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根抵当権の確定事由(1)

司法書士試験では何度も何度も毎年のように出題されている根抵当権ですが、挙動が特殊でイメージが掴みづらいのは相変わらずな感じ笑 出題者にとってはネタが豊富で問題を作りやすいのかもしれませんが、受験生の立場からすると困るのですよねぇ。

さて、普通の抵当権と比べて根抵当権に特徴的なことは、「元本確定」というイベントがあることです。根抵当権の仕組みをちょっとだけおさらいしておくと、根抵当権は担保する債権を入れる“枠”を決めておくようなもので、枠の中に入る債権は(極度額の範囲内であれば)全部担保するのでした。取引が継続するうちに、枠の中に入っていた債権が消滅することもあるし、新しく発生した債権が枠の中に入ってくることもあるし、時間の流れとともに枠の中身が変動していくのですよね。しかしあるタイミングで、その時点での枠の中身に固定してしまう、ということができます。それが「元本確定」です。確定以降の根抵当権は、確定した時点での枠の中身=確定した時点での債権だけを担保します。確定後に新しく発生した債権を新たに担保することはありません。つまり特定の債権だけを担保する普通の抵当権と同じようなものになるわけですね(元本確定によって付従性と随伴性が生じるのです)。そして、必要がある場合は元本が確定したことを登記できます。そのあたりがよく試験に出るのですけど…。

 

それはともかく、このように元本の確定は根抵当権にとって自らの性質を一変させる一大イベントであるにもかかわらず、テキストの説明は割とあっさり流されていたりします。また実務上も、元本確定の登記が何らかの対抗要件として機能することはほとんどなく、単に確定後の根抵当権を処分するときの前提として行われているに過ぎない、といった認識を持たれているらしいのです。これはなかなか残念なことではないですか? 司法書士の試験では手を替え品を替えしつこく訊かれるというのに^^;

そこで、ここでは試験対策も兼ねて笑、元本の確定事由を見ておこうと思います。元本確定の登記の要否も非常に興味深いところですが、そこまで話を広げると収集がつかなくなるので、今回は確定するところだけを見てみることにします。

 

①確定期日の到来

根抵当権者と設定者の合意によって、元本が確定する日を決めておくことができます(民法398条の6)。この日のことを確定期日と言います。根抵当権を設定すると同時に決めることもできるし、後から決めることもできるし、変更や廃止も当事者の合意で自由にできます(利害関係人が存在しない)。ただし、あまり長期に渡って確定しないままでいるのは設定者の負担が大きいので、その期日は定めた日から5年以内(更新する場合も5年以内)でなければなりません。また、確定期日を変更したときは、変更前の期日の前に変更後の期日を登記する必要があります。この登記をしないと、変更前の期日で確定してしまいます。つまり、登記をしないと期日を変更したという効力が発生しないのですよ(効力発生要件)。根抵当権の設定登記自体は対抗要件に過ぎないのですけどね…。なお、確定期日の定めがあって、その期日が到来する前でも、別の確定事由(債務者が破産したとか)が発生したら、その時点で元本が確定します。

ところで試験問題には「曜日や休日は考慮しない」なんていう注意書きがあったりしますが、実際に確定期日が日曜日に当たる場合、翌日の月曜日に確定期日の変更登記を申請しても受理されないそうですよ。なぜなら、確定期日は特定の日のことであって期間ではなく、民法142条(期間満了日の特則)の適用がないからなのですね。一応カレンダーを見ながら契約しないといけないのかな…というか後から国民の休日が増えたりもするからなぁ^^;

 

根抵当権者または債務者の相続

根抵当権者または債務者に相続が発生すると、元本が確定することがあります(398条の8)。まず根抵当権者に相続が発生すると、根抵当権はそのときに存在する債権を担保します。それとともに、根抵当権者の相続人と設定者の合意によって定めた相続人(指定根抵当権者といいます)が相続開始後に取得する債権も担保します。要するに、根抵当権者の相続人の中で取引を引き継いだ人の債権が担保されるわけですね。ただし、この合意は相続開始後6ヶ月以内に登記しなければ効力を生じません。登記しないと、相続開始時に元本が確定したものとみなされます。

債務者に相続が発生したときも、根抵当権はそのときに存在する債務を担保します。それとともに、根抵当権者と設定者の合意によって定めた債務者の相続人(指定債務者)が相続開始後に負担する債務も担保します。つまりこちらも、指定債務者が取引を引き継いだということです。さらに、この合意は相続開始後6ヶ月以内に登記しなければ効力を生じず、合意の登記をしなかった場合は相続開始時に元本が確定したとみなされます。相続人が誰も取引を引き継がないのであれば合意の登記はなされず、放っておくとそのまま元本が確定します。そこで確定した債権債務を清算し、根抵当権の登記を抹消する…という流れになるのでしょうね。

ちなみに、物上保証人である設定者が死亡した場合は、元本は確定しません。根抵当権者と債務者との取引に直接関係しない設定者が亡くなったからといって元本を確定させるのでは、取引の安全が害されるということでしょう。

 

根抵当権者または債務者の合併

合併については398条の9に規定があります。まず、根抵当権者である法人が合併した場合を考えてみます。このとき根抵当権は、合併時に存在する債権のほか、合併後に存続法人または新設法人が取得する債権を担保します。相続と違って、指定根抵当権者の合意は必要ありませし、合併したということだけで元本が確定することもありません。法人が合併したときは、取引が継続するのが普通だからでしょう。ただしこれを設定者から見ると、いきなり根抵当権者が入れ替わったのと同じことであり、設定者にとって不都合なことがあるかもしれません。そこで設定者は、根抵当権者に対して元本の確定を請求できます。この請求があったときは、合併のときに元本が確定したものとみなされます。ただし、この請求は設定者が合併のあったことを知ったときから2週間、合併のときから1ヶ月以内にしなければいけません。設定者が合併を知ったのが合併後2ヶ月を経過したときだったら、もう合併を理由に確定請求することはできないのですね。まあ、普通はそんなことはないのでしょうけど。

法人である債務者が合併したときの根抵当権は、合併のときに存在する債務と、合併後の存続法人または新設法人が負担する債務を担保します。こちらも指定債務者の合意は不要で、設定者が一定の期間内に確定請求することもできます。ただし、設定者と債務者が同一であるとき(債務者兼設定者。法人である債務者が自分の不動産を担保に供し、その後合併した、という場合です)は、確定請求はできません。債務者自ら合併するわけで、それによって信用状況が変化するリスクは自分で取って下さい、ということなのでしょう。

なお、ここでいう合併とは、根抵当権者または債務者が消滅側になる場合のことです。上記の存続法人または新設法人は、もともとの根抵当権者または債務者とは別法人なのですね。逆に根抵当権者または債務者が存続法人となる合併をする場合は、設定者は確定請求できません。根抵当権者または債務者は、合併後も同じ法人として変わりなく存在しているからです。また、物上保証人である設定者が合併した場合は確定しません。これも、取引に直接関係のない物上保証人の事情が影響してくるのは妙だからでしょうね。

 

根抵当権者または債務者の会社分割

会社分割については398条の10に規定されています。根抵当権者である会社が会社分割をすると、根抵当権は会社分割のときに存在していた債権と、会社分割後に分割会社が取得する債権、会社分割後に承継会社または新設会社が取得する債権を担保します。また、債務者である会社が会社分割をしたときの根抵当権は、会社分割のときに存在していた債務に加え、会社分割後に分割会社が負担する債務と、会社分割後に承継会社または新設会社が負担する債務を担保します。そして合併と同様に、会社分割があったというだけでは元本が確定することもないのです。なお、債務者ではない設定者(物上保証人)に会社分割があっても、根抵当権に影響しません。

このように、会社分割があると法律上当然に根抵当権者が増える(共有根抵当権)または債務者が増える(共用根抵当権)ことになります。これを設定者から見ると、根抵当権者が増えるのは根抵当権の一部譲渡があったのと同じですし、債務者が増えるのは根抵当権の変更をするのと同じですよね。しかし本来、一部譲渡をするには設定者の承諾が必要であり、変更は根抵当権者と設定者の合意によってするはずで、いずれにしても設定者が関与しなければなりません。それなのに、法律上当然に共有根抵当権または共用根抵当権になってしまうのは、設定者にとって酷と言えるでしょう。そこで設定者は、会社分割があったことを知ったときから2週間、会社分割のときから1ヶ月は元本確定の請求ができます。この請求があったときは、会社分割のときに元本が確定したものとみなされるのですね。それから合併と同じく、債務者兼設定者が会社分割をしたときは確定請求できません。理由は合併と同じく、債務者が自分自身でやったことだから…ということだと思います。

 

…なんか全部の確定事由を見切れなかったので、次回に続きます^^;