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確認の利益(1)

民事訴訟法の中で、民事訴訟には給付の訴え、確認の訴え、形成の訴えという3種類があるのだということを習いますよね。そして、実際に裁判所に訴えを起こすには、訴えの利益が必要なのだ、ともされています。裁判所という国家機関を動かし、被告にも時間を割いてもらうのだから、それだけの必要性や正当性がなければいけない、ということです。で、上記3種類のうち給付の訴えは分かりやすいですね。要するに相手方に対して「何々せよ」と求める訴えであり、まさにそれが訴えの利益と言えるでしょう。将来の給付を求める訴えさえ認容される場合があります。形成の訴えは形成権の行使による法律関係の形成・変更をするための訴訟で、ちょっとイメージしにくいですが、典型例としては株主総会決議の取消訴訟が挙げられることが多いと思います。法律で定められている場合のみ提起することができ、普通は訴えが可能なときは訴えの利益があると認められます。逆に、事情が変わって形成権を行使する意味がなくなったときは訴えの利益を欠く、と言われた方が分かりやすいですかね。重婚の場合に後婚の取消しを求める訴えは形成の訴えで、後婚が離婚によって解消されたときは訴えの利益を欠くとされています(最判S57.9.28)。

 

ところが、確認の訴えのおける訴えの利益、または「確認の利益」と言われているものって分かりにくくないですか? 権利または法律関係の確認を求める訴えが確認の訴えというものですが、その確認の利益と言われると…。一般論として確認の利益が認められるのは、原告の有する権利や法律上の地位に危険または不安が存在し、そうした危険や不安を除去するために確認判決を得ることが有効かつ適切な場合とされています(最判S30.12.26)。そして、そういう場合に当たるかどうかは、確認の訴えが手段として適切か(方法選択の適切性)、確認対象の選択が適切か(対象選択の適切性)、確認判決をすべき必要性が現に認められるか(即時確定の利益)、被告とされている者が確認判決の名宛て人として適切か(被告選択の適切性)、といった点で判断されます。これら4つの要件を満たさなかったら、確認の利益は認められないとして訴えが却下されるわけですが、そう言われてもやっぱり分かりにくいですね^^; ということで、これらの要件を簡単に見ていきたいと思います。

 

●方法選択の適切性

確認の訴えよりも適切な法的手段が他に存在するときは、確認の利益は認められません。たとえば給付の訴えが可能な給付請求権があるとして、その確認を求める訴えには確認の利益がないとされています。給付の訴えが認容されれば執行力を伴う給付判決が得られ、より適切に解決できると考えられるからです。したがって、給付の訴えができるのなら給付の訴えをすべき、ということなのですね。一方、債務者側から債務の不存在確認を求める訴えを起こすことは原則認められます。しかし、被告である債権者側から給付を求める反訴を提起されると、本訴である債務不存在確認は確認の利益を失うとされています。それが問われているのがこちら。

債務の不存在の確認を求める本訴に対して当該債務の履行を求める反訴が提起された場合には、当該債務の不存在の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。(平成30年 問2-エ)

答えは○です。最判H16.3.25によれば、債務者側が提起した債務不存在確認の訴えの係属中に、債権者側から債務の履行を求める反訴が提起された場合、これら2つの訴訟の中身は結局のところ給付の義務があるかないかを判断する点で共通しており、それなら給付の訴えの方が執行力を付与できる分だけ確認の訴えよりも紛争解決能力が高い、反訴として給付の訴えが提起された以上、債務不存在確認についての審理は不要であり確認の利益がない、との見解が示されています。実務上は、債務不存在確認の訴えが提起されて被告が応訴すると、裁判所は被告に対し反訴提起を求め、一方で原告に対し本訴を取り下げるよう求めるそうですよ。それでも原告が取り下げない場合は、確認の利益なしとの理由で却下することになるわけです。

なお、確認の訴えの話とは別に、上記の問題のケースでは重複起訴の禁止に抵触しないかという問題もあります。債務不存在確認の訴えの被告は、本来それとは別の訴訟として給付の訴えを提起できるはずです。ところが上にも書いたように、この2つの訴訟は実質同じこと(給付義務の有無の判断)をするのであって、それなのに別々に裁判をするのは不経済ですし、矛盾した判決が出てしまうと困るので、別訴を提起することはできないとされているのです。しかし、反訴を提起するのはOKなのですよ。本訴の手続の中で審理する反訴なら、重複審理のムダもないし矛盾する判決が出るのを防ぐことができますからね。

 

こんな問題もあります。

亡Aの相続人は、X及びYのみである。この場合、XがYに対して提起した、特定の財産が亡Aの遺産であることの確認を求める訴えは、却下される。(平成19年 問1-エ)

答えは×です。ずっと以前は、遺産確認の訴えを過去の法律関係の確認と捉えて確認の利益を認めないとする考え方もあったようです。しかし最判S61.3.13は、遺産確認の訴えはある特定の財産が現に被相続人の遺産に属し、現に共同相続人の遺産分割前の共同財産であることの確認を求める訴えである、と述べました。原告が勝訴し確定すると、その特定財産が遺産分割の対象となる財産であることが既判力で確定され、続く遺産分割の審判手続やその確定後に遺産であるかどうかを争うことができなくなるため、原告の意思に沿った解決を図ることができます。だからこの確認の訴えは適法だと判断されたわけですね。遺産確認の訴えは、後続の遺産分割の前提として行われるものですが、それ自体が実体法上の権利関係なのであって、独自に確認の訴えの対象とする実益があるということでしょう。

 

民事訴訟法の話は、どうもややこしくて長くなっちゃいますね^^; ということで次回に続く。