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市民後見人という制度

社会の高齢化が進む中、認知症になってしまった人を法律的に保護するために「成年後見制度」がありますよね。法定後見なら成年後見人が、任意後見なら任意後見人が財産管理や身上保護を行う制度ですが、さらに法定後見には「市民後見人」という人もいるのをご存知ですか?

 

youtu.be

実は自分も加陽麻里布先生の動画を見て初めて知ったのです^^; 制度の概要は動画を見ていただければ分かると思いますが、一応文章で書かれたものでまとまった内容のサイトにリンクを貼っておきますね。

 

kouken-pj.org

 

成年後見制度(のうち法定後見)は司法書士試験の民法で出題されるところですので、受験生なら大まかな内容はご存知のことと思います。しかし後見の説明で「成年後見人には親族のほか、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任されることが多いです」という話はありましたが、市民後見というものがあるってことはまったく知りませんでした。

それはともかく、市民後見人が家庭裁判所によって選任されて、被後見人の財産管理と身上保護を行い、定期的に裁判所に報告をするというのは、親族や専門職の後見人と同じです。しかし親族と違うのは、市民後見人は被後見人から見たらまったくの赤の他人であるということ。市民後見人はボランティア活動のような感じで後見事務に携わるってことでしょうかね。また専門職との違いは、やはり法律の知識など専門性の差ですが、専門職はビジネスライクで身上保護が充分でない場合があるが、市民後見人は親身になって世話してくれる…みたいなイメージもあるようですね。市民後見人になるためには、基本的には市町村ごとに設立されている社会福祉協議会が行う研修を受けて候補者として登録される必要があります。裁判所からすると、登録されている人の中から最適な人を選ぶってことです。そして市民後見人が担当するのは、財産管理というよりは身上保護が中心で、紛争性がなくて高い専門性を要求されない案件、となります。実際、財産等に関して法律的に何かをするには専門職でなければなりませんし、紛争を解決するとなったら弁護士でなければできませんからね。

 

ところで、市民後見人が凄いなと思うのは、基本的に無報酬とされていること。自治体によっては報酬を請求できるとしているところもあるそうですが、専門職後見人よりは低額である傾向にあるようです。しかしですよ、市民後見人が担当するのは身上保護が中心の案件といっても、被後見人のために役所や銀行に行ったり、医療機関などに付き添ったり、そこでの支払いをしたり、裁判所に提出する報告書を作成したり…といった事務はどうしても必要で、それらをするには相当な手間と時間を要します。しかも1日2日のことならともかく、何年も後見人としての仕事をしなければいけないかもしれないのですよ。それなのに無報酬が基本というのは、ちょっと虫が良すぎるように感じます。何というか、「子供は親の面倒を見るのが当たり前」という時代の考えのまま、子供を近所の人に置き換えただけのように見えますね。または「雪下ろし体験!」とかいって雪下ろしのバイト代を払うどころか参加者から参加費を徴収するような感じかな笑

個人的には、報酬もないのに財産管理などの責任は負わされるの?という疑問を感じます。さほど専門性を求められず身上保護が中心の案件とは、それほど財産があるわけではなくて財産管理はあまり重要でない案件ということなのでしょう。とはいえ、たとえば被後見人が借家に住んでいて、市民後見人を選任した時点では予想できなかった事情で引っ越さなければならなくなった…とかいう状況になったら、市民後見人といえども後見の仕事にフルコミットすることになるんでしょうかね(繰り返しますが無報酬です)。または専門職に引き継ぐってことになるのかもしれませんが…それなら最初から専門職後見人で良くない?とも思います。

 

また、被相続人の子供でもないし介護のプロでもない市民後見人がどこまで関わるのかも分かりにくいですね。ずっと付きっきりになっているのは当然不可能ですし。病院に入院するとか老人ホームに入所する(あまりないのかもしれませんけど)とかいう場合は、市民後見人の通いやすい施設で、みたいなことも可能なんでしょうかね。市民後見人が付くということは親族で面倒を見てくれる人がいないってことだから、親族と意見が合わなくて話が進まないなんて事態は起こりにくいのかもしれませんが…。

 

それにしても、成年後見を始めとする法的な保護の制度はどれも一長一短があって、なかなか最適なものが選びにくいし利用しにくいという問題を抱えているのですね。法定後見は後見人に取消権があるなど強力な財産保護が可能な反面、自由度はほぼゼロ。任意後見や財産管理委任契約は本人の意思が反映されやすく内容の自由度も高いのですが、財産保護という意味では弱い部分があったりします。市民後見人がそのあたりのギャップを埋める存在になってくれると社会的意義が大きいのは間違いないのですが…それなら無報酬はないんじゃない?と思いますよねぇ^^;