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確認の利益(2)

司法書士試験の出題傾向からして、そんなに深入りする必要があるとは思えないところなのですが、こんなにのんびりこの話をしていていいんでしょうか…まあ何にしてもサクサクと進めていきましょう^^;

 

●対象選択の適切性

確認の訴えの対象は、原則として権利や法律関係があるかどうか、という点です。Aが所有している土地について、Bがその土地は自分のものだからよこせ!と言ってきたら、Aとしては自らの所有権の確認を求める訴えを起こす意味があるわけですね。一方、純然たる事実の確認を求める訴えは確認の利益が認められません。たとえば「富士山の高さが3,776mであることの確認を求める」との訴えは、それを裁判所が確認したからといって何らかの紛争解決に役立つわけではなさそうですよね。だから確認の利益は認められないのです。「私が人間であることの確認を求める」という訴えは、シチュエーションによってはまるで憲法に出てくる人権問題のようですね。でも確認の訴えとしては却下されてしまうでしょう。ただし例外的に、証書真否の確認を求める訴えは、事実の確認ですが認められています。証書とは遺言書や契約書などのことで、それらが真正に成立したものであるとの確認を求めるわけですね。そして、その真否如何によって確認を求める原告の法律上の地位を左右し、その後の紛争解決について重大な影響を及ぼします。だから、証書の真否は事実の確認であっても確認の利益を認める意味があるわけです。また「国籍が日本であることの確認を求める」という訴えは一見事実の確認のようですが、国籍が日本であることを起点にしていろいろな法律関係が出来上がっていくはずです。だから、国籍の確認を求める訴えにも確認の利益があるとされています。

 

次に、過去の法律関係についての確認も基本的に認められないとされています。つまり確認というのは現在の法律関係についてすべき、ということですね。たとえばA→B→Cと土地が転売されて、AがAB間の売買の無効を主張してCに土地の返還を求めた場合、CとしてはBから土地を買い受けたときにBが所有権を有していたこと(過去の法律関係)の確認を求め、それが認容されたとしても、だからといって現在Cが所有者だと言えるわけではありません。それよりも、Cはストレートに自らの所有権(現在の法律関係)の確認を求めた方が良い、というわけなのです。

といっても現在の有様はどんなことでも過去と無関係なはずはなく、それは法律関係についても言えることですよね。前回見た最判S61.3.13のように、ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えは、ある人が死亡した時点での法律関係を確認するのだから、過去の法律関係とも言えますね。しかし、ある財産が遺産に属するかどうかが確定することにより、その後の遺産分割などの手続きに役立つから認められているのでした。このように、過去の法律関係が現在の法律関係の基礎となっていて、それを確認し確定することで現在の紛争を直接的抜本的に解決できるのであれば、過去の法律関係であっても確認の利益が認められるとされています。

ただし、それに関連した相続財産絡みの事例でこんな問題が出題されています。

亡Aの相続人は、X及びYのみである。この場合、XがYに対して提起した、亡Aの相続に関し特定の財産がYの特別受益財産であることの確認を求める訴えは、却下される。(平成19年 問1-オ)

最判H7.3.7によれば、民法903条1項は被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に特別受益財産の価額を加えたものを具体的相続分を算定する上での相続財産とみなすと言っているのであって、特別受益財産を持ち戻すべき義務は生じないし、特別受益財産が相続財産に含まれるのでもない、だからある財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、現在の法律関係の確認を求めるものとはいえない、とされています。さらに、特別受益財産は具体的な相続分や遺留分を定めるための一要素に過ぎず、より直接的抜本的な紛争の解決ができる他の方法(遺留分侵害額請求や遺産分割審判など)があるのだから、確認の利益を欠くとも言っています。過去の法律関係であっても現在の紛争を直接的抜本的に解決できるのなら確認するけど、特別受益財産かどうかはそうじゃないでしょ、ということです。だから答えは○ですね。

具体的相続分についても判例があります。

共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、訴えの利益を欠く。(平成30年 問2-イ)

最判H12.2.24は、具体的相続分は遺産分割手続における分配の前提となるべきものであって、それ自体を実体法上権利関係ということはできない、また遺産分割審判や遺留分侵害額請求訴訟を離れて具体的相続分だけを判決によって確認しても紛争の直接的抜本的な解決に必要とはいえない、したがって確認の利益を欠く、と言っています。具体的相続分だけを別個に確認してもそれで遺産分割などの中身が決まるわけではないし、遺産分割審判などでそれらの前提問題として判断すれば充分でしょ、ということです。だから答えは○ですね。

 

もう一つ、相手方の権利の不存在といった消極的な確認ではなく、自分の権利の存在といった積極的な確認を求めるべきだ、とも言われているそうです。相手方に所有権がないことの確認を求める、というよりも、自己の所有権の確認を求める、と訴えた方が、より直接的で適切である場合が多いからでしょうね。ただし、前回見た債務の不存在の確認を求める訴えなどは、積極的な訴えなんてあり得ませんので、当然ですが消極的な確認を求めるということになります。何々する義務なんてないはずだ!という争いは割とありそうですし、消極的な確認の訴えって意外と多そうな気がしますね。

 

なんか話が終わらなかったので次回に続く^^;