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原野商法の土地

自分が生まれる前の話ですが、「原野商法」が多発した時期があったそうですね。原野商法とは、経済的にほとんど無価値な土地(原野)なのに「近くに高速道路ができる予定がある」「開発計画が進んでいる」などと言って消費者を騙して値上がりするかのような期待感を抱かせ、不当に高く売りつける詐欺のことです。ウィキペディアに解説がありますよ。

ja.wikipedia.org

高度成長期で列島改造ブームとか言ってた時代には、どんな土地でも必ず値上がりするという不動産信仰が形成されていったというし、その後のバブル期に入るとリゾート開発ブームみたいなのがありました。そういった不動産価格が大幅に値上がりしそうな空気があるときに、原野商法という詐欺が流行するようです。結局のところ、現地を簡単に見に行けないから成立するのですよね。最近はGoogleなどで写真を見ることができるから、まったく知らない場所の不動産を買うとしても一応事前にその場所を検索してみたりするでしょう。なのである程度の自衛はできるようになったのかもしれませんが、詐欺師としてもその上を行く手口を編み出している可能性だってあるし、用心するに越したことはないですね。

さらに、原野商法二次被害も問題になっています。これは原野商法で価値のない土地を買ってしまった人の「こんなもの何とかして手放したい…」という気持ちに付け込んでくる詐欺です。上のウィキペディアにも解説がありますし、最近は国や自治体も盛んに警戒を呼びかけていますね。たとえば政府広報はこちら。

www.gov-online.go.jp

同じ趣旨の広報は他にもたくさんあります。それにしても不思議なのは、こういう広報に載っている二次被害の事例のどれもみんな揃いも揃って「わけもわからずに」契約をした、みたいな記述があることです。わけもわからずに契約なんてするなよ…と思ってしまいますけど、もしかしたら詐欺師の口八丁手八丁に乗せられると、わけもわからずに契約したとしか言いようのない心理状態に陥ったりするんでしょうか。恐ろしいことですよ。というか詐欺師の方も、それほどの手腕があるのならまともな営業職に就けばガンガン稼げるんじゃないの?という気もしますけど、詐欺に手を染めるってのはそういうことではないのでしょうかねぇ。そんなわけで、基本的に怪しいセールスには関わらないのが一番だと思います^^;

 

ところで、原野商法では架空の土地を売りつけられるのではなく(ネット上で架空の土地を売りつける悪徳商法もあったのですが…)、実際に自分の名義で所有権の登記が行われます。登記事項証明書を取り寄せることもできますよ。そこには所在地○県○市○町字○○、地番xxxx番のx、地積xxx.xxm3などと記載されているでしょう。ここで、所在地と地番が分かるのなら、それを頼りに自分の土地を訪ねてみるのもいいし、本当に人里離れたところの原野ならとりあえずキャンプでもして、その後は別荘を建てるなり畑を作るなりしたらいいのではないか、売りたくても売れない土地なら売らずに自分で使えばいい、と考える人がいるかもしれません。自分も原野商法の土地ってそのまま所有しておけばいいじゃんとか思っていたのですが、現実はそんな甘いものではないようですね。というのも、登記があるからといって、利用できる土地があるとは限らないからなのです。

…あ、これは登記の公信力がどうのという話ではなくて、物理的にそんな土地があるかは分からない、という意味なのですよ。たとえば、崖や急斜面などを含むまともな利用ができない土地でも、平面図にすると何もない原野が広がっているだけ、というように表現されます。その図面が適当に直線でいくつかの区画に区切られ、そのうちの一つを買ってしまったとすると、図面を見ているだけなら地積xxx.xxm3の平坦な土地を想像してしまいますよね。ところが実際には山肌の斜面でテントを張るのも難しいなんてことになっているかもしれませんし、崖だったら図面上は存在するはずのその土地の上に立つことすらできないでしょう。いや、もっと酷い場合には、自分の土地を探し当てることさえ不可能、なんてこともあるそうですよ。何しろ図面を区切っているだけだから、現地までアクセスする道路…というか登山道みたいなものがあるのかも不明ですし、仮に行けたとしても何か目印があるわけでもないので、広大な地番xxxxうち登記上の自分の区画であるxxxxのxはどこなのかを特定することなんてできないのです。具体的にどこの部分かも分からないから、売るに売れないのですよね。

 

そんな原野商法で掴まされた土地の特定をした方もいらっしゃいます。

urbansprawl.net

これはもう立派なドキュメンタリーですね。知人から情報を聞き取り、登記簿や地番図や写真を手がかりに現地の土地を探し出していくところは、宝探しの冒険物語を読んでいるような感じがしますよ。でもその目的物たる宝物は、利用価値のない土地なんですけど^^;

この土地は千葉県内にあるので、たとえば東京に住んでいる地主が、たまたま気が向いて現地を見てみようと思ったら、一応行けないことはない程度の場所にはあります。でも法務局に行って登記事項証明書やら地番図やらを発行してもらうのはお金もかかるし、法務局の係員に面倒な手続きをお願いしなければいけなくなるし、急に思い立ってできるようなことではないなと思いました。ましてや、上のケースでは現地を見に来た人に別の土地を見せていた疑いもあるというから、記憶を辿ってみるのも意味がないかもしれませんし。さらに、これが千葉県ではなく北海道の山の中なんかだったりしたら、近付くこともできないかもしれませんよね…。原野商法ってホントに罪深いなぁと思います。

 

司法書士になったら、原野商法としか思えない土地の登記に出会うこともあるんですかね。微妙な気分になりそうですよねー^^;