目指せ!47歳からの司法書士受験!

法律初学者のおっちゃんが合格するまでやりますよー

根抵当権の確定事由(2)

3日に1回は更新しようと思っているのですが、日付を勘違いしてました^^; ということで根抵当権の確定事由について、前回の続きです。

 

⑤確定請求

根抵当権者または設定者が確定請求できる場合があります(398条の19)。まず根抵当権者は、確定期日の定めがない場合、いつでも確定請求できます。これは根抵当権者にとって便利ですね。でも、この規定は平成15年改正で新設されたもので、それより前は根抵当権者が望むタイミングで確定させる手段というのがかなり限られていたそうです。それに確定登記は根抵当権者と設定者の共同申請が基本ですが、設定者が行方不明になってしまって協力を得られないなんてことも意外と多く、実務上の支障となっていたのでした。そこで、特別法によって一定の場合に根抵当権者の単独申請による確定登記が認められ、平成15年改正で相当に幅広くできるようになった、という経緯があるそうです。…というか、こんなところでも(根)抵当権者は虐げられてきたのですねぇ…^^; まあでも、今は根抵当権者がいつでも好きなときに確定させることができるので、根抵当権を確定させて、その被担保債権とともに譲渡する、みたいなことが機動的にできるようなったそうですよ。

一方の設定者は、確定期日の定めがなければ、設定のときから3年を経過すれば元本確定の請求ができます。確定期日の定めがある場合はこの請求はできませんが、設定時に確定期日の定めがあっても、それを廃止して設定時から3年を経過すれば、確定を請求できます。そして請求から2週間が経過したときに元本が確定することになっています。設定者に確定期日の定めのない根抵当権の負担をずっと課し続けるのは酷だから、ということですね。条件付確定請求や始期付確定請求をすることもでき、条件成就または始期到来から2週間を経過したときに元本が確定します。

設定者が債務者兼設定者である場合も、設定から3年経ったら確定請求できるのでしょうか? 自分が読んだテキストには、債務者はすべての被担保債務を弁済すべきで、根抵当権に拘束されても酷とは言えない、だから債務者兼設定者からの確定請求は認めるべきでない、ということが書かれていました。まあ、債務者と物上保証人は立場が違うというか、いろいろ微妙な関係性がありますよね…このあたりのことは、また改めて考えてみたいと思います^^;

 

根抵当権者の優先弁済権行使

これは、根抵当権者が競売、担保不動産収益執行、物上代位による差押を申し立てた場合です(398条の20第1項1号)。根抵当権者が現実に優先弁済権を行使するには、被担保債権が特定されていなければいけません。なので、優先弁済権を行使したときは、元本が確定するわけですね。

具体的には、競売または担保不動産収益執行を申し立てて、その開始決定がなされると、その申立てのときに確定します。物上代位の場合は、物上代位を申し立てたときに確定します。不動産の一部が損傷し、その保険金に対して物上代位した場合、根抵当権の全部が確定するそうですよ。また、共同根抵当が設定されている不動産のうち一つが確定すれば、他の不動産すべてが確定します。一方、民事執行法93条による強制管理の申立てがあると、差押はされますが、根抵当権の元本は確定しません。不動産を換価したり収益を得たりすることが目的ではないからです。

根抵当権者が滞納処分による差押をしたときは、その差押のときに元本が確定します(398条の20第1項2号)。滞納処分というのは、要するに税金を滞納したために個人の財産が差し押さえられた、ということです。だからこの場合の根抵当権はだいたい国とか地方公共団体てことになりますね。なお、国が抵当権者となるのは、たとえば相続税の延納をする場合が挙げられます。このとき、抵当権者として「財務省(取扱 ○○税務署)」などと登記されるそうです。国が根抵当権を設定することがあるとすれば、継続的に納税する必要がある場合でしょうかね。

 

⑦第三者による競売・滞納処分

根抵当権の目的となっている不動産について、自分以外の抵当権者など第三者が競売手続または滞納処分による差押をして、その差押を知ったときから2週間が経過すると、自分の根抵当権も確定します(398条の20第1項3号)。被担保債権を特定しなければ、根抵当権者がどのくらい優先弁済を受けられるか分からないからです。そして2週間という期間は、根抵当権者に善後策を講ずる時間的余裕を与えるものだそうですよ。可能な限り取引を終了しておく、といったことでしょう。なお、⑥と同じく強制管理があっても元本は確定しません。それに対し、第三者が担保不動産収益執行を開始しても元本が確定しないのは⑥と違うところです。また、第三者が仮差押をしただけの場合も確定しません。

根抵当権者が第三者のした差押を知ったとき(から2週間)というのが要件になってますが、初めて根抵当権の勉強をしたとき、そんなことどうやって知ることができるのか?と思いました^^; これは、競売手続の場合は執行裁判所が差押の登記よりも前に登記された担保権者に債権届出の催告をすることになっているし、滞納処分の場合は滞納処分庁が担保権者に必要事項を通知するのです。これらの催告や通知によって、根抵当権者は自分以外の債権者が競売手続や滞納処分の手続に入ったという事実を知ることができるわけですね。もっとも、根抵当権者が知る方法には特に制限がなく、これらの催告や通知によらずに知ったとき(から2週間経過後)も確定の効力が生じます。

ところで、⑥の場合は手続の途中で差押などの効力が消滅しても根抵当権は確定したままです。競売等の申立てによって確定請求の意思が明らかになったと考えられるからです。それに対して⑦は、競売開始や差押の効力が消滅すると、元本が確定しなかったものとみなされます。こちらは、根抵当権者が確定させようと思って確定したわけではないですからね。ただし、元本確定を前提として根抵当権を取得した者または根抵当権を目的とする権利を取得した者がいるときは、確定の効果がそのまま存続します。根抵当権を取得した者とは、たとえば債権譲渡を受けた人や代位弁済した人などのことで、根抵当権を目的とする権利を取得した者とは転(根)抵当権者や根抵当権者から順位の譲渡を受けた人のことです。どれも、確定したままにしておくべきでしょうね。

 

⑧債務者または設定者の破産

債務者または設定者が破産手続開始決定を受けたときは、根抵当権者が優先弁済権を行使するために被担保債権を特定する必要があり、開始決定のときに元本が確定します(398条の20第1項4号)。なお、破産開始決定の効力が失われた場合は⑦と同様に処理されます。

債務者または設定者が破産したことを根抵当権者が知っていたかどうかは、この際関係ありません。開始決定のときに、たとえ根抵当権者がその事実を知らなくても確定してしまいます。一方、根抵当権者が債務者の破産を申し立てた場合でも、確定するのは開始決定のときです。破産手続は総債権者の利益のために行われるのであり、根抵当権者だけを区別する理由はないからだそうですよ。また、知る知らないについて言えば、債務者が破産した場合は知れたる破産債権者に通知があるので、根抵当権者は債務者の破産を知ることができます。ところが設定者(物上保証人)が破産しても、根抵当権者に通知してくれることはありません(そういう規定がないのです)。場合によっては設定者破産の事実をまったく知ることができないうちに根抵当権が確定して手続が終わっていた、なんてこともあり得ます。物上保証人が危なそう…みたいなことは常に気を付けるべきってことでしょうかね^^;

 

民法に規定のある単独の根抵当権が確定する事由は以上ですかね。そしてもう少しだけ続きます。