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確認の利益(3)

今回は残りの要件2つを見ていきますよ〜。

 

●即時確定の利益

要するに確認判決をする必要性が現に認められるか、ということです。これが認められるかどうかは、原告が保護を求める法的地位が充分に具体化されているか、被告の態度や行為の態様が原告の地位に対して危険や不安を生じさせていると言えるか、の2点から判断されるそうです。原告が将来の自己の法的地位に不安を感じて確認の訴えを提起したり、まだ紛争が現実に発生していないのに先制攻撃的に訴えを起こしたり、といった場合に即時確定の必要性が特に問題となります。将来の不安については、実際に紛争が発生したときに裁判でも何でもすれば原告の保護としては充分だし、事前に確認判決をしたのにその後実際の話が予想とは違う方向に進んでしまう可能性があるのですね。先制攻撃的な確認の訴えは、たとえば交通事故の加害者が、被害者の損害賠償請求訴訟の準備が整わないうちに債務不存在確認の訴えを起こすようなものです。そんな訴えは確認の利益が否定されて然るべきですが、一方でそういう発想でする確認の訴えには紛争を予防する機能があるとの考え方もあるようです。なかなか難しいですね^^;

 

まず、上記したように原告が保護を求める法的地位は充分に具体化・現実化している必要があります。それが将来の地位であって、現状では事実上の期待しか存在しないという場合は、確認の利益は認められません。たとえば、遺言者の生存中に推定相続人が遺言の無効確認を求める訴えには確認の利益は認められないとされています(最判H11.6.11)。被相続人生存中の推定相続人の地位は、将来被相続人の権利義務を包括的に承継するという事実上の期待に過ぎず、また生存中の遺言者はいつでも遺言の内容を撤回できるからです(最判S31.10.4)。

これに対して、将来において具体化する法的地位であっても、それが条件付権利のような形で現在の法律関係として保護するに値すると評価できるときは、確認の利益が認められます。こんな感じで出題されてます。

賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対して敷金返還請求権が存在することの確認を求める訴えは、賃貸人が敷金交付の事実を争っているときであっても、条件付請求権の確認を求めるものであるから、確認の利益がない。(平成23年 問3-ウ)

建物賃貸借における敷金返還請求権とは、賃貸借終了後に建物の明渡しがされた時に、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除してなお残額があることを条件に、その残額につき発生するものです(最判S48.2.2)。賃貸借契約終了前であっても、このような条件付権利として存在するものと言うことができます。すると、上の問題での確認の対象はそういう条件付権利と解されるので、現在の法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないとされました(最判H11.1.21)。さらに本問では、賃貸人は賃借人の主張する敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないと主張していますから、敷金返還請求権のような条件付権利の存否を確定すれば、賃貸人の法律上の地位に現に生じている不安・危険が除去されます。そのため、この訴えには即時確定の利益があるともされました。なので答えは×です。もっとも、原告の法的地位が将来のものなのか現在の条件付権利なのかの判断はケースバイケースで、結局のところ原告を保護する必要がある、原告が保護に値すると考えられる場合に現在の条件付権利とされるようです。もう完全に弁護士さんにお任せの領域ですね^^;

 

さらに、原告には保護に値する法的地位があるとしても、それに対して危険や不安が何もないのなら、あえて確認判決をする必要はありません。なので、確認の利益が認められるためには、確認判決によって除去されるべき危険や不安が生じていなければいけないのです。これは、たとえばこんな感じでしょうかね。

戸籍上離縁の記載がある養子縁組の当事者の一方が提起した離縁無効確認の訴えは、被告において当該離縁が無効であることを争っていないときであっても、確認の利益がある。(平成23年 問3-イ)

こういう場合は確認の利益が認められます。なので答えは○です。なぜかというと、原告は離縁無効であることを確定することによって、戸籍の記載を訂正するという利益があるからです(最判S62.7.17)。つまり、誤った戸籍の存在は原告の地位に対する危険・不安であり、それを除去するためには確認判決が必要ということですね。

 

●被告選択の適切性

誰を被告として訴えるべきかという話で、当事者適格の問題と言えます。まず、原告の現在の法律関係に危険や不安が存在し、確認対象の選択や即時確定の利益から考えて原告の危険や不安を除去するためには確認判決が有効と言えるときに確認の利益が認められるのですから、原告適格はすんなりと認められるでしょう。そしてそういう場合は、即時確定の利益を基礎づける被告の行動があるということですから、被告適格も認められます。その結果、確認の利益が認められる以上は、原告被告間の法律関係が主張される場合でなくても当事者適格が認められます。たとえばAとBが互いにCへの債権を有するとして争っている場合に、AがBを被告として自らのCへの債権が存在することの確認を求める、というようなことです。この点、給付の訴えの場合は、原告が誰と誰の間の給付請求権を主張するかよって当事者適格が決まるというのと違うところですね。

 

というわけで、確認の利益が認められるための4つの要件を見てきました。でも結局、よく分からないままです笑 たとえば法定地上権の成立要件とか債権者代位権を行使できる要件とかいうものよりも、ずっと微妙な判断が必要そうに見えますよね。いや、法定地上権だって債権者代位権だって微妙な判断が必要なケースはいくらでもあるでしょうけど、自分のような初学者レベルの人にもスッキリわかる説明が可能かという意味では、確認の利益の話は相当に難しいと思います^^; まあ、取りあえず司法書士試験で出題されるものをクリアするには、やっぱりそんなに深入りすべきではないのでしょうね。タラタラと3回もやっててこんなことを言うのも何なんですが笑