をされるのですから。そして、共有物の分割を請求されたら、何らかの決着をつけなければいけないのですよね。訴訟を起こされる可能性があるから、のらりくらりと先送りするわけにもいかないのです。すると残りの共有者は、共有不動産を専門に扱うこの会社に相談してみようかなと思ったりするんでしょうか。共有不動産に何人かの共有者がいれば、その人数分だけこの種の話が持ち上がるわけで、なかなか凄いビジネスモデルだな…と思いました^^;

 

相続登記が義務化されたからといって、共有持分の話がすぐに増えるってわけではないのでしょうけど、やっぱりジワジワと増加していくと思われます。自分が共有不動産の共有者になっているという意識を持つ人が増えるだろうし、それを処分してお金にしたいと考える人だって今まで以上に多くなるはずです。ということで、司法書士になったときに仕事が多いといいなぁと思います笑