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供託法の勉強

供託という手続きも、普通の生活をしていたらほとんど接する機会のないものですよね。国がお金や物を預かる…と言えばそうなのですが、銀行やトランクルームと違って何でもかんでも預かってくれるわけではありません。供託とは、ある財産を供託所に提出して管理を委ね、その財産をある人に受領させることによって、何らかの法律上の効果を得るという制度です。法律上の効果を得る、というときに預かってくれるのですよね。で、供託の手続きは司法書士が代理できるので、試験の範囲にも含まれているわけなのです。

ただ、自分が供託のことを初めてまともに知ったのは宅建の勉強をしたときでした。宅建業者は、営業保証金として主たる営業所について1,000万円、その他の営業所1か所について500万円を、主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければいけません(保証協会による弁済業務保証制度もありますけど)。宅建業者と消費者との間でトラブルがあったとき、宅建業者が消費者に対して損害賠償をするための資力を担保するために保証金を供託させるのだ、というような説明をテキストで読んで、なるほど〜供託というのはそうやって利用するものなんだなぁと思いました。つまりこれは営業保証供託というものですけど、供託は公益的な意味で使われるものなのだ、というイメージを持ったのでした。しかし、営業保証供託は供託の中でもほんの一部分で、司法書士試験においては頻出ということでもないのですよね^^;

 

司法書士試験で供託といったら、一番勉強するのは休眠担保権の抹消のところでしょうか。はっきり言って、供託法よりも勉強しますよね笑 まあ、供託しなければいけないってことを覚えるだけですけど、昔の抵当権を抹消する話は設定日が大正や明治にまで遡り、債権額が何円何銭で供託すべき金額は数百円レベル、なんてことがいろいろ出てきて面白いです。仕事として依頼されたら面倒なのかもしれませんが…。それはともかく、休眠担保権の抹消は多肢択一でも記述でも出題されており、仕事に必要な知識なんだろうな〜と思いながら解いているわけです。たとえば多肢択一ではこんな感じ。

抵当権者の所在が知れない場合において、被担保債権の弁済期から20年を経過したときは、所有権の登記名義人は、申請情報と併せて、弁済期を証する情報及び供託をしたことを証する情報を提供すれば、単独で抵当権設定登記の抹消を申請することができる。(平成14年 問16-イ)

答えは×です。弁済期を証する情報、供託をしたことを証する情報に加えて、抵当権者の所在が知れないことを証する情報(所在不明証明情報)の提供が必要なのですよね。

また、記述ではこんな出題がありました。

(※「原因 昭和7年1月20日付借用証書」との記載がある1番抵当権が登記された土地について)

司法書士法務花子の説明] 抵当権者が行方不明のときに権利の登記を抹消する方法は、幾つかありまして、本件の場合には、例えば、(イ)被担保債権の弁済期から(X)年以上経過しているときは、被担保債権の元本と利息、遅延損害金を全額(Y)すれば、裁判の手続を利用しなくとも、乙土地の所有者が単独で抵当権の登記の抹消を申請することができることになっています。もう少し準備しないと断言することはできませんが、本件の場合には、この方法で申請するのが負担が少なく、よろしいのではないかと考えます。

 

問3 [司法書士法務花子の説明]中、(X)及び(Y)に入れるべき適切な語句を答案用紙の第3欄の(X)及び(Y)の各欄にそれぞれ記載しなさい。

問5 [司法書士法務花子の説明]の下線部(イ)に基づき申請した登記の申請情報の内容のうち、登記の目的、登記原因及びその日付、申請人の氏名又は名称、添付情報並びに登録免許税額を答案用紙の第5欄に記載しなさい。(平成24年

休眠担保権の抹消をストレートに聞いてきてますね。もちろん、問3の(X)は20、(Y)は供託で、問5は1番抵当権抹消の登記申請を記載していきます。ちなみに、昭和7年の抵当権を抹消するのに供託すべき金額をどうやって計算するのかというと、法務省から専用のソフトウェアをダウンロードしてそれを使うのだそうですよ。そして、金額が本当に正しいか、手続に不備がないかを、供託官と打ち合わせして確認するのだとか。まあ、やっぱりちょっと大変そうですね^^;

 

会社法にも、たまに供託が登場します。たとえば会社が譲渡制限株式の譲渡を認めず買い取る場合について、こんな問題が出てますね。

会社が当該譲渡制限株式の全部を買い取る旨の決定をし,当該株主に対し会社法所定の事項を通知しようとするときは,会社は,1株当たり純資産額に会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を乗じて得た額をその本店の所在地の供託所に供託しなければならない。(平成26年 問29-ア)

株式会社が,譲渡制限株式の取得について承認をしない旨の決定をした場合において,当該譲渡制限株式を買い取る旨及び当該株式会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を決定したときは,当該株式会社は,譲渡等承認請求者に対し,これらの事項を通知した上で,当該譲渡等承認請求者と当該譲渡制限株式の売買価格についての協議が調わないときは,1株当たり純資産額に当該株式会社が買い取る当該譲渡制限株式の数を乗じて得た額を供託所に供託しなければならない。(平成30年 問28-オ)

1株当たり純資産額×買い取る株式数=供託すべき金額ということです。これはでも、株式会社が供託の手続をするのだから、一般の人が関係することはほぼないと思いますし、イメージの湧く話ってわけではないですね。こういうのの実務って、どういう人がやるんでしょう? やっぱり司法書士に依頼しているのかな…。あ、問題の答えは、上が○、下が×です。協議が調わない場合に限らず、通知した上で供託しなければいけないのですよね。

 

世の中で供託が最もよく利用されるのは、家賃についての弁済供託だそうですよ。たとえば、月5万円の家賃を前月の末日までに大家さん(賃貸人)の自宅で支払うという契約が結ばれていて、あるとき賃借人が次の月の家賃を持参したら、大家さんからこの次の月から家賃を月10万円にしたいと言われてしまいました。賃借人としては、いきなりそんなことを言われても困るし、物件の状態や立地からして10万円は高すぎる、5万円は確かに格安としても、適正な家賃はせいぜい7万円くらいじゃないの?と思ったら、もう10万円は出せませんよね。とはいえ、前月の末日までに家賃を払わなければ、債務不履行で契約を解除されてしまうかもしれません。賃借人としてはそれも困ります。そこで次の月、賃借人が相当と思う家賃7万円を支払おうとしたのですが、大家さんは10万円でなければ受け取れないといって拒否したのでした。さてどうしたものか…というときに供託という手段が使われます。賃借人は相当と認める額の家賃(7万円)を供託することで、弁済したという法律上の効果が得られるわけですね。

それで、午後の多肢択一での供託法は、毎回3問出題されます。そしてその内容は過去問がほとんど変わらず出てくる、という話を聞いたことがあります。もしそれが本当なら、LECの合格ゾーンなんかで30年分くらいの問題を集めて丸暗記すれば試験対策としては他にやることもない…ということになります。毎回3問として、30年分でも全部で90問だから確かに量は多くないし、不動産登記法商業登記法で時折かなりの難問が出題されることからすると、供託法は馴染みのない用語がたくさん出てくるのさえ我慢すれば確実に点の取れる割の良い科目なのかもしれません。でもなぁ…とりあえず、供託法の問題の一例を挙げてみましょうか^^;

執行供託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

 

ア  金銭債権の一部について仮差押えの執行がされた場合において、その残余の部分を超えて滞納処分による差押えがされたときは、第三債務者は、その金銭債権の全額に相当する金銭を供託しなければならない。
イ  金銭債権が差し押さえられた場合において、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託するときは、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。
ウ  金銭債権の一部が差し押さえられた場合において、第三債務者が差押えに係る債権の全額に相当する金銭を供託したときは、執行債務者は、供託金のうち、差押金額を超える部分の払渡しを受けることができる。
エ  金銭債権が差し押さえられ、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託した後、その差押命令の申立てが取り下げられた場合には、第三債務者は、供託原因が消滅したことを払渡請求事由として、供託金を取り戻すことができる。
オ  金銭債権が差し押さえられ、第三債務者が差押金額に相当する金銭を供託した後、執行裁判所が配当を実施した場合において、配当を受けるべき執行債権者が供託物の還付請求をするときは、供託物払渡請求書に当該裁判所が交付した証明書を添付しなければならない。

 

1 アイ 2 アオ 3 イエ 4 ウエ 5 ウオ (平成26年 問11)

最初は、これら5つの選択肢の内容がどういう意味なのかさっぱり分かりませんでした笑 執行供託はそれなりに出題数が多いのですが、こういう感じの問題が延々と続くのを丸暗記するのは結構な苦行に思えます。といって、供託は民法会社法とは違い、基本書を読んで理論を理解するという科目でもないですよね。自分はスタディングの講座だけでは中身が分からなかったのでオートマのテキストを読み、それでようやく手続きの意味(たとえば金銭の還付は払渡請求書1通でいいのに振替国債や有価証券では2通必要なのはなぜか、など)が大まかに分かるようになりました。

とはいえ、供託法が得意で絶対3問取れる!と断言できるほどではなく、何となくあやふやなまま模試など受けて、組み合わせに助けられて全滅は免れる…といった状態だったのですが、これではダメだと思い立って、この本を読んでみました。

 

供託にもこういう解説書あるんですねぇ…

上に書いたような家賃の事例のほか、売買代金の受取拒否や債権者不確知などの例を挙げて、法律関係と手続の仕方を解説してくれます。法務局に出向くとか供託のサイトにアクセスしてどうするかが、具体的にイメージできるようになりますよ。しかも事例ごとにOCR用紙の記入例が載っていて、根拠法令として何を書くのかとか、供託通知書の発送を希望する場合にチェックを入れる欄があるとか、供託通知書発送のためには切手が必要だとか、債権者不確知の場合は4号様式と9号様式を使って被供託者を複数記入しましょうとか、手取り足取り説明してくれるのです。さらに本書の後半では、供託の中でも特に何をやっているのか分かりにくい執行供託について、事例を使って実際の手続きの流れが分かるようになります^^

この本の説明ですごく面白いと思ったのは、民法の知識がきちんとベースに置かれているのだなぁ、ということです。債務の本旨に従った弁済とは何かということから、弁済の提供、債権や債務の相続、家賃債権債務が相続開始や遺産分割協議の前後いつ発生したかによる違いまで、民法の復習をガッツリとやってる気分になりました笑 こういう話になると、たとえば代理人の資格を証する書面は添付するのか提示でいいのかみたいな純粋に手続き的なことよりも法律の勉強て感じで楽しいですね。それから執行供託のところは、民事執行法の知識がいろいろ出てきます。民事執行法もなかなか対策しにくいところですけど、供託と絡めて制度の中身を知ることができるのは有り難いです。試験本番でそのへんのところが出題されると都合が良いのですけど…そこまで上手くはいかないでしょうかね^^;

 

そろそろ供託法も仕上げていかなければいけないタイミングなので、ずっと過去問をやり続けて何だかワケが分からなくなったときには、この本分かりやすくてイイと思いますよ~。ちょっとでも楽しいとか面白いと思えるものを読みたいですよね^^