目指せ!47歳からの司法書士受験!

法律初学者のおっちゃんが合格するまでやりますよー

不合格でした^^;

本日16時、令和4年度司法書士筆記試験の合格発表がありました。合格された方、おめでとうございます!設定が緩めの多肢択一や、意表を突く出題だった記述を切り抜けて、見事合格を勝ち取ったのは素晴らしいです。これからのご活躍をお祈りしております!

 

で。自分の結果はというと、残念ながら不合格でした…。コロナから回復したばかりだった前回はともかく、一応ちゃんと勉強できたはずの今回の結果はちょっとショック! でもまあ、気持ちを切り替えてやるしかないですねー。近々、法務省から試験の結果が送られてくると思うので、それを見て対策したいと思います。取りあえず、お疲れさまでした。

詐害行為取消権(5)

さてここからは、詐害行為が取り消された場合に、各登場人物間の関係がどうなるのかを見ていきましょう。全体としては、逸失した財産が債務者のもとへ戻ってきたら、それはすべての債権者のための共同担保になり、民事執行法に従って強制執行の手続が行われることになるのですね。ただし、債務者も財産の処分権限を回復します。詐害行為の取消しが認められたからといって、債務者に何らかの制限がかかるわけではありません。だから不動産が戻ってきたら、債権者としては処分禁止の仮処分をしておくべきでしょう。

 

●取消債務者と債権者の関係

上に書いた通り、債権者は強制執行するか配当要求するかによって債権を回収します。ただ、取り戻す財産が金銭または動産の場合は、取消債権者は、受益者(または転得者)に対して自己に直接その財産を給付することを請求できます。つまり詐害行為取消権を行使した債権者は、受益者などに対し、取り戻すべき財産が金銭なら自分に支払え、動産なら自分に引き渡せ、と言えるのです。さらに重要なことに、給付された財産が金銭である場合は、債務者が取消債権者に対して有する受領金の返還請求権を受働債権、自己の債務者に対する被保全債権を自働債権として相殺することができるという、事実上の優先弁済が認められています。これは債権者代位権のところと同じですね。とはいえ、確定判決の効力は債務者にも及ぶのだから、債務者から受益者(または転得者)に対して財産を返還せよ、と言うこともできます。そして受益者などが債務者へ返還すると、それが金銭や動産であっても、取消債権者に支払う(引き渡す)義務は消滅してしまいます。特に金銭の場合、取消債権者からすると、事実上の優先弁済が受けられない事態となるわけですね。ここでも、素早く動くのが大事って感じです。

 

●債務者と受益者の関係

債務者Bの土地(1,000万円相当)を受益者Cに500万円で売却したところ、Bの債権者Aに詐害行為として取り消されたとします。するとCは土地を持っている理由がなくなるので、Bに返還することになりますね。では、この土地を買うためにCがBに支払った500万円はどうなるのかというと、次のような規定があります。

民法425条の2  債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

CはBの土地を取得するために500万円を支払っています。この500万円が「財産を取得するためにした反対給付」ですよね。なのでCはBに対し、500万円の返還を請求することができます。ただし、CのBに対する返還は、BのCに対する反対給付の返還よりも先履行とされていて、同時履行の関係にはありません。反対給付の返還をするのはBであって、詐害行為取消権を行使したAがBの財産の中から反対給付を返還する権限はないので、もしBが反対給付の返還に協力しないとすると、Cは取消しがされたにもかかわらずBが反対給付の500万円を返還をするまでは自分も土地を返還しないままでいることができ、しかもAにはこれといった対抗手段がなく不合理だからです。この場合、CはBに土地を返還して初めて、自分が支払った500万円の返還を請求できます。

それで、425条の2の条文の中に(債務の消滅に関する行為を除く。)というカッコ書きがありますね。債務の消滅に関する行為というのは弁済や代物弁済のことです。たとえば、受益者Cが債務者Bに対して有する500万円の金銭債権をBがCに対して弁済したところ、Bに対して700万円の債権を有する債権者AがBを被告として、BのCに対する弁済を詐害行為(特定の債権者を利する行為)として取り消した、というようなことです。この場合、CがAに対して500万円を支払うと、CのBに対する500万円の金銭債権が復活します。

民法425条の3  債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。

この規定がないと、Cはお金を返したのに自分の債権は消滅したまま、てことにもなりかねませんからね。

425条の3カッコ書きの424条の4は、過大な代物弁済のことです。過大な代物弁済が詐害行為として取り消されるときは、過大とされる部分だけが取り消されるのでしたよね(一部取消し)。しかし、その過大とされた部分を返還したとしても、代物弁済で消滅した債務に相当する額を償還したことにはならないので、こういう場合は受益者の債務者に対する債権は復活しないことになっているのでした。

 

●債務者と転得者の関係

債務者Bの財産が、債務者B→受益者C→転得者Dと移転していったとします。そして、Bの債権者Aが、債務者Bの行為を転得者Dとの関係で詐害行為として取り消した場合、Dはその詐害行為をベースに取得した財産またはその価額を、B(またはA)に返還することになりますね。ところが前回見たように、転得者に対して行使された詐害行為取消権の効力は、受益者Cには及びません。そのため、DがBまたはAに返還したとしても、Cに対する反対給付の返還請求や、Cに対して有していた債権の復活は認められないのです。これはちょっとDに酷と言えるでしょう。そこで、このDのような立場の人を保護する規定が設けられています。

民法425条の4  債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする。
① 第425条の2に規定する行為が取り消された場合
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
② 前条に規定する行為が取り消された場合(第424条の4の規定により取り消された場合を除く。)
その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権

受益者の場合でいうところの425条の2(反対給付について)が転得者の425条の4第1号、受益者の425条の3(債務の消滅について)が転得者の425条の4第2号に相当するのですね。つまり、受益者が債務者に財産を返還したとすれば受益者が債務者に請求できた反対給付の返還や、認められたはずの債権の復活が可能になるということなのです。ただし1号も2号も、転得者がその財産を取得するためにした反対給付または消滅した債権の価額が限度となっています。

といっても分かりにくいので1号の方を具体的に考えてみましょう。債務者Bが有していた300万円相当の時計を受益者Cに対して200万円で売却し、さらにCが転得者Dに対して100万円で転売したところ、Bの債権者AがDを被告としてB→Cへの売却を取り消し、DがB(またはA)に時計を返還したとします。もし、この訴訟の被告がDではなくCで、Cに対して詐害行為取消権が行使されていたとしたら、Cは時計の代金(時計の反対給付)としてBに支払った200万円の返還を請求できたはずです。そこで、DはこのCのBに対する200万円の返還請求権を、D自らが支払った反対給付である100万円を限度として行使できる、というわけなのです。DがCの返還請求債権を代位行使するようなものですね。

 

ということで、平成29年の改正点を中心に5回にもわたって詐害行為取消権を大雑把に見てきました。なんかいろいろ見たような気がするんですけど、これでも本当に大雑把にザッと見たに過ぎないのですよ。詐害行為取消権って複雑で奥深いんですよねぇ。司法書士試験では、詐害行為取消権の改正論点がガッツリ出題されたことはまだないのですけど、近いうちに突っ込んだ問題が出てきてもおかしくない気はします。時間のあるうちに、債権法のテキストを読み直すのと、倒産法の本を少しでも読んでおくといいかもしれませんね^^;

詐害行為取消権(4)

詐害行為取消権の問題でよく出てくるのが転得者ですね。受益者は債務者の詐害行為によって直接利益を得た人で、転得者は受益者以外で利益を得た人のことです。債務者Aが受益者Bに土地を譲渡し、さらにBが転得者Cに土地を転売した、みたいな形で出てきます。さらにさらに、Cが別の転得者Dに転売することもあり得ます。こういう場合、B→CやC→Dへの取引がどういうときに詐害行為とされるのか、債務者と受益者、債務者と転得者、転得者が複数いるときの関係がそれぞれどうなるのかを見ていきましょう。

 

転得者に詐害行為性が認められる要件は、大まかなところは受益者の場合と変わりません。ということで、受益者の要件を再確認しておきます。

  1. 債権が存在していること
  2. その債権が、詐害行為前の原因に基づいて発生したこと
  3. 債権者が自己の債権を保全する必要があること(債務者の無資力)
  4. 債務者の行為が財産権を目的としていること
  5. その行為が債権者を害することを債務者が知っていたこと(詐害の意思)
  6. その行為が債権者を害することを受益者が知っていたこと(受益者の悪意)

転得者は、これらに加えて転得者特有の要件があるのです。まず受益者から転得した転得者の場合は、

転得のときに、債務者の行為が債権者を害することを転得者が知っていたこと(転得者の悪意)

転得者が他の転得者から転得した場合(転得者が複数いる場合)は、

その転得者に至るまでの転得者全員のそれぞれの転得のときに、債務者の行為が債権者を害することを転得者全員が知っていたこと(転得者全員の悪意)

となっています。つまり転得者の悪意が必要となります(424条の5第1号・2号)。ただし、受益者の悪意は債権者が証明する必要はありませんが(受益者が自分の善意を主張立証する)、転得者の悪意の方は債権者が立証しなければいけません。これは、転得者は債務者と直接取引したわけではないので債務者の経済状況を知ることが受益者よりも難しく、受益者と転得者とは利害状況が異なることが理由です。そして、転得者と受益者がいる場合は転得者と受益者の両方が悪意でなければいけませんし、転得者が複数の場合は転倒者全員と受益者がみんな悪意でなければいけないのです。この中に善意の者がいたら、その善意者はもちろん、それ以降に登場した人たちにも取消請求できません(転得者がX→Y→Z→U→V→…と複数いて、Zが善意だった場合、XとYには詐害行為取消請求ができますが、Zとそれ以降に登場したU、V、…にはできない、ということです)。いったん善意者が出てきたらそれ以降はできないというのは民法のいろんなところで見られますね。これは取引の安全を確保するためです。それから、悪意の対象は「債務者の行為が債権者を害すること」です。受益者が悪意だったことや、ある転得者より前の転得者が悪意だったことを知っている必要はない、とされています。上の例でYに対して取消しを請求するには、「(Yより前の)Xが悪意だった」という事実は、別にYが知らなくてもよいわけですね。

それと、受益者の善意は受益者に立証責任があり、転得者の悪意は債権者に立証責任があると言いましたが、転得者だけを被告とする詐害行為取消訴訟であっても、受益者の善意は転得者が立証しなければいけません。受益者の善意は、詐害行為取消請求に対する抗弁事実ということなのですね。

 

ところで、詐害行為取消権は裁判上で行使するものであり、誰に確定判決の効力が及ぶのかが規定されてるのでした。前に見た425条をもう一度見ておきましょう。

民法425条  詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

ここで、債務者B→受益者C→転得者D→転得者Eと財産が移転していて、債権者Aが転得者Dだけを被告として詐害行為取消訴訟を起こしたとしましょう。さらに、BにはAの他にもG1、G2、G3、…などの債権者がいるとします。Aがめでたく勝訴し(認容する判決)、この判決が確定した場合に、効力が及ぶ人を見ていきましょう。

▼債権者Aと転得者D

この人たちは訴訟の当事者です(民事訴訟法115条1項)。だから判決の効力が及ぶのは当然ですね。

▼債務者B

認容判決が確定すると、債務者Bに効力が及びます(425条)。しかしAが敗訴してしまうと、Bには効力は及びません。債権者代位権と異なるところです。

▼A以外のBのすべての債権者

G1、G2、G3、…のことです(425条)。しかも、詐害行為の時点や判決が確定した時点よりも後に債権者になった者も含まれます。取り戻された財産は、すべての債権者のための共同担保になるわけですからね。また、Aよりも前に詐害行為取消訴訟を起こして負けた債権者や、詐害行為取消権を行使する要件を満たさなかった債権者がいたとしても、この中に含まれます。

一方で、効力が及ばない人もいます。

●受益者C・転得者E

この人たちは訴訟の直接の相手方ではありません。だから転得者Eに効力が及ばないのは分かるとしても、受益者Cにも及ばないのですねぇ。なのでこの訴訟で問題となった詐害行為に基づいて、CからBへ反対給付をしていたとしても、Cはその給付の返還や価額の返還を請求することはできないのです。一方で、CやEが債務者Bの債権者(つまりCやEはG1、G2、G3、…のうちの誰か、ということです)でもある場合は、425条の言う「すべての債権者」に含まれるので効力が及びます。

●転得者Dの債権者

転得者には転得者の債権者がいる場合も当然考えられます。でもその債権者には効力が及びません。なので、Bから逸失した財産がDのところにあるうちに、Dの債権者がその逸失財産を目的として強制執行をしてきたときは、これを排除することはできません。とにもかくにも、財産を差し押さえるのは早い方が良いってことでしょうかね^^;

なお、前から書いている通り、詐害行為取消権は債務者の財産から逸出したものを取り戻して原状回復するのが根本的な目的です。そこで逸出財産を回復する方法としては、現物を返還するのが原則となっています(424条の6第1項前段・2項前段)。つまり、債務者Bが唯一の財産である高価な時計を受益者Cに譲渡した場合、この譲渡を債権者Aが取り消したら、CからBにその時計を返還する、ということになりますね。しかし、現物を返還することができないこともあり得ます。Cがさらに転得者Dに時計を譲渡し、その後AがCを訴えてBからCへの譲渡を取り消した場合、時計は既にDの手に渡ってしまっていて、しかもC相手の訴訟ではDに判決の効果が及ばないので、もはや時計をBのもとへ取り戻すことはできません。こういうときは、現物の返還ではなく価額賠償をすること(要するにお金を払う)とされています(424条の6第1項後段・2項後段)。価額の算定の基準時は、事実審の口頭弁論終結時です。

 

425条で定められている通り、転得者に対してされた詐害行為取消しの効果は、その転得者と債務者に及びます。しかし、転得者の前の人(受益者や、転々と転得された場合は前の転得者)には及ばないのです。なのでこのときの転得者は、債務者に対して現物や価額を返還したとしても、受益者や前の転得者などに対して反対給付の返還を請求したり、有していた債権の回復を求めたりすることはできない…のですけど、ここまでで話が長くなったし、この先の話も長くなりそうなので、続きは次回^^;

詐害行為取消権(3)

まだまだ続く要件⑤その行為が債権者を害することを債務者が知っていたこと(詐害の意思)の話。今回は、特定の債権者を利する行為(偏頗行為)過大な代物弁済等について見てみたいと思います。これらは破産法に同様の仕組みがあって、それを民法に採り入れたのでした。それで偏頗行為というのは、たくさんの債権者がいる債務者が特定の債権者だけに弁済した、というときに問題となります。特定の債権者は自分の債権を満足させられるけど、弁済を受けられなかった他の債権者は自己の債権を回収できなくなるリスクが高まるので、そういう債務者の弁済を詐害行為として取り消したいというわけですね。偏頗行為には、このような弁済その他の債務消滅行為のほか、既存の債務のための担保提供行為もあります。過大な代物弁済等は、たとえば100万円の金銭債務のために、代物弁済として1,000万円相当の不動産を引き渡した、というような場合に詐害行為性を認めるものです。

 

まず弁済その他の債務消滅行為は、原則として詐害行為にならないとされています。「その他の」というものの中には、代物弁済、債務者がした相殺、更改が含まれます。たとえば特定の債権者に弁済した場合、確かに特定の債権者だけが債務者から現金等を得て、債務者の持っている現金等が減ることになりますが、一方で特定の債権者が有していた債権の分だけ負債も減ることになります。だからトータルすれば債務者のしたことは財産減少行為とはいえない、ということなのです。ただし、次の要件をすべて満たした場合、弁済その他の債務消滅行為が詐害行為とされます(424条の3第1項)

  1. その行為が、債務者が支払不能であったときにされたこと
  2. その行為が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図で行われたこと(通謀的害意)

支払不能は、無資力とちょっと違う概念です。無資力は、債務の総額が財産の総額を上回ること(要するに債務超過)ですが、支払不能は債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的継続的に弁済することができないこと、なのです。支払能力には財産や信用、労務による収入が含まれており、債務者に財産があってもその換価ができなければ支払不能になるし、お金がまったくなくても信用や労務による収入による支払能力があれば支払不能にはなりません。

通謀的害意は、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を出し抜いてやろうと企むことでしょうけど、実際のところ通謀的害意はかなり厳しく狭く判断されているようですよ。たとえば最判S33.9.26では、受益者が債務者に対して弁済を強く要求し、債務者が他の債権者を害することを知りつつこの弁済をしたとしても、それだけでは通謀があったとは言えないとしています。この事例では受益者自身が資金繰りに困っていたことや、それによって強く要求したという事情があるし、債権者が債務者に弁済を求めるのは当然というのですね。さらに最判S52.7.12は、債権者の暴力的強請によって弁済した場合でも通謀的害意を認めませんでした。まあ債権者が暴力に訴えることと、債権者と債務者が通謀することは別問題といわれればそうかもしれませんが、何とも納得できない結論です^^; 一方、最判S46.11.19は、債務者がある特定の債権者に対してした弁済が詐害行為に当たるとしました。でもこの判例は、詐害行為の相手方たる受益者は、自己の債権に基づき按分額の分配を要求することなどできない、という内容で有名ですね。取消債権者の事実上の優先弁済権と複合されているのでした。

弁済その他の債務消滅行為が非義務的行為である場合(期日前の弁済など)は、次の要件をいずれも満たすと詐害行為となります(424条の3第2項)。

  1. その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内にされたこと
  2. その行為が、債務者と受益者との通謀的害意をもってされたこと

 

偏頗行為のもう一つの類型は、既存の債務のための担保提供行為です。たとえば債務者が不動産を所有していて、他にめぼしい財産もないのに不動産に抵当権を設定して資金を借り入れたとか、債務者が所有する財産について、他にめぼしい財産がないのに、その財産を譲渡担保に入れて占有改定の方法で引き渡したとかいうようなことをいいます。これについては偏頗行為の2つ目といいましたけど、詐害行為性が認められる要件は弁済その他の債務消滅行為と同じです。つまり、原則として担保提供行為は詐害行為とはなりません。しかし、債務者が担保提供義務を負っているときに担保提供行為をしたときは、

  1. その行為が、債務者が支払不能であったときにされたこと
  2. その行為が、債務者と受益者との通謀的害意をもってされたこと

債務者に担保提供義務がないのに、非義務的行為として担保提供行為をしたときは

  1. その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内にされたこと
  2. その行為が、債務者と受益者との通謀的害意をもってされたこと

これらを満たす場合は詐害行為となります。

 

最後に、過大な代物弁済等です。最初の方に書いた例のように、受益者の受けた給付が、その行為によって消滅した債務より過大である場合に、債務者が債権者を害することを知っていたとき(424条)は、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について、詐害行為取消権を行使できます(424条の4)。つまり100万円の債務に対して1,000万円の代物弁済をしたという最初の例で言えば、これが詐害行為とされた場合、1,000万円のうち100万円以外の部分(900万円)について取り消すことができるわけです。それから、代物弁済等の「等」は、たとえば債務者が自己の財産を異様な安値で債権者に売却し、その代金債権とその債権者に対する債務とを相殺するような場合です。行為の結果として、債務者の責任財産が減少してしまうところは同じですもんね。ということで要件としては代物弁済等の過大性と詐害の意思ということになりますが、これらはもうケースバイケースで判断されるのでしょう。さらに、過大な代物弁済等では、債務者のした行為の全部を取り消すのではなく、過大な部分だけを取り消す(一部取消し)というのも特徴的ですね。

もっとも、代物弁済が偏頗行為の一種である弁済その他の債務消滅行為として行われた場合(424条の3の要件を満たす場合)は、その代物弁済が相当価格であったとしても、代物弁済全体を取り消すことができます。代物弁済も債務を消滅させる行為だから、普通の弁済と同様に424条の3が当てはまることもあり得るでしょう。

 

さて、今まで見てきた要件⑤詐害の意思に関して、取消しが認められないタイプの行為もあります。それは、対抗要件を具備する行為です。たとえば、債務者が受益者に対して自己の不動産を1月に売却し、2月に債権者から資金を借り入れ、3月に不動産の移転登記をしたとしましょう。この場合の被保全債権は債権者の債務者に対する貸金債権ですが、これは2月に発生したものであって、不動産の売却(1月)は債権の発生原因よりも前にされているので、この売却を取り消すことはできません。では、債権の発生原因よりも後になされた対抗要件の具備(3月に行われた移転登記)を取り消して、対抗要件が備わっていない状態に戻せるでしょうか。答えはNO。最判S55.1.24は次のようなロジックで詐害行為取消の対象にならないと言っています。

  1. 物権を譲渡する行為とその対抗要件を具備する行為は別個のものである
  2. 詐害行為取消権の対象は、債務者の財産の減少を目的とする行為、つまり物権を譲渡する行為そのものである
  3. 対抗要件を具備する行為は、単に第三者に対抗できるようになったというだけで、その時点で権利移転行為がなされたり、権利移転の効果が生じるわけではない
  4. 物権の譲渡が詐害行為とならないのに、それについての対抗要件を具備する行為だけを取り出して詐害行為として取り消すことは相当とは言えない

債権譲渡についても、同様の判例があります(最判H10.6.12)。上記ロジックの3番目、対抗要件はあくまで対抗要件であって効力要件ではない、ということなのですが、たとえば登記が効力発生要件になっている場合(共同根抵当権の設定や担保権の順位変更など)はどうなるんでしょうね? これらは詐害行為とされるようなことにはあまり関連しないものかもしれませんが、仮に問題になった場合は、登記が効力要件なのであって債権の発生原因より後だから詐害行為になり得る、てことになったりするんでしょうかね^^;

 

今回も長くなってしまいましたが、もうちょっとだけ続きます。

いよいよ10月^^;

早いもので今年も10月、残り3ヶ月となりました。何かもう、いろんなことがあっという間に時間が過ぎていく気がします。今年は7月3日に司法書士試験があって、それからもう3ヶ月過ぎたのだなぁ…さらに3ヶ月過ぎると今年が終わるのだなぁ…と思うと、なんだか虚しい気持ちになってきます。もう秋なんだなぁ。物悲しいけど美味しいもの食べたいなー。秋から冬は食べ物が充実する季節ですし^^

 

…などと現実逃避している場合ではありませんね。そう、今月11日は、待ちに待った?司法書士試験の合格発表があるのですから。いやー、やっぱり緊張しますよねぇ。今の職場は周囲に司法書士試験の受験生も多いのですけど、合格発表が近づくにつれて、何となく微妙な緊張感が漂い始めている気がします。しかも、合格したかどうかを会社側でチェックしたいらしく、受験地と受験番号を報告するように言われました笑 まあ会社としては、合格者が司法書士事務所に就職するなどして早々に辞めてしまう可能性もあるのだから、何人合格したか、合格したのは誰かを把握しておきたい、と思うのは理解できます。でも、自分の知らないところで自分の合否を見られているのは…合格でも不合格でも微妙な気分ですよね^^; まあ会社に知らせず、誰にも言わなかったとしても、結局のところ合否は分かってしまうわけだから(辞めずに残っていればほとんど不合格ということ)、どうでもいいとも言えますが…。

それよりも、合否によって今後どうするかを考えておかないといけませんね。まず、不合格ならこのままこの会社にいるつもりです。受験生としては居心地のいいところですし。そして、受験勉強を本格的に再開しなければいけません。スタディングはどうしようかな? 過去問を繰り返すのには都合いいから更新するかもです。ただ、合格ゾーン過去問集をもっとやり込みたいですね。スタディングに入っていない問題も覚えていきたいのです。記述は合格ゾーンよりもスタディングの方が収録されている問題数が多いので、記述対策まで考えたらやっぱりスタディング更新するのがいいかなー。更新の場合は安くて済みますしね。

一方、合格していたら、早速司法書士事務所への就職活動を始めたいと思います。やっぱり、早く実務に出て早く仕事を覚えたいですから。即独は…開業資金がまったく用意できてないから、ちょっとあり得ないですよねー。仕事がどんな感じなのか全然知らないし、お客さんの当てもないですし、ほとんど確実に失敗しそう。でも近い将来独立したいので、それを踏まえて就職活動することになります。忙しくなりそうだなー。そして24日は口述試験ですね。ほとんど落ちることはないと聞きますが、それにしたって口頭で不動産登記法商業登記法の問題に答えるのは、紙に答えを書くのとは違う難しさがある気がします。緊張するー。また、合格すると新人向けの各種研修や、認定考査に向けた勉強も入ってきます。いろいろ考えると、当然ながら合格していたいですね^^

 

そうそう、合格発表当日は、受験生は会社が休みになります。だから東京法務局の掲示板に合格者の番号が張り出されるのを見に行くことだってできるのですよ。なんて粋な計らい笑 合格発表はネットで見ることもできるのですが、去年の感じでは発表の時刻(16時)からしばらくアクセスしにくい状態になるので、その場にいる方が合否を早く知ることができると思います。でもたかだか数分か、せいぜい10分くらい、早めに知りたいかなー? 家にいてネットで見れば充分な気がするのですが…。でも気分によっては見に行くかもです^^;

 

ということで、今月も頑張りましょう!

詐害行為取消権(2)

さて、詐害行為取消権は債務者の責任財産を回復するためにある、という話を前回しました。逸失した財産を取り戻せれば、あとはそこから取り立てればよい、というのが元々の考え方です。でも、今の詐害行為取消権はそれだけが目的なのではなく、現実の社会の複雑な事情まで取り込んだ制度になっているのでした。それは、破産法の否認権の制度と平仄を合わせた、みたいに言われていますね。といっても、司法書士試験の出題科目に破産法はなく、自分は勉強したことはありません。なので平仄を合わせたと言われても今一つピンとくるわけではないのですが、債権法のテキストでは関連する部分が一通り解説されているので、それを読んで理解した範囲でまとめておこうと思います。主に、前回見た詐害行為取消権の要件⑤その行為が債権者を害することを債務者が知っていたことに関連することですね。

 

ところで、「破産法と平仄を合わせた」というのは、平成29年民法改正のときによく言われていたようなのですけど、実はそれ以前から、判例の積み重ねによって破産法に似た処理をしてきていたのでした。それが、平成29年の債権法大改正の折に民法の中に採り入れられたというわけなのです。で、破産法に似た処理をしていたのはどういう場合かというと、①特定の債権者を利する行為(偏頗行為)と、②債務者にとっての有用性、です。

上にも書いたように、詐害行為取消権は元々、債権者が個別的に強制執行をするための準備段階として、責任財産保全するために作られた制度です。現実には、一人の債務者に何人もの債権者がいるのは普通でしょうし、それら債権者間の公平や平等というものも重要です(これが実現されないと、ちゃんとした経済システムが成り立ちませんよね)が、詐害行為取消権はあくまでも強制執行に備えるものであり、債権者間の公平や平等は執行段階で実現すべきもの、と考えられていたのでした。しかし、仮に複数の債権者がいる債務者が経済的破綻の危機に陥ったとき、ある特定の債権者だけを利する行為(その債権者だけに弁済した、など)をして債権者間の平等性が崩れ、それが回復されることもないまま強制執行の手続が進んだとすると、債権者の間の利益状況は大変不平等なものになるはずです。そして、そういう状態にしてしまう債務者の行為は他の債権者に対する詐害性がある、と言えます。そこで、破産の手続に入る前の段階から①特定の債権者を利する行為(偏頗行為)を取り消すことで、その後の強制執行での平等性を高めているのです。つまり、債権者の個別的な準備というより、たくさんの債権者がいることが前提の集団的な処理を組み込んだわけですね。この、集団的な処理の仕方が、破産法の否認権とパラレルに作られているそうです。

次に、債務者といえども本来は自己の財産を自由に管理し、処分することができるはずです。債務者が経済的に立ち直るために自己の財産を処分するような場合(それによって新規の事業資金を調達する、など)は現実によくあることでしょう。しかし、財産処分によって得た資金を隠匿してしまう可能性もありますね。特に、債務者が正当な価格で第三者に処分したことや、担保として提供したことが、どういうときに詐害性があると言えるのかは判断が分かれそうです。そこで、それら②債務者にとっての有用性が問題となった場合に、どういう要件が揃えば取り消せるかを規定したのでした。

その結果、詐害行為取消権は単に債務者に詐害意思があって受益者が悪意であれば行使できる、というような単純なものではなくなり、いろいろな事情を総合的に考慮して行使されることになりました。要するに、複雑になった、と言えるでしょうか。司法書士の試験としては、判例が蓄積されない限り問題としては出しにくそうだなぁ…とか思ったりします。破産法の否認権のような使い方をする場合の要件を細かいところまで訊かれても、多分実務ではあまり関係なさそうな気もしますし^^; とはいえ試験範囲内ではあるのだし、まだまだ時間的余裕もあるので、詐害行為取消権の要件⑤その行為が債権者を害すると債務者が知っていたこと(詐害の意思)を詳しく見てみましょう。

 

要件⑤は、債務者が行為をしたこと(詐害行為)と、それが債権者を害することを知っていたこと(詐害の意思)が合わさったものです。この要件の基本は、債務者が積極的に財産を減らしてしまうこと(財産減少行為)ですね。客観的には、自分の持っている不動産や金銭を譲渡したり、債権を譲渡したりといった行為をすることによって、行為の前の財産の額より、行為の後の財産の額の方が少なくなっていることが必要です。また、財産の額が減っていないように見えても、債務を免除したり時効の更新事由として債務を承認したりすることは結果的に債権者の共同担保である責任財産を減少させることになるので、詐害行為になり得ます。

客観的要件である財産の減少が詐害行為と評価されるのは、詐害の意思という主観的要件を満たしたときです。債務者が債権者を害することを知って行為をする、ということですね。この場合、債務者は必ずしも積極的に債権者を侵害する意図があったということまでは必要なく、債権者を害することを認識していれば充分なのだそうですよ。

…といったような感じで、財産減少行為は客観的要件+主観的要件が揃っているというのが基本形です。そして、偏頗行為の場合と債務者についての有用性が問題になる場合は、それぞれ要件が加重されるという仕組みになっているのです。ここでは条文の順番通りに、債務者にとっての有用性を先に見てみることにしましょう。

 

債務者にとっての有用性が問題になるのはどういうときかというと、財産を相当価格で処分する場合(相当価格処分行為)や、新たな借り入れとともに担保の設定をする場合(同時交換的行為)です。これらの行為は、原則として詐害行為には当たりません。なぜなら、これらの行為を詐害行為としてしまうと債務者の資金調達が極めて困難になり、債務者の経済的再建の方法を著しく限定することになるからです。また破産法では、これらの行為は否認権の対象とされていません。それなのに詐害行為取消権が認められるとすると、破産前は取消債権者がガンガン取り消せるのに、破産後は破産管財人が手を出せない、という逆転現象が起こってしまうのです。そこで、これらの行為は詐害行為にはならないとされたのでした。

しかしこれらの行為も、詐害行為となる余地がまったくないわけではありません。一定の要件を満たす行為は、詐害の意思があったと考えても不自然ではないと考えられているのです。その一定の要件(424条の2)とは、

  1. 債務者の行為が、財産の種類の変更により隠匿その他の債権者を害することとなる処分をする恐れを現に生じさせるものであること
  2. その行為の当時、債務者が隠匿等の処分の意思を有していたこと
  3. その行為の当時、受益者が債務者の隠匿等の処分の意思を知っていたこと

となっています。隠匿等の処分とは、対価を隠したり、他人に与えてしまったりすることです。そして、不動産を金銭に換価するようなときに、隠匿等の処分の恐れが生じます。たとえば「不動産を相当価格で売却して現金が手に入った」というのは、法律的には等価な交換と考えられていますよね。1,000万円相当の不動産を売却して1,000万円の現金が入ってきたら、財産は減っていないと評価されます。ところが現実はそんな単純ではありません。不動産は隠匿するのが難しい財産ですけど、現金は簡単に使ったり隠したりできるのです。つまり債権者から見ると、不動産よりも現金の方がなくなってしまう(隠匿される)リスクが高いと言えます。そういう隠匿等を生じやすい財産に変更されたとき、債務者の隠匿等処分意思と受益者の悪意があれば、債務者の行為は詐害行為となるというわけです。なお、同時交換的行為も、やっていることは相当価格処分行為と実質的に同じことなので、詐害行為となるかどうかは相当価格処分行為と同じように判断されます。

 

偏頗行為と過大な代物弁済等ついても一度に見てしまうつもりだったのですが、いろいろ書いてたら長くなってしまったので、次回へ続く^^;

詐害行為取消権(1)

債権者代位権と並んで、債務者の責任財産保全の役割を果たしてくれるのが「詐害行為取消権」です。最初にテキストでこの名前を見たとき、字面がカッコイイと思いました笑 いかにも不正な行為を取り消して、正しいことをしてくれそうですもんね。まあ何が正しくて何が正しくないのかとか考え始めると、司法書士の試験とはまるで関係のない話になってしまいそうですけど^^;

 

債務者が債権者を害することを知りながら責任財産を減少させる行為をしたときなどに、債権者が詐害行為取消権を行使すると、債務者のその行為を取り消して財産を取り戻すことができます(民法424条)。たとえば、BがAからお金を借りていたところ、事業がうまくいかなくてAへの返済ができなくなったとしましょう。Bは土地を持っていて、それ以外に目ぼしい財産がないとします。するとAは、その土地から回収しようとするはずですよね。ところがここでBが「このまま強制執行されるくらいなら、世話になったCに土地をあげちゃおう」と考えてCに話を持ちかけ、Cも「他の債権者には悪いが、せっかくだからもらっておこう」と言って土地の登記を移した…みたいなことが実際あるそうですよ。こうなるとAは土地に強制執行できず、かといってBには他に財産はないのだから、結局取りっぱぐれて泣き寝入りせざるを得ません。こんなことが許されたのでは誰かに融資しようという人は現れなくなり、ひいては社会経済が回っていかなくなってしまうでしょう。

そこでこういう場合、Aは詐害行為取消権を行使し、Bの責任財産を回復するために、BからCへの土地の譲渡を取り消すことができるのです。土地がBに戻ってきたら、そこに強制執行をかけて債権回収に当たるというわけですね。で、こういった債務者による責任財産を減少させる行為を取り消すというのが元々の詐害行為取消権の目的だったわけですが、平成29年改正民法では、一部の債権者だけを利する行為(偏頗行為)や、債務者の財産を相当価格で処分するような行為も詐害行為取消権の対象とされました。破産法の仕組みを採り入れたものです。これについては後ほど改めて見てみたいと思います。

 

次に、詐害行為取消権の要件を確認しておきましょう。この要件は、受益者(債務者が財産を処分したときの直接の相手方)と転得者(受益者から財産を受け取った人)では少し違いがあります。これは、転得者は債務者と直接取引したわけではなく、受益者と転得者とでは責任の度合いが違うから、という理由によるものです。しかし、基本的なところは共通しているので、まずは受益者から見てますね。次に挙げる要件をすべて満たしたとき、債権者は受益者に対して詐害行為取消権を行使できます。

  1. 債権が存在していること
  2. その債権が、詐害行為前の原因に基づいて発生したこと
  3. 債権者が自己の債権を保全する必要があること(債務者の無資力)
  4. 債務者の行為が財産権を目的としていること
  5. その行為が債権者を害することを債務者が知っていたこと(詐害の意思)
  6. その行為が債権者を害することを受益者が知っていたこと(受益者の悪意)

結構数が多くて複雑に見えますよね。でもまあ、上に挙げたような具体例をイメージすれば、何となくどういう制度なのか掴める感じもします。で、これらの要件のうち①から⑤は、取消債権者の側が主張立証しなければいけません。個人的に、一番アレだなと思うのは要件⑤の詐害意思ですかね。債務者に詐害意思があったことを主張立証していくわけですが、でもそれって難しそうですよね? 内心どう思ってたかなんて、本当のところは本人にしか分からないのですし、いくらでも誤魔化せそう。まあ、債権者の追及もそんな甘いものではないのでしょうけど…てことで要件⑤の話は、後で詳しく見てみることにしましょう。なお要件⑥は「受益者の悪意」という形で覚えていることが多いと思いますが、実際には受益者側から自らの善意を主張立証することになっています。

 

主張立証という言葉が出てくることからも予想が付く通り、詐害行為取消権を行使するには裁判を起こさなければいけません(424条1項・424条の5)。債権者代位権が裁判外で行使できるのとは大きく違います。そして、詐害行為取消訴訟の被告は受益者と転得者で、債務者は含まれません(424条の7第1項)。これは債権者代位権を裁判上行使するときの被告が第三債務者であって債務者ではない(民事訴訟法115条1号・2号参照)のと同じです。

こうした詐害行為取消訴訟のやり方が確立したのは、実は判例によるのです。しかも、明治44年3月24日大審院連合部判決という、かなり古い判例なのですよ。これ以前の判例(大判M38.2.10)では債務者も被告にすべしとされていたから、この判決によって判例を変更したということです。で、債務者を被告にしなくてよい理由としては、

  1. 詐害行為取消権の「取消し」は法律上普通の意味での取消しではなく、訴訟の相手方との関係において法律行為が無効になり、訴訟に関与していない人には何の影響もない
  2. 債権者が受益者(と転得者)を訴えて、それらの者との法律行為を取り消して財産を取り戻した以上は、債務者の責任財産が回復し、債権者が回収することができるから、債務者を被告とする必要がない

と言っています。訴訟に関与しない人には取消しの効果が及ばず(①)、債権者としては債務者に財産が戻ってくれば充分だ(②)、ということなのですね。②はまあ分かるとして、①から②へのつながりが少し分かりにくい気がしますが、これは取消しの効果が債権者と受益者との間だけに及ぶことにしても充分に目的を果たせるのに、債務者にまで及ぶとすると債務者の財産権を侵害する度合いが強すぎる、と考えられたのでしょうかね。原則として財産権は絶対的なものであって、債権者が債務者の財産権に介入する詐害行為取消権(と債権者代位権)は、あくまでも例外的に、非常手段として法が認めたものなのだ…というような考えがベースにあるでしょうし。だから取消しの効果は債務者にまでは及ばなくて、原告である債権者と被告である受益者・転得者との間だけに留まるけれども、それでも債務者のものだった財産を取り戻して債権回収できるよ、それで問題ないよね、ということなのだろうな〜と理解しています。ホントにこういう理解でいいのかな? いやぁ難しいですね^^;

しかし実際には、取り戻した財産は債務者のものということを前提に執行手続が進みます。でも、そうすると債務者に取消しの効果が及ばないという話と矛盾してしまいますね。この点が批判されていたところ、平成29年改正民法では、

民法425条  詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

とされたのでした。そして債務者は被告にはならないけれど(424条の7第1項)、認容判決の効力は及ぶから(425条)、債務者に対する手続保障として訴訟告知をすることになったのですね(424条の7第2項)。いろいろと整合を取ったって感じなのでしょうか。この425条を題材にした問題は、すでに司法書士試験で出題されています。

債権者が受益者に対して詐害行為取消権を行使し、詐害行為を取り消す旨の認容判決が確定した場合であっても、債務者は、受益者に対して、当該詐害行為が取り消されたことを前提とする請求をすることはできない。(平成30年 問16−エ)

答えは×。認容判決の効力は債務者に及ぶのだから、債務者は受益者に対して、詐害行為が取り消されたことを前提とする請求ができます。それにしても、多肢択一問題の選択肢の一つになると、ずいぶんあっけない感じがしますね笑

 

詳しく見れば見るほど複雑で理解力が追いついていませんが、次回へ続く^^;