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不動産にまつわる特約

民法不動産登記法のテキストを読んでいると、不動産の賃貸借や抵当権の設定契約にさまざまな特約を付けることができるのだ、という説明があったりします。賃借権の譲渡・転貸を認める旨の特約とか、抵当権の効力が及ぶ範囲についての特約とかが具体例として出てきますね。テキストで解説される特約というのは、社会に相当程度浸透した一般的なものと思って良いのかもしれないのですけど、司法書士試験の中には今まで見たことも聞いたこともなかった話が出てくることがあるのです。最初に問題を見たときに解けなくて、解説を読んでなんだこりゃ!知るか!と腹立たしい気分になりました笑 以下、そんな不動産にまつわる特約を挙げてみたいと思います。

 

●敷引特約

居住用の家屋の賃貸借において,敷金の名目で交付された金銭のうち一定額を賃貸借契約の終了時に返還しない旨の特約は,返還しない部分がいわゆる礼金に当たることが明確に合意されていても,災害により家屋が滅失して賃貸借契約が終了した場合については適用することができない。(平成29年 問18-ア)

不動産を賃貸するとき、敷金・礼金というものを支払いますよね。このうち敷金は、不動産を損傷したり賃料を滞納したりした場合の担保として賃貸人に交付するお金のことです。賃貸借契約が終了して賃貸人に不動産を返還すると、原状回復費用や未払賃料を差し引いた分が賃借人に戻ってきます。礼金は、文字通り賃貸人へのお礼という意味合いのお金です。契約時に1回だけ支払い、契約終了時に返還されません。昔は賃貸物件が少なかったし、大家が店子の世話をすることも多々あったので、大家に対して感謝の気持ちを表したということのようですが、今は敷金礼金のない「ゼロゼロ物件」も増えていますね。昔とはいろいろ事情が違いますからねぇ。

で、敷金礼金のうちの敷金について、賃貸借契約終了時にそのうちの一定金額または一定割合を返還しない旨の特約をすることができます。これを「敷引特約」といいます。西日本で多く見られ、「保証金2ヶ月・敷引1ヶ月」みたいな形で表示されているそうです。この場合、賃貸借契約時に保証金として賃料2ヶ月分を入れ、契約終了時に敷引1ヶ月分を差し引いた1ヶ月分が戻ってくるわけでしょうかね。それで敷引特約は原則有効なのですが、災害により家屋が滅失して賃貸借契約が終了したときは、特段の事情がない限り特約を適用することはできない(最判H10.9.3)とされています。一般に、賃貸借契約が火災、震災、風水害その他の災害により当事者が予期していない時期に終了した場合についてまで敷引金を返還しないとの合意が成立していたと解することはできないからです。しかし「いわゆる礼金として合意された場合のように当事者間に明確な合意が存する場合」のように特段の事情があれば別とも言っているので、答えは×です。…しかしこれ、本番の会場で読んでも自分には解けなかったと思います。帰宅してから解答速報と解説を見て、あぁそうですか…と黄昏れてしまうでしょうね^^;

 

●代位権不行使特約

以下2つの問題は、Bの債務について、甲土地と乙土地にAの1番共同抵当権が設定された後、甲土地にCの2番抵当権が設定されたケースです。

甲土地をEが、乙土地をBが所有し、AE間に「Eが弁済等によって取得する権利は、AとBとの取引が継続している限りAの同意がなければ行使しません。」との特約がある場合において、Aが甲土地に設定された抵当権を実行してその代価から4000万円の配当を受けた後、Aが乙土地に設定された抵当権を実行したときは、Cは、乙土地の代価から配当をうけることができない。(平成28年 問14-エ)

物上保証人Eの甲土地と、債務者Bの乙土地が共同抵当に入っていて、異時配当によって甲土地から実行されたのですね。この場合EはAの乙土地の抵当権に当然に代位し、さらにそれをCが物上代位できるのでした。ところがここでは、「Eが弁済等によって取得する権利」はAの同意がなければ行使しない、との特約があります。つまりEがAに代位するにはAの同意が必要だというのです。そして、EがAに代位しないと、Cが物上代位しようにもできない=乙土地から配当を受けられない、という事態に陥ってしまいます。こういう物上保証人の代位権不行使の特約は後順位抵当権者に対しても有効かということですが、答えは×です。

判例は「かかる特約は、後順位抵当権者が物上保証人の取得した抵当権から優先弁済を受ける権利を左右するものではない」(最判S60.5.23)としました。その理由として、この特約はEが弁済したときにAの意に反して独自に抵当権を実行することを禁止するというだけで、すでにAの申立てによって抵当権が実行されている場合にCの権利を消滅させる効力はないから、と述べています。要するに、AE間の特約はAE間では有効だけどCには関係ない、ということですね。Cの与り知らぬところで何か約束があっても、それにCが従う謂われはないのです。よく考えれば当たり前の話ですが、コレが本番で出題されたら慌てるでしょうねぇ…自分は最初にこの問題文を読んだとき、何を言っているのか状況がさっぱり理解できませんでしたよ^^;

 

●担保保存義務免除特約

甲土地をEが,乙土地をBが所有し,AE間に「Eは,Aがその都合によって担保又はその他の保証を変更,解除しても免責を主張しません。」との特約がある場合において,Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後,FがEから甲土地を買い受けたときは,Fは,甲土地に設定されたAの第1順位の抵当権の抹消登記手続を請求することができる。(平成28年 問14-オ)

民法504条に「担保保存義務」についての規定があります。これは、保証人や物上保証人を保護するために、債権者に対して担保の維持を求めるものです。この問題で言えば、Aが解除や放棄によって抵当権を失うと、EはAの抵当権に代位することができなくなってしまいます。それではEを害するので、Aに担保を維持する義務を課しているのです。もしAが故意又は過失によって義務に違反したときは、Eは本来代位できるはずだった範囲で免責されます。ただし、特約でこの義務を免除することも可能で、実際金融機関が抵当権者となるときは免除特約が入っていることが多いそうですよ。そして債権者の義務が免除されると、物上保証人は免責されなくなります。
この問題ではAの担保保存義務免除特約があり、Aが乙土地の抵当権を放棄しているので、Eは特約によって免責の効果を主張できませんね。その後Eが第三取得者Fに甲土地を譲渡していますが、こういう場合はFもEと同様に免責の効果を主張できないとされています(最判H7.6.23)。第三取得者への譲渡によって、改めて免責の効果が生ずることにはならないからです。となるとFは、免責の効果が生じていない、担保の負担の付いたままの甲土地を取得したことになるわけで、抵当権の抹消登記手続は請求できません。したがって答えは×です。…いやでも、こんなの知らないし解答できないよなぁ笑

 

これらの特約の存在や内容は、自分が知らなかったというだけで、不動産業界などで働く人にとっては常識なのかもしれません。また、平成28年の問題にしても平成29年の問題にしても、選択肢を5つともきちんと読むと明らかに正しい選択肢が他に2つ見付かるので、特約のことが分からなくても解けるようになってはいるのですね(特に平成28年の問題は、上から順番に読んでいけば選択肢ウまで読んだ段階で正解が出せるので、ここに挙げた選択肢エと選択肢オは読む必要がないのです)。とはいえ、精神的に余裕のない状態でこんな問題に遭遇したら頭真っ白になってもおかしくないような。何にしても、冷静さを保つのが大事ですね^^;