目指せ!47歳からの司法書士受験!

法律初学者のおっちゃんが合格するまでやりますよー

詐害行為取消権(2)

さて、詐害行為取消権は債務者の責任財産を回復するためにある、という話を前回しました。逸失した財産を取り戻せれば、あとはそこから取り立てればよい、というのが元々の考え方です。でも、今の詐害行為取消権はそれだけが目的なのではなく、現実の社会の複雑な事情まで取り込んだ制度になっているのでした。それは、破産法の否認権の制度と平仄を合わせた、みたいに言われていますね。といっても、司法書士試験の出題科目に破産法はなく、自分は勉強したことはありません。なので平仄を合わせたと言われても今一つピンとくるわけではないのですが、債権法のテキストでは関連する部分が一通り解説されているので、それを読んで理解した範囲でまとめておこうと思います。主に、前回見た詐害行為取消権の要件⑤その行為が債権者を害することを債務者が知っていたことに関連することですね。

 

ところで、「破産法と平仄を合わせた」というのは、平成29年民法改正のときによく言われていたようなのですけど、実はそれ以前から、判例の積み重ねによって破産法に似た処理をしてきていたのでした。それが、平成29年の債権法大改正の折に民法の中に採り入れられたというわけなのです。で、破産法に似た処理をしていたのはどういう場合かというと、①特定の債権者を利する行為(偏頗行為)と、②債務者にとっての有用性、です。

上にも書いたように、詐害行為取消権は元々、債権者が個別的に強制執行をするための準備段階として、責任財産保全するために作られた制度です。現実には、一人の債務者に何人もの債権者がいるのは普通でしょうし、それら債権者間の公平や平等というものも重要です(これが実現されないと、ちゃんとした経済システムが成り立ちませんよね)が、詐害行為取消権はあくまでも強制執行に備えるものであり、債権者間の公平や平等は執行段階で実現すべきもの、と考えられていたのでした。しかし、仮に複数の債権者がいる債務者が経済的破綻の危機に陥ったとき、ある特定の債権者だけを利する行為(その債権者だけに弁済した、など)をして債権者間の平等性が崩れ、それが回復されることもないまま強制執行の手続が進んだとすると、債権者の間の利益状況は大変不平等なものになるはずです。そして、そういう状態にしてしまう債務者の行為は他の債権者に対する詐害性がある、と言えます。そこで、破産の手続に入る前の段階から①特定の債権者を利する行為(偏頗行為)を取り消すことで、その後の強制執行での平等性を高めているのです。つまり、債権者の個別的な準備というより、たくさんの債権者がいることが前提の集団的な処理を組み込んだわけですね。この、集団的な処理の仕方が、破産法の否認権とパラレルに作られているそうです。

次に、債務者といえども本来は自己の財産を自由に管理し、処分することができるはずです。債務者が経済的に立ち直るために自己の財産を処分するような場合(それによって新規の事業資金を調達する、など)は現実によくあることでしょう。しかし、財産処分によって得た資金を隠匿してしまう可能性もありますね。特に、債務者が正当な価格で第三者に処分したことや、担保として提供したことが、どういうときに詐害性があると言えるのかは判断が分かれそうです。そこで、それら②債務者にとっての有用性が問題となった場合に、どういう要件が揃えば取り消せるかを規定したのでした。

その結果、詐害行為取消権は単に債務者に詐害意思があって受益者が悪意であれば行使できる、というような単純なものではなくなり、いろいろな事情を総合的に考慮して行使されることになりました。要するに、複雑になった、と言えるでしょうか。司法書士の試験としては、判例が蓄積されない限り問題としては出しにくそうだなぁ…とか思ったりします。破産法の否認権のような使い方をする場合の要件を細かいところまで訊かれても、多分実務ではあまり関係なさそうな気もしますし^^; とはいえ試験範囲内ではあるのだし、まだまだ時間的余裕もあるので、詐害行為取消権の要件⑤その行為が債権者を害すると債務者が知っていたこと(詐害の意思)を詳しく見てみましょう。

 

要件⑤は、債務者が行為をしたこと(詐害行為)と、それが債権者を害することを知っていたこと(詐害の意思)が合わさったものです。この要件の基本は、債務者が積極的に財産を減らしてしまうこと(財産減少行為)ですね。客観的には、自分の持っている不動産や金銭を譲渡したり、債権を譲渡したりといった行為をすることによって、行為の前の財産の額より、行為の後の財産の額の方が少なくなっていることが必要です。また、財産の額が減っていないように見えても、債務を免除したり時効の更新事由として債務を承認したりすることは結果的に債権者の共同担保である責任財産を減少させることになるので、詐害行為になり得ます。

客観的要件である財産の減少が詐害行為と評価されるのは、詐害の意思という主観的要件を満たしたときです。債務者が債権者を害することを知って行為をする、ということですね。この場合、債務者は必ずしも積極的に債権者を侵害する意図があったということまでは必要なく、債権者を害することを認識していれば充分なのだそうですよ。

…といったような感じで、財産減少行為は客観的要件+主観的要件が揃っているというのが基本形です。そして、偏頗行為の場合と債務者についての有用性が問題になる場合は、それぞれ要件が加重されるという仕組みになっているのです。ここでは条文の順番通りに、債務者にとっての有用性を先に見てみることにしましょう。

 

債務者にとっての有用性が問題になるのはどういうときかというと、財産を相当価格で処分する場合(相当価格処分行為)や、新たな借り入れとともに担保の設定をする場合(同時交換的行為)です。これらの行為は、原則として詐害行為には当たりません。なぜなら、これらの行為を詐害行為としてしまうと債務者の資金調達が極めて困難になり、債務者の経済的再建の方法を著しく限定することになるからです。また破産法では、これらの行為は否認権の対象とされていません。それなのに詐害行為取消権が認められるとすると、破産前は取消債権者がガンガン取り消せるのに、破産後は破産管財人が手を出せない、という逆転現象が起こってしまうのです。そこで、これらの行為は詐害行為にはならないとされたのでした。

しかしこれらの行為も、詐害行為となる余地がまったくないわけではありません。一定の要件を満たす行為は、詐害の意思があったと考えても不自然ではないと考えられているのです。その一定の要件(424条の2)とは、

  1. 債務者の行為が、財産の種類の変更により隠匿その他の債権者を害することとなる処分をする恐れを現に生じさせるものであること
  2. その行為の当時、債務者が隠匿等の処分の意思を有していたこと
  3. その行為の当時、受益者が債務者の隠匿等の処分の意思を知っていたこと

となっています。隠匿等の処分とは、対価を隠したり、他人に与えてしまったりすることです。そして、不動産を金銭に換価するようなときに、隠匿等の処分の恐れが生じます。たとえば「不動産を相当価格で売却して現金が手に入った」というのは、法律的には等価な交換と考えられていますよね。1,000万円相当の不動産を売却して1,000万円の現金が入ってきたら、財産は減っていないと評価されます。ところが現実はそんな単純ではありません。不動産は隠匿するのが難しい財産ですけど、現金は簡単に使ったり隠したりできるのです。つまり債権者から見ると、不動産よりも現金の方がなくなってしまう(隠匿される)リスクが高いと言えます。そういう隠匿等を生じやすい財産に変更されたとき、債務者の隠匿等処分意思と受益者の悪意があれば、債務者の行為は詐害行為となるというわけです。なお、同時交換的行為も、やっていることは相当価格処分行為と実質的に同じことなので、詐害行為となるかどうかは相当価格処分行為と同じように判断されます。

 

偏頗行為と過大な代物弁済等ついても一度に見てしまうつもりだったのですが、いろいろ書いてたら長くなってしまったので、次回へ続く^^;

詐害行為取消権(1)

債権者代位権と並んで、債務者の責任財産保全の役割を果たしてくれるのが「詐害行為取消権」です。最初にテキストでこの名前を見たとき、字面がカッコイイと思いました笑 いかにも不正な行為を取り消して、正しいことをしてくれそうですもんね。まあ何が正しくて何が正しくないのかとか考え始めると、司法書士の試験とはまるで関係のない話になってしまいそうですけど^^;

 

債務者が債権者を害することを知りながら責任財産を減少させる行為をしたときなどに、債権者が詐害行為取消権を行使すると、債務者のその行為を取り消して財産を取り戻すことができます(民法424条)。たとえば、BがAからお金を借りていたところ、事業がうまくいかなくてAへの返済ができなくなったとしましょう。Bは土地を持っていて、それ以外に目ぼしい財産がないとします。するとAは、その土地から回収しようとするはずですよね。ところがここでBが「このまま強制執行されるくらいなら、世話になったCに土地をあげちゃおう」と考えてCに話を持ちかけ、Cも「他の債権者には悪いが、せっかくだからもらっておこう」と言って土地の登記を移した…みたいなことが実際あるそうですよ。こうなるとAは土地に強制執行できず、かといってBには他に財産はないのだから、結局取りっぱぐれて泣き寝入りせざるを得ません。こんなことが許されたのでは誰かに融資しようという人は現れなくなり、ひいては社会経済が回っていかなくなってしまうでしょう。

そこでこういう場合、Aは詐害行為取消権を行使し、Bの責任財産を回復するために、BからCへの土地の譲渡を取り消すことができるのです。土地がBに戻ってきたら、そこに強制執行をかけて債権回収に当たるというわけですね。で、こういった債務者による責任財産を減少させる行為を取り消すというのが元々の詐害行為取消権の目的だったわけですが、平成29年改正民法では、一部の債権者だけを利する行為(偏頗行為)や、債務者の財産を相当価格で処分するような行為も詐害行為取消権の対象とされました。破産法の仕組みを採り入れたものです。これについては後ほど改めて見てみたいと思います。

 

次に、詐害行為取消権の要件を確認しておきましょう。この要件は、受益者(債務者が財産を処分したときの直接の相手方)と転得者(受益者から財産を受け取った人)では少し違いがあります。これは、転得者は債務者と直接取引したわけではなく、受益者と転得者とでは責任の度合いが違うから、という理由によるものです。しかし、基本的なところは共通しているので、まずは受益者から見てますね。次に挙げる要件をすべて満たしたとき、債権者は受益者に対して詐害行為取消権を行使できます。

  1. 債権が存在していること
  2. その債権が、詐害行為前の原因に基づいて発生したこと
  3. 債権者が自己の債権を保全する必要があること(債務者の無資力)
  4. 債務者の行為が財産権を目的としていること
  5. その行為が債権者を害することを債務者が知っていたこと(詐害の意思)
  6. その行為が債権者を害することを受益者が知っていたこと(受益者の悪意)

結構数が多くて複雑に見えますよね。でもまあ、上に挙げたような具体例をイメージすれば、何となくどういう制度なのか掴める感じもします。で、これらの要件のうち①から⑤は、取消債権者の側が主張立証しなければいけません。個人的に、一番アレだなと思うのは要件⑤の詐害意思ですかね。債務者に詐害意思があったことを主張立証していくわけですが、でもそれって難しそうですよね? 内心どう思ってたかなんて、本当のところは本人にしか分からないのですし、いくらでも誤魔化せそう。まあ、債権者の追及もそんな甘いものではないのでしょうけど…てことで要件⑤の話は、後で詳しく見てみることにしましょう。なお要件⑥は「受益者の悪意」という形で覚えていることが多いと思いますが、実際には受益者側から自らの善意を主張立証することになっています。

 

主張立証という言葉が出てくることからも予想が付く通り、詐害行為取消権を行使するには裁判を起こさなければいけません(424条1項・424条の5)。債権者代位権が裁判外で行使できるのとは大きく違います。そして、詐害行為取消訴訟の被告は受益者と転得者で、債務者は含まれません(424条の7第1項)。これは債権者代位権を裁判上行使するときの被告が第三債務者であって債務者ではない(民事訴訟法115条1号・2号参照)のと同じです。

こうした詐害行為取消訴訟のやり方が確立したのは、実は判例によるのです。しかも、明治44年3月24日大審院連合部判決という、かなり古い判例なのですよ。これ以前の判例(大判M38.2.10)では債務者も被告にすべしとされていたから、この判決によって判例を変更したということです。で、債務者を被告にしなくてよい理由としては、

  1. 詐害行為取消権の「取消し」は法律上普通の意味での取消しではなく、訴訟の相手方との関係において法律行為が無効になり、訴訟に関与していない人には何の影響もない
  2. 債権者が受益者(と転得者)を訴えて、それらの者との法律行為を取り消して財産を取り戻した以上は、債務者の責任財産が回復し、債権者が回収することができるから、債務者を被告とする必要がない

と言っています。訴訟に関与しない人には取消しの効果が及ばず(①)、債権者としては債務者に財産が戻ってくれば充分だ(②)、ということなのですね。②はまあ分かるとして、①から②へのつながりが少し分かりにくい気がしますが、これは取消しの効果が債権者と受益者との間だけに及ぶことにしても充分に目的を果たせるのに、債務者にまで及ぶとすると債務者の財産権を侵害する度合いが強すぎる、と考えられたのでしょうかね。原則として財産権は絶対的なものであって、債権者が債務者の財産権に介入する詐害行為取消権(と債権者代位権)は、あくまでも例外的に、非常手段として法が認めたものなのだ…というような考えがベースにあるでしょうし。だから取消しの効果は債務者にまでは及ばなくて、原告である債権者と被告である受益者・転得者との間だけに留まるけれども、それでも債務者のものだった財産を取り戻して債権回収できるよ、それで問題ないよね、ということなのだろうな〜と理解しています。ホントにこういう理解でいいのかな? いやぁ難しいですね^^;

しかし実際には、取り戻した財産は債務者のものということを前提に執行手続が進みます。でも、そうすると債務者に取消しの効果が及ばないという話と矛盾してしまいますね。この点が批判されていたところ、平成29年改正民法では、

民法425条  詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

とされたのでした。そして債務者は被告にはならないけれど(424条の7第1項)、認容判決の効力は及ぶから(425条)、債務者に対する手続保障として訴訟告知をすることになったのですね(424条の7第2項)。いろいろと整合を取ったって感じなのでしょうか。この425条を題材にした問題は、すでに司法書士試験で出題されています。

債権者が受益者に対して詐害行為取消権を行使し、詐害行為を取り消す旨の認容判決が確定した場合であっても、債務者は、受益者に対して、当該詐害行為が取り消されたことを前提とする請求をすることはできない。(平成30年 問16−エ)

答えは×。認容判決の効力は債務者に及ぶのだから、債務者は受益者に対して、詐害行為が取り消されたことを前提とする請求ができます。それにしても、多肢択一問題の選択肢の一つになると、ずいぶんあっけない感じがしますね笑

 

詳しく見れば見るほど複雑で理解力が追いついていませんが、次回へ続く^^;

憧れの車(3)

前回までに、メルセデス・ベンツ ウニモグとワズ・ブハンカという憧れの車を2車種挙げましたが、2車種だけだと何となく収まりが悪い気がするし、実はもう1車種、気になる車があるので、それを見てみましょう。欲しい車の条件をもう一度確認しておきますと、①そこそこコンパクト、②そこそこ人と荷物が乗る、③M/T設定あり、④見た目が可愛い、でした。ということで、今回の車は…日野HR(7m級)です!

natorinngou.jimdofree.com

見た目はこんな感じ。一時期東京や大阪などの都市部の路線バスでも使われていたので、見たことのある人は意外と多いと思います。「7m級」というのはバスの全長のことで、細かく言うと車検証に書いてある車両全長が6,990mmだったりします。で、このHRという車種は、同一の基本設計で7m級・9m級・10.5m級の3種類を作り分けることができました。これによりメーカー側は製造コストを抑えられるし、バス会社は需要に応じて最適な大きさのバスを導入できるという、画期的なモデルだったのでした。中でも7m車は、このクラスとしては初のノンステップ車であり、幅と長さがアンバランスで、すごく可愛らしく見えるのです。というか、7m級のバスというのはこれ以前にもいろいろあって、日野はレインボー7Mとか7Wとかを販売してましたが、ちょっと野暮ったい見た目でした。それがこのHRは端正な顔つきに短尺ボディで、昔流行ったチョロQを思わせる可愛さを備えているのが魅力的です。なので条件④は楽々クリアです笑

バスですから人がたくさん乗るのは問題ありません。しかも車内を立って歩けるなんて、バスでなければなかなかできないことです。もちろん荷物も載せられるので条件②もクリア。コンパクトさについては、まあウニモグやワズに比べると確かに大きいですよ? HRは最小の7m級といえども大型車ですし(ウニモグは中型クラス。ワズ2206はワンボックスカーであり、いわゆるトラックより小さいです)。しかしバスなのでハンドルの切れ角が大きく、意外なほど小回りが効くのですよ。だから邪魔な駐車車両の多い路上でもバス停に寄せることができるし、狭い車庫に車を詰めて格納できるのです。チョロQのように見えるのはホイールベースやフロント/リアオーバーハングが短いからですが、それによって交差点を曲がる時などの内輪差やケツ振りが小さくて済み、大型車らしからぬ小回り性能を見せてくれます。したがって条件①もクリアですね。

さらに嬉しいことに、この世代のHRは5M/Tしか設定されていません! 7m級だってもちろんフィンガーシフトなのです。そして日野のフィンガーシフトといえば、あのエアの作動音がたまりませんよね! てことで条件③もクリア! やった笑

 

しかし…、この車も実際に所有するとなるといろいろ解決の難しい問題が出てきます。まず、東京では排ガス規制の関係で登録することができません。いきなりダメじゃん^^;

排ガス規制のかからない地域であれば、登録はできます。だからそういうところに車庫を借りて車を置いておき、休日乗り回しに行く…といったことが考えられます。でもまあ、自分の住所の近くでないところで車を登録するには手続き的にアレでいろいろ面倒です。また、個人がバスを所有するとなると、好奇の目にさらされやすいのも注意すべきでしょうね。昔は、個人のバス所有は運輸局で根掘り葉掘り事情を聞かれて細かく調査されたそうですよ。白バス対策のためでしょう。今はそんなことはないようですけど。

一方で、東京や大阪のような排ガス規制の厳しい地域に住んでいるのではなく、自宅にバスを置けるほどの土地があるのなら、ウニモグやワズよりもずっと現実味のある車ということになってきます。買い物に出かけた先の大規模ショッピングモールには、たいてい平面の広大な駐車場があるでしょうから、そこに駐車すれば良いですし、地方の国道沿いのコンビニやファミレスにもたいてい広い駐車場があるので、7m車を駐車するくらいのスペースには困りません。つまり、普通の乗用車と同じように普段使いできるのです! これってスゴイことだと思いませんか? たまに仲の良い友人同士集まってドライブしよう!というときも便利です。何しろバスなので、元々たくさんの人を乗せて走るために作られているのですから(7m級の乗車定員は35人前後)、そういう目的こそこの車の真価を発揮する場面と言えるでしょう。いやぁワクワクしますね^^

車両そのものの難点を一つ挙げるとすれば、リーフサスのみでエアサス設定がなかったことくらいでしょうかね…。それから、都内の至るところで見かけた10.5m級のHR(特に初代のKL-HR)はギア比が低すぎるのか、すぐエンジンの回転数が上がりきって、中型車なのにウォーン!と物凄い音を響かせて走っていたのが印象的でした。運転しにくそうだし、燃費悪かったんじゃないかな^^; そこへいくと7m級の方は走っているところを見ても、乗客として車内にいても、そんな風に思ったことはないので、多分大丈夫なのでしょう。まあ燃費は良い方が良いに決まってますが、このような車を自家用車として買う人は燃費にそこまでこだわらないですよね?笑

 

考えれば考えるほどイイ車のように思える7m級HRなのですが、日野は1999年に7m級と9m級の両方を揃えて発売したKK-HRを2004年にPB-HRへマイナーチェンジした際、7m級をディスコンにしてしまいました。エンジンがJ08CからJ07Eへと変更され、レイアウトも変わったことで、7m級シャシでは対応できなくなったためとされています。この頃から排ガス後処理装置の置き場所や配管のレイアウトに苦心するという話をおおっぴらに聞くようになったので、おそらく7m級も新しい規制に対応する余裕(スペース的な)がなかったのだろうと思います。そのうち後処理装置の問題を解決して7m級を復活してくれるといいな…と淡い期待を抱いていたのですけど、今の日野の状況からすると無理でしょうね。残念です^^;

 

ということで、3回に渡って欲しい車のことをあれこれ考えてみました。3つのモデルはそれぞれに気難しいところはありますが、それをカバーして余りある魅力があるのです。そして個人で所有するためにクリアすべき課題というものは、結局のところお金があれば何とかなってしまうのですよね。だからお金があればな〜、と思いました。やれやれ^^;

憧れの車(2)

コンパクトで、そこそこ荷物と人が乗せられて、可能ならM/Tで、何より見た目が可愛い車として、前回はメルセデス・ベンツ ウニモグが欲しい、という話をしてみました。自分の理想をそのまま現実の形にしたような車なのですが…いかんせん値段が^^; ということで、もうちょっと現実的な値段で実際に入手できそうな車を見てみることにしましょう。それがこちら!

jp.rbth.com

これもウニモグに劣らず可愛らしい見た目がいいですね! でもソ連時代の設計でロシア製…機械としての出来には一切期待できません笑 それはともかく、この車はソ連時代から続くロシアの自動車メーカー「ワズ」のロングセラーモデルなのです。「ブハンカ」は愛称(食パンという意味らしい)で、現行モデルは2206といいます。現行モデルってことはつまり、驚くべきことに新車が手に入るのです! そして上記記事のタイトルにマイクロバスと書かれている通り、標準設定で9人乗りが可能なようですよ。いや、これなら3世代同居のご家庭でも揃ってお出かけできるかも^^ または、日本車でいえばハイエースのようなバンタイプのトランスポーターとして使用することも可能です。ということで、前回出した条件のうち条件①と②はクリアですね。

ロシアの車なので左ハンドルのみで、しかも5M/T…というか、ハイ/ローのトランスファーを持ち、それぞれに5段の変速ができるので、実質10M/Tと言える…のかな? もしかするとローの方は、日本の農家向け軽トラにも設定のあるクローラ段のようなものかもしれません。それだと普段使うのは高速段の5M/Tということになりますかね。ということで、紛う方なきマニュアルトランスミッションなのですから文句なく条件③をクリアしています^^

再び見た目の話になりますが、今の車は角張っていて厳ついというかオラついてますよねぇ。でも昔は日本車も丸いボディに丸目というデザインは普通に見られました。ワズ2206は1960年代の車がそのまま現代に現れたようで(しかも事実その通りと言えてしまう)、それが独特の懐かしさを感じさせるのでしょうね。ただ、その懐かしさを抜きにしても、この可愛らしいエクステリアは素晴らしいと思います。現在の自動車メーカーは何故こういう車を作ってくれないのかと思ってしまうほどです。なので条件④も、もちろんクリアです。お、ウニモグと並びましたね笑

他方、ウニモグに対する圧倒的なアドバンテージは、何と言っても値段です。昨今の円安やロシア情勢によって日本での価格は上昇していますが、それでも(輸入業者を通し、納車前に整備と登録をしてもらってさえ)乗り出し500万円以下なのです。ウニモグの10分の1ですよ! こういうところはロシアの本領を遺憾なく発揮してますね^^

 

もっとも、ワズはワズでウニモグとは別のハードルが存在します。それは主に、ロシア生まれだから、ということなのですが^^; ロシア製と聞いて真っ先に心配になるのが、やはり機械としての信頼性や耐久性ではないでしょうか。自分は以前、ロシア製のカメラやレンズにハマっていたことがあるのですけど、光学機器なんていかにも精密って思いますよね。ところがロシアのそれらは本当に工業製品なのか…?と思うような劣悪な精度で作られていることも少なくないのですよ。まあ、それを含めて楽しむのがロシアンカメラの醍醐味とも言えるし、それを許容できる低価格でもあったし、偶然ちゃんと実用になる個体に巡り合えれば、撮れる写真は本当に綺麗でした(レンズの設計は、元はといえば東ドイツから引っ張ってきたものですからね)。そういう、たまにある「大当たり」を探すのが一番の楽しみ、と言えなくもありません笑

では自動車はどうなのかというと、現在のロシアでは日本車の中古車が大人気…というのは置いといて、やはりロシア人の目から見てもワズ2206のような車は時代遅れなものみたいです。ソ連時代が終わって既に30年経っているのに、未だに基本設計がそのままというのは…^^; もっとも、内部的には改良されており、現在のエンジンはフューエルインジェクションで、キャブレターをいじったりする必要はなくなっているそうです。ってこんなの日本車だったら当然のことですが、ロシア車ではトピックになるのですねぇ笑 それと、自動車もカメラと同様に完成度がまちまちだとすると、当たりを引いたときはいいのですが、ハズレを引いたら目も当てられません。しかも車が運任せというのは…。

耐久信頼性や走破性については、もともとワズ2206(のベースモデル)は軍用に作られたという話があり、それなら極寒のシベリアや中央アジアの砂漠でも走破できるはず、可愛い見た目なのに凄いじゃん!そこもウニモグに負けてないな!と思うのですが…実際、近年でもカンボジア軍で使われている様子がネットに上がってたと思いました。でも軍での運用ってどんな感じなんでしょうね? ウクライナに侵攻したロシア軍の捗々しくない戦果を見ていると、ワズ2206も舗装された道路の上だけを走るのがいいんじゃないかな、とか思います笑

 

しかし、いろいろと不安要素があるのは分かっていても、自分で所有してみたいなと思わせる車ですよね。やっぱり見た目の影響は大きいです! それに新車が手に入るのもいいところ。もちろん現状ではロシアからの輸入はできないので、それ以外の国で生産された車が日本に入ってくる、ということになるようですが。まあでも本当にこの車を買ったら、休みの日は車の世話で付きっきりになっちゃうんでしょうかね。手のかかる子ほど可愛いという面も確かにあるので、それはそれで楽しそうですけど、やっぱり相当な覚悟が必要ですね^^;

憧れの車(1)

皆さん自家用車はお持ちですか? 自分は今年20年目になるコンパクトカーに乗っているのですが、この年数になると税金が上がるし、壊れるところも増えてくるしで、日本車といえどもお金がかかります。だからといって新しい車に買い替えようと思うほどの不満はないし、第一今の社会情勢では、当分車が手に入りにくい状態が続きそう。というわけで、少なくともあと数年はこのままかな〜と思っているのですが。

ところで、自分が住んでいるマンションは当初機械式駐車場があったのですが、数年前になくなってしまいました。車を所有する人が減って、機械式を維持するだけの収入が得られなくなった、ということなのまです。確かに、東京に住んでたら自家用車がなくても暮らせます。必要なときだけレンタカーやカーシェアで済ませるってのも充分に現実的です。個人的には、都内でも買い物に行くのに車があると便利だなとは思いますが、まあなくても何とかなりますね。

 

とはいえ、やっぱり自分の好みの車を所有するって、考えただけでもワクワクしますよね^^ 単なる移動手段というものに留まらない魅力というものが、今でも確かにあると思います。で、自分が欲しいなーと思う車の条件は一応固まってるので、ちょっと箇条書きにしてみたいと思います。

 

①それなりにコンパクト

個人的に、必然性もないのに大きな車は好きではありません。無駄って感じしませんか? 実際に、車は大きさに比例して価格も維持費も高くなる傾向にあります。逆にコンパクトな車は(新車価格は当てはまらないことが多いですが)少なくとも維持費は安くなる傾向がありますね。それに、狭い路地に入りやすいし、駐車場所の制約も少なく、トータルで取り回しが良いのもいいところです。これだけ軽自動車が人気なのも分かりますね。

 

②それなりに人や荷物が積める

しかし、車なのだから人や荷物がある程度たくさん運べてほしいものなのです。車を何台も持てる人なら1台くらいは2人乗りスポーツカーを所有するのも面白いでしょうけど、残念ながら自分には無理です笑 つまり、自動車を持つからには、ある程度の実用性がなければいけないわけですね。ただ、①のコンパクト性とは相反することが多いです。小さくするあまり積載性や居住性、乗車人員が犠牲になった車というのは過去にもあるのですが、だいたい短命に終わってますよね。そういう車は、ちょっと所有する意味が…って感じになってしまうのでしょう。

 

③M/Tの設定がある

現時点では、そして将来的にも、やや厳しい条件です^^; 別に、M/Tの方が燃費が良いとかいうような実用的な意味を求めているのではなく(というか、現在の自動変速の制御は大変出来が良いので、よほどのことがない限り人間がM/Tでガチャガチャやるより燃費が良いと思います)、何となく「運転してる!」という気分になれるし、自分はそういう気分が好きだということです。そういう気分はただの気のせい、と言われればそうかもしれませんが笑 それで、現状M/Tが絶滅寸前なのは明らかで、設定車種は非常に限られています。ちょっと前まではトラック・バスのような商用車はM/Tが普通だったのですが、今はもうA/TやAMTが標準になってきてますもんね。なのでこれは、もしあれば…というくらいです^^;

 

④見た目が可愛らしい

これは意外と重要です。今流行のイカツい顔つきの車には、どうしても思い入れが抱けません。逆に可愛らしい見た目だったら、多少の欠点には目をつぶってしまいそう。まあ、完全に好みの問題なのですけどね。

 

…我ながらワガママですね笑 こんな条件を満たす車があるのか、と思う人がいるかもしれませんが、日本に限らず輸入車にまで範囲を広げれば見付かるものなのですよ。ということで、自分が今一番欲しい車がこちら!

www.yeng.co.jp

ダイムラーが誇る多目的動力装置・ウニモグです! まあトラックなんですけど、トラックとしてはコンパクトなのですよ。そして、需要の多い日本向けにGVW8tの車型(日本でいうところの4t車です)が設定されており、それであれば普通車として登録が可能なのです。てことで条件①はクリアしてますね。そしてトラックですから後ろに荷台を付ければ、小さなGVW8t車であっても4t前後の積荷を積むことができます。個人で使うには充分すぎる積載量です。ダブルキャブにすれば5〜6人程度の乗車は可能でしょうから、条件②もクリア。条件③は、残念ながら現行のウニモグはM/Tではありません。でも、標準の速度域で前進8段・後退6段(後退6段なんて、普通の運転では絶対必要ないですね)、さらに低速16段、超低速24段もの超多段トランスミッションを搭載しているのですよ! これは作業系の車両として使われるからですが、自分ではそんな低速・超低速は使わないとしても、そういうことをやろうと思ったらやれる、というのが良いんですよねぇ。ということで条件③もクリア。最後の条件④は、現行モデルよりも昔の方が可愛らしかったと思います。

youtu.be

こちらの動画では、いろんな世代のウニモグを一度に見ることができます(ドイツでの趣味者向けイベントでしょうかね)。自分が好きなのは丸っこいキャブの406です。いやあ可愛いですよね。なので文句なく条件④もクリア。したがってウニモグは自分の欲しい車というものにぴったりなのです! いいな〜欲しいな〜^^

 

もっとも、輸入車であり特殊なトラックシャシでもあるため、個人で所有するには高いハードルが存在するのも事実です。それはまず値段。現行モデルの新車をドイツから輸入する場合、仕様により大きく異なりますがだいたい1台5,000万円というのが目安です。GVW8tの小さい車型は多少安いのか、あまり変わらないのか分かりませんが、物凄く安いことはないでしょう。一方、日本のトラックメーカーの4t車は、新車でおよそ1,000万円ほど。ウニモグがいかに高価な車であるかが分かります。もちろん維持費も大変な出費を強いられることは間違いないでしょう。日本製のトラックだってちゃんと手入れしないと故障しますし、排ガス浄化装置が弱点という車もいろいろとある状況なのに、ドイツからやってきた車というのはどんな感じになるのでしょう? そういえば現行モデルは運転席が左右にスライドするバリオパイロットという機構が組み込まれていて、作業系車両としては確かに有用な機能ではあるのですが…個人で所有していて、それが元で頻繁に故障したりしないのか…と思ったりもします。それから地味に困るのが置き場所。いくらコンパクトといっても、さすがにコンパクトカーと同じスペースでは済みません。だから自分の場合は今所有しているコンパクトカーの駐車場所にウニモグを駐車することはできず、専用の置き場を確保する必要があります。それも自宅近くでとなると…あ、でも4tダンプと同じと考えればそれなりに場所はあるのかも(ないかも)。まあ何にしても、所有するには相当な覚悟が必要ですね^^;

 

上に書いたようなことは、概ねお金があれば解決できます。つまり、だいたいの問題はお金の話に還元できるのです。ということは、自分の収入を増やすなり何なりしないと根本的には解決できませんね。それは困ったな笑 

不正の行為があったのに…?

という疑問を、誰でも一度は抱くのではないでしょうか。そう、それは「権利義務者の解任」についてです。権利義務者が不正を働いても、解任することはできません。解任の訴えを起こすこともできないのです。このことは、司法書士試験の会社法で出題されてます。

株主は、退任後もなお役員としての権利義務を有する者については、その者が職務の執行に関し不正の行為をした場合であっても解任の訴えを提起することはできない。(平成22年 問34-ウ)

答えは○。解任も辞任もできません。商業登記法の記述式の方でも、権利義務者にはさんざん悩まされてますよね笑

 

“権利義務者”というのは、株式会社の役員が任期満了または辞任により退任した後も、役員としての権利を持ち、義務を負う人のことです。法令や定款で役員の人数が決まっている場合に、ある役員が任期満了あるいは辞任により退任したとします。そのときすぐに後任や補欠の役員が就任すれば問題ないのですが、それがないまま辞められると、法令や定款で定めた員数に欠ける事態に陥ります。そんなとき、その辞めた役員が権利義務者になるのです(会社法346条1項)。

たとえば、ある取締役会設置会社に取締役A、取締役B、取締役Cの3人がいるとします。取締役会設置会社は取締役が3人以上いなければいけませんが(331条5項)、この会社はそれを満たしていますね。ところがあるとき突然、取締役Aが辞任すると言い出したらどうなるでしょう? 会社と取締役の関係は委任とされている(330条)ので、取締役が辞めたいと言えばいつでも辞められるのが基本です(民法651条1項)。しかし、この会社は取締役会設置会社。後任も補欠もなくAが辞めると、取締役がBとCの2人しかいなくなって法律で定められた員数に欠けてしまいます。これでは会社の機関が機能しなくなって困りますね。そこで、辞任(または任期満了)で退任した取締役に、辞任後も取締役としての権利義務を果たしてもらうことになっているのです(346条1項)。この事例のAのように辞めてからも権利義務を持っている人のことを「権利義務者」といいます。この会社は権利義務取締役Aと、退任していない通常の取締役BとCとを合わせて法定の員数(3人以上)を満たしていることになるわけですね。

それで、権利義務取締役Aには実際どんな権限があるのかというと、これは普通の取締役と変わりません。取締役としての権利を持ち義務を負う、とされているのですからね。なのでAは辞任前と同じように取締役会に出席できますし、代表取締役に選定されることもできますよ。ただし義務も負っているので、善管注意義務や忠実義務が課されたままですし、利益相反取引の規制も受けます。権利義務者になっていることに気付かず、辞めたつもりで会社と取引すると思わぬトラブルにつながる可能性がある、ということなのです^^;

 

では、権利義務取締役がこの状態を解消できるのは、というかAからすれば本当に辞められるのはいつなのでしょうか。それは、権利義務取締役がいなくても員数を満たせるようになったときです。つまり、後任の取締役が選任されたとか、裁判所で一時取締役(仮取締役)が選任されたとかした場合ですね。この会社でいえば、後任として取締役Dが選任されたとすると、B、C、Dの3人だけで法定の員数を満たした状態になります。こうなって初めてAは取締役の権利義務から解放されるのです。会社の役員って辞めてからもこういうことになる可能性があり、とても責任が重いものなんですね。

なお、上でちょこっと言いましたが、権利義務者になるのは任期満了か辞任で退任したときだけです。死亡、欠格、解任などで退任した場合は権利義務者になりません。亡くなってしまったらもうどうにもなりませんし、欠格事由に該当する人や解任された人に役員の仕事をさせるのは適切ではないからで、法令や定款で定めた員数に欠けることになったとしても退任させることができます。

 

ところで、会社は株主総会の決議によって、いつでも取締役を解任できます(339条1項)。解任することに理由は必要ありません。もっとも、本当に理由もなく解任すると、その取締役から損害賠償を請求されるでしょうけど(339条2項)、委任の関係ですし一応そういう解任も可能ということです。さらに、一定の要件を満たす株主は一定の場合に取締役の解任の訴えを提起できます(854条)。株主代表訴訟と言われているものです。

それでは、権利義務取締役が不正の行為をしたらどうなるのでしょう? 取締役と同じ権利義務を持つ者が不正を働いたのだから、自ら身を引かない場合は訴えるしかない!訴えることができて然るべき!と思えますよね。しかし冒頭で見た通り、この訴えはできないのです。ちょっと不思議じゃないですか?

 

ここで、解任の訴えができることの根拠である854条を見てみましょう。

会社法854条 役員(第329条第1項に規定する役員をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき又は当該役員を解任する旨の株主総会の決議が第323条の規定によりその効力を生じないときは、次に掲げる株主は、当該株主総会の日から30日以内に、訴えをもって当該役員の解任を請求することができる。(以下略)

「329条1項に規定する役員」というのは取締役、監査役、会計参与のことです。また「次に掲げる株主」は、総株主の議決権の100分の3とか6ヶ月とかいうヤツですね^^; てことで、条文を読むと何となく権利義務取締役を解任できると読めそうな気もしてきます。それに、取締役として不適任な人物を(権利義務者とはいえ)取締役のままにしておくなんて、どう考えてもおかしいと思うのですが…。

 

冒頭の問題は実は司法書士試験の会社法では珍しい判例問題で、最判H20.2.26が元になっています。同族経営をしている会社で権利義務取締役と株主とがちょうど半分ずつの株式を保有するという膠着状態に陥り、株主総会で取締役を選任できなくなってしまった、というのが事の発端のようです。それで上記の判決では、

①854条で規定する役員等(つまり329条で規定する役員等)の中に権利義務者は含まれていない

②権利義務取締役が不正の行為をした場合、裁判所が必要と認めるときは、利害関係人の申立てによって一時取締役を選任できる(346条2項)。そして346条1項によれば、権利義務取締役は新たに選任された取締役(一時取締役を含む)が就任するまでその権利義務を有すると定められており、利害関係人が一時取締役の選任を申し立てることで権利義務取締役の地位を失わせることができるのだから、そういう手段をとればよい

という理由を挙げて、権利義務者に対して解任の訴えを起こすことはできないとしました。他にやめさせる方法が既にあるんだから、それをやればいいじゃん、ということでしょうかね。だから、権利義務取締役を解任できないなんておかしい!と思ってしまうのは、単にやめさせる方法を知らないからだ、ということになります。「ちゃんと勉強しろよ笑」と言われたみたいで悔しい気分になりますね笑

それはともかく、権利義務者を解任する制度というものをわざわざ作らなくても、今ある制度を利用すれば権利義務者をやめさせることができる、と最高裁は言うわけですが、このケースのような株式をちょうど同数ずつ持っている人たち同士で対立していると、実際の解決は相当に難しそうです。株主がごく少数しかいない小さい会社で、一時取締役に適任な人を見つけてくること自体がまず難しいですし、一時取締役の選任を申し立てたとしても裁判所が「必要と認める」とは限りません。さらに、一時取締役が就任して権利義務者が退任したとしても、このケースではその元取締役が株式を半分持っているので、結局膠着状態からは抜け出せないでしょう。こうなったらもう、株主と元取締役がそれぞれ別の会社を立ち上げて別の道を進む、という方法しかなさそうな気がしますね^^;

 

というわけで、いろいろ調べてみるとやっぱり微妙な気分になる権利義務者のお話でした。これも試験対策的には結論を覚えておけば充分なんですけどね。記述式などではむしろ「権利義務になっている」という状態の方が重要なわけで。う〜ん微妙笑

担保付社債信託法…

司法書士試験の会社法で、時々ですが社債について出題されます。社債と聞いたら普通は証券会社などで取り扱っている金融商品の一つであると思いますよね。しかし司法書士試験では社債の金融面について触れられることはなく、専ら手続きの話が出てくるのでした。つまり、社債発行は誰が決めるのか、社債管理者にはどんな権限があるか、社債権者集会決議に裁判所の認可が不要なのはどういう場合か、みたいなことです。一般にイメージする社債の話とは全然違うのですよね。しかも、司法書士が仕事として社債に関わることって実際どのくらいあるんでしょうかねー。社債のことは登記事項ではないし、社債の金融面については司法書士ではなく公認会計士や税理士に聞くのがいいでしょうし。

 

なので社債の問題は、会社法の中でもマイナーな論点として扱われています。とりあえず、どんな問題なのか見てみましょうか。

 社債管理者に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
 なお、担保付社債信託法の適用は、ないものとする。
 また、問題を解くにあたっては、各肢に明記されている場合を除き、定款に法令と異なる別段の定めがないものとして、解答すること。

 

ア 会社は、社債の総額を2億円とし、各社債の総額を200万円として社債を発行するときは、社債管理者を定める必要がない。

イ 社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

ウ 社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受けるために必要があるときは、裁判所の許可を得て、社債発行会社の業務及び財産の状況を調査することができる。

エ 社債管理者が社債権者集会を招集するには、裁判所の許可を得なければならない。

オ 社債管理者が社債発行会社及び社債権者集会の同意を得て辞任する場合において、他に社債管理者がないときは、当該社債管理者は、あらかじめ、事務を承継する社債管理者を定めなければならない。


1 アイ  2 アエ  3 イウ  4 ウオ  5 エオ

平成26年 問33)

正解は2ですが、今回注目したいのは問題そのものではなく、問題文の冒頭に書かれている条件なのです。「担保付社債信託法の適用は、ないものとする。」という一文がありますね。担保付社債信託法は、もともと明治38年に制定された古い法律です。名前の中に「信託」の文字があるから信託についての法律なのだろうってことは分かりますが、何と信託の一般法である信託法・信託業法よりも前から存在しているのですよ。

 

それでまず担保付社債とは何かというと、これも文字通り社債に担保が付いているということです。担保付社債は、会社の全財産から優先弁済を受けられる一般担保付社債と、特定の財産を担保とする物上担保付社債の2種類に分けられますが、担保付社債信託法は物上担保付の方を扱う法律なので、以下では担保付社債といったら物上担保付であると考えて下さい。で、明治時代の産業近代化によって資金需要が急増し、多くの会社が社債という手段で調達しはじめたのですが、財政基盤が脆弱なのに社債を乱発して、突然会社が破綻して社債がパーになるという出来事が頻繁に起こって問題になったようです。また、日露戦争後の特需に対応して積極的に外資を導入するべく、社債に担保を付けさせることを目的にできたのが担保付社債信託法なのですね。これ以降、社債の発行は原則として担保付きでなければならない(有担原則)という実務慣行が確立し、社債はそんなに気軽に発行することはできなくなりましたが、その代わり比較的安全な金融商品となったのでした。

時代は進んで金融にも自由化の波が押し寄せ、企業の資金調達手段は多様化し、投資家にとっても魅力的な投資先がたくさん出てきました。それに合わせて社債の有担原則もだんだんと緩和されてきて、今では無担保社債が普通…というか担保付きで発行される社債は皆無と言ってもよい状況になっています。何しろ、公募債では1991年以来、私募債では2006年以来、担保付社債の起債がないということですから。なぜ担保付きではなくなってきたのかというと、公募債の場合はそもそも安定的で信用度の高い企業が社債の発行会社であったため、担保が付いたからといってさらなる信用アップの余地に乏しかったから、私募債の場合は銀行保証が一般化したから、と言われているようです。

 

さて、社債に担保を付ける方法として、この法律では信託という仕組みを利用しています。単純に考えれば、抵当権のように社債権者が個別に担保権を持つというやり方もあり得るのですが、何しろ社債というのは広く公衆に買ってもらうものであり、社債権者の人数は相当な多数に上るわけです。しかも社債は人から人へ転々と流通して投資対象になるものですよね。ところがその社債に抵当権のような担保権が付いていたら、譲渡するための手続が煩雑すぎます。それに、一刻も早く回収しようとする社債権者と、長期の投資対象と考えている社債権者がひとまとめにされていたのでは、担保権を実行するタイミングの予想が付かないし、お互い良いことがないでしょう。

そこで目を付けたのが信託という仕組みです。信託は、委託者がある財産を他人である受託者に「信じて託す」ことで、受託者が財産を管理運用し、そこで得られた利益を受益者にもたらす、というシステムです。信託の大事なところは、財産を管理するのは受託者であり、利益を享受するのは受益者であって、受託者と受益者が別の人、という点。そして財産の中には当然物権のような権利も含まれるから、権利が帰属する人(受託者)と、利益が帰属する人(受益者)とを別々にできるところが、信託の大きな特長なのですね。そこで、委託者(社債の発行会社)が担保権を受託者(銀行や信託会社など)に信託し、受託者が受益者のために担保権を管理して、仮に担保権を実行することになったら、受益者(債権者)の債権額に応じて弁済が受けられる、という形になっているのです。

この方法は、抵当権を信託するセキュリティ・トラストと同じやり方です。信託法は平成18年改正でセキュリティ・トラストを明文で認めるようになりましたが、担保付社債信託法は最初からこういう方法なわけで、明治時代に信託のそういう特質を見抜き、社債発行に応用することを考えついた人って凄いなと思います。一方、担保付社債信託法の一般法である信託法自らセキュリティ・トラストを認めたので、担保付社債信託法の役目って何?みたいなことになりそうな気がしません?^^;

 

…といった感じで微妙な立場にある担保付社債信託法という法律、司法書士試験の注意書きに出てくるのは法律科目の試験だし法的に曖昧な部分を残さないためであって、上にも書いた通り一般の株式会社については担保付社債は私募債でさえ2006年以来起債がないわけです。また、保険会社や投資法人などが発行する社債が担保付の場合は担保付社債信託法が適用されるようなのですが、こちらも無担保での発行が一般的なようです。ということは、担保付社債信託法が実際に運用される場面など実務上はほぼ皆無に等しく、学術的にも忘れ去られていく存在なのだろうな…と思っていたのです。ところが、実務上はどうなのか分かりませんが学術的にはそんなことはないようなのですよ。

会社法の逐条解説書である「会社法コンメンタール16 社債」(商事法務)を見てみると、会社法社債の規定(676条〜742条)が載っているのはもちろんなのですが、その他にも何と担保付社債信託法全70条が収録されているのです! しかも、会社法の部分にも担保付社債信託法の部分にも江頭憲治郎先生が前注という前書きを書いていて、これがとても分かりやすくて有り難いのですよ。さらに、この本において担保付社債信託法は付録という扱いですが、中身の質的には会社法の解説とまったく変わらず、条数がだいたい同じ(会社法が67条)であることからページ数もだいたい同じくらい割り当てられていて、ずいぶん厚遇されているなぁ…と思えます。

そして解説の記述は、担保付社債信託法の意義を説明するものなのだから当然かもしれませんが、同法の規定は大いに意味のあるものなのだ、というムードが濃厚に漂っています^^ まるで企業金融のメインストリームが担保付社債である世界線のようなのです。さっき挙げた信託法のセキュリティ・トラストの件も、それが規定されたからといって担保付社債信託法の意義が失われるものではない!と断言してたりするのですよ。また、信託法・信託業法と整合の取れていない部分について、今後改正をしていくべきだみたいなことが書かれていたりもします。ほとんど利用されていない法律なのに、法学者の目から見ると違うものなんでしょうかね。とても驚くとともに、思わず引き込まれてしまいました笑

 

一応、会社法コンメンタール16のリンクを貼っておきますね。

 

会社法コンメンタールは、21分冊で会社法全体をカバーしています。説明が詳細で助かるのですけど…結構いいお値段ですよね。まあ、個人で買うものではないのかも。自分だって会社で読めるから読んでいるわけで^^;

 

そうそう、司法書士試験の社債の問題に付けられている担保付社債信託法の注意書きなのですが、上の問題の次の年(平成27年)は同じように担保付社債信託法が登場したものの、次に社債が出題された令和2年は「明記されている場合を除き、定款に法令と異なる別段の定めがないものとして〜」といったものに変わってしまいました。いちいち表記しなくてよいと思われたのか、本当に担保付社債信託法に引っかかるところがないのか、そもそも平成26年と27年の問題はどこが担保付社債信託法に関連しているのか、まったく分からないのですよね笑 これからも、こういう謎を振りまく法律として存続し続けてくれるのでしょうか。