目指せ!47歳からの司法書士受験!

法律初学者のおっちゃんが合格するまでやりますよー

民法177条の第三者(1)

民法177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

というわけで、みんな大好き背信的悪意者の時間ですよ~^^

不動産に関する物権変動は、司法書士試験の中でも頻出論点ですよね。特に177条は、第三者に対抗できるかどうかが正面からズバリと聞かれることもあるし、他の論点の中に潜んでいて急に姿を現すこともあるし、不動産の権利変動があればどこでも意識しなければならない条文なのです。もっとも試験問題としては、背信的悪意者、取消しと解除、相続、取得時効なんかが多いように思います。それぞれ複雑な問題があるのですよね。そこで、個人的に気になる事柄をまとめておきたいと思います。

 

最初に挙げた民法177条がどういう場面で問題になるかといえば、不動産(面倒なので以下では単に土地といいます)が二重に譲渡されたというのが典型的ですね。つまり、Aが所有している土地をBに売り、その後同じ土地をさらにCにも売った、という状況です。この場合、Bから見たC、Cから見たBは互いに177条の「第三者」に当たります。この「第三者」は、「当事者もしくはその包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当の利益を有する者」(大連判M41.12.15)という意味でしたね。登記の欠缺というのは、つまり登記の不存在、登記をしてないということです。正当の利益は、自分の権利を主張できるということですよね。たとえばBは、Cは登記をしていないからCに所有権があるとは認められないと主張できれば、自分が所有権を取得できる可能性が出てきます。だからBはCから見て、登記の欠缺を主張する正当の利益を有しており、177条の第三者に当たります。この意味の第三者に対しては、登記がなければ対抗できません。BもCも登記がなければ互いに自己の所有権を主張できないのです。で、実際どちらが優先するのかというと、それは登記の先後によって決まります。先に登記をした方が勝つ、ということですね。

 

●二重譲渡

しかし、前にも同じ疑問を書いた気がしますが、上記のような二重譲渡の取り扱いってよくよく考えると変ですよね。AからBに所有権が移転したら、Aは無権利者になります。すると、その後にCがAから土地を買ったと言っても、それは無権利者との取引であって何らかの権利が移転するわけではなく、結局Cも無権利となるはずです。仮にCが先に登記を得たとしても、それは真実の権利関係とは合致していないのだから、Bは登記の抹消を要求できなければいけません。それなのに、なぜBとCの対抗関係という話になるのでしょうか。

ポイントになるのは、177条の一つ前に置かれている176条です。

民法176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

というわけで、日本の民法は意思主義を採用しているのですね。AとBが土地を売買したとすると、その意思表示だけでAからBへ所有権が移転します。これはフランス的なやり方で、ドイツでは意思表示だけでなく登記がなければ物権変動が生じないことになっているそうですよ(形式主義)。で、日本では意思表示だけで物権変動が生ずる(176条)けど、それでは第三者を害する恐れがあるから一定の制限を加える(177条)、という仕組みになっていることが分かります。

当事者の合意だけで所有権が移転するのは、私的自治の原則にも合っている感じがしますし、登記のための時間や費用などの負担がないといったメリットがあります。その一方で、AがBに土地を売った後、Cとも売買をしたとすると、Cから見てAは本当に土地の権利を持っているのか分からない、というデメリットもあるのです。つまり意思主義では、利便性を高める代わりに取引の安全をちょっとだけ犠牲にしたとも言えそうですね。そこで177条によって形式的に安全を確保できるようにしたのですが…二重譲渡の関係をどう考えるかについては、いろいろな学説があるのです。それらを簡単に見ておきましょう。

①不確定物権変動説

177条の規定により、物権変動は登記してはじめて効力が完全なものになり、登記がなければ不完全な効力しかない、という考え方です。AB間の譲渡は登記がなければ不完全であり、Aは完全な無権利者というわけではないから、後のCへの譲渡も可能になる、のだそうです。一番よく聞く説明ではないでしょうか。しかしこの説に対しては、Bに譲渡した後のAの権利が何なのか明らかではないとの批判があります。通常の所有権なら一物一権主義に反するし、そうでないなら物権法定主義に反します。また、登記がなければ完全な効力がないとすると意思主義にも反します。

②第三者主張説

登記がなくても物権変動の効力は生ずるが、第三者が一定の事実(登記の不存在、自分が土地を買ったこと、など)を主張すると、その第三者との関係では効力がなかったことになり、その結果第三者の物権取得が可能になる、という考え方です。AがBとCに二重譲渡したら、Cが一定の事実を主張するまではAB間の物権変動は有効でAC間の物権変動は無効ということですかね。でもこれだと、CがAB間の取引の事実を知らない場合は永遠に所有権を獲得できないでしょうね^^;

公信力

素直に考えれば、AがBに土地を譲渡したら、Bが所有者になり、Aは無権利者になります。そしてCは無権利者から土地を買ったのだから無権利者です。しかし、これでCがまったく保護されないとすると取引の安全が著しく害されます。そこで、CがAの登記を真実に合致すると無過失で信じていた場合は、登記への信頼の保護のために、177条によりCが所有権を取得する、と考えます。BはAから譲渡されたらすぐ登記できたはずなのにしなかった、つまり真の権利者に登記懈怠の非難可能性があるから、無過失で登記を信じた第三者Cを保護するというわけです。要するに登記に公信力を認めるという意味ですけど、日本の不動産登記制度に真正面から矛盾してしまいます。

④規範構造説

土地が二重譲渡されると出現する両立できない権利関係については、権利の帰属や状態という物権変動の結果ではなく、そもそもその物権変動を引き起こした原因の方に着目するという考え方です。つまり原因の優劣によって優先順位を決めるのですね。たとえば176条によれば意思表示は物権変動の原因であり、AB間で売買があるとAは無権利者となるから、その後に売買したCも無権利で、CはBに劣後する、ということになります。でもこれだけでは取引の安全を害するので、177条により原因の競合が生じた場合は登記の先後で優劣を決めるというルールを定めたのです。でも改めて177条を見直すと「物権の得喪及び変更」と言っており、結果に着目しているようですよね^^;

⑤登記法定証拠説

物権変動の優先順位は時間的な先後で決まるが、177条は裁判所がその前後関係を認定するときに登記が証拠になると定めた、という考え方です。BもCも登記を得てないとすると、先に譲渡されたBがCに優先することになりますが、二重譲渡ではCはBから見て177条の第三者に当たるとの判例に反してしまいます。

⑥法定制度説

177条が存在するということは、民法がCの権利取得を認めていることは明らか、以上終わり!という考え方です。思考の放棄と批判されているそうです笑

どの学説も一長一短というか、理屈の上であちらを立てればこちらが立たず、ということになっています。スッキリと説明することは不可能なんでしょうね。道理で自分のような素人がいくら考えても混乱するばかりなわけだ^^;

それはともかく、実社会では上の方に書いたように処理されて、試験問題もそれを前提とした内容になっています。以前は学説問題も時折あったそうですが最近は少なく、たとえば「登記の公信力を認めるA説と認めないB説で、A説に当てはまるものは次のうちどれか」みたいな問題は多分出ないのだろうと思います。このあたりの話って考えれば考えるほど面白いのですけど、まあ試験が終わってからゆっくりやればいいかなって感じですよね^^; あ、実社会では二重譲渡は横領に当たります。民法上二重譲渡が認められるのは、自由競争社会なのだからこの程度のことはあり得るとの考え方が背景にあるからですが、犯罪になってしまうのでは割に合わない感じですね。でもそのへんはまた別の機会に考えてみましょう。

 

予想以上に長くなって背信的悪意者に辿り着かなかった^^; ということで次回へ続く。

4月になりました!

ついに4月になってしまいました! 今年ももう4分の1が終わってるんですねぇ。時間が流れるのは早い…。そして、試験の本番まで残り3ヶ月となりました。今年の正月あたりは、この調子で勉強すれば多肢択一はガンガンいける!試験の日が楽しみだな〜くらいに気楽に考えていたのですが、今になってみると積み残していることが多過ぎて間に合うのか不安になってきます。困ったものですね…て去年も同じ時期に同じことを書いたような気もしますが^^;

 

これから新しいテキストやら問題集やらに手を出すのは難しいので、基本的には今までやってきたスタディングの過去問集やLECの過去問集を繰り返しつつ、模試を受けて弱点を潰していくことにになりますね。とはいえこのタイミングになると気になるのが、オートマの記述式のテキスト。前回の今頃は読んでいるだけでも面白いから読んでましたが、今回はスタディングの過去問を繰り返し解いて模範解答を覚えるのに重点を置いており、オートマはまだ全然読み返していません。少しはやってみようかなー。リアリスティックの記述式のテキストは読んだことがないのですけど、評判はかなり良いようですね。読んでみたいな^^

というか、スタディングの過去問は不動産登記法商業登記法それぞれ平成20年から令和3年までの14回分が揃っていて、1回分ごとに講義が行われるのと、それとは別に模範解答と解説を見ることができます。講義では、まずどういう順番で問題や資料を読んでいくか、どこから手を付けるのかという大枠の説明があって、その後具体的に問題ごとに注意すべき点の解説をしてくれます。ここにはこんな引っかけが潜んでますね、みたいなことです。もっとも、講義の中では具体的な答案の書き方についての細かい説明はないので(たとえば登記原因日付は何年何月何日なのか、印鑑証明書は何通必要なのか、など)、それは各自解説を読んで理解する、ということになります。それから講義の動画が新しく作り直されていて、全体的に実際に問題を解く手順を意識した内容になっていると思います。

 

そうそう、スタディングのスマート問題集やセレクト過去問集の解説は、前回と比べると今回分は説明が追加されているところがありますね。特に語句の説明が入っているところがあるのはちょっと新鮮でした。たとえば「建前」という言葉は、建物を建築している途中で、まだ不動産には至らない段階の動産のことをいうのですけど、これについての質問が多かったのかその旨の説明が新しく入っています。また刑法の「情を知って」という言い回しも「事情を知って」の誤植ではありません、みたいな説明が追加されていました。「情を知って」は刑法の条文に出てくる表現ですが、少なくとも司法書士試験の受験生で刑法の条文にまで当たる人はそんなに多くないでしょうし、見慣れない言い回しが出てくると法律特有の意味があったりするんだろうか、と思ってしまいますね。スタディングの講義の中ではこういう言葉や表現の解説はほとんどないので、過去問の問題文にいきなり出てくると面食らう人がいるのかもしれません。そういう意味で、スタディングはある程度法律の勉強をしたことのある人向けだなぁと思いますけど、今回はもう少し初学者にも分かりやすく親切にしてくれたってことなのでしょうか。できれば前回からそうしてくれると有り難かったのになと思いつつも、説明が分かりやすくなるのはいいことですね^^

 

試験で使う鉛筆やボールペンは、前回と同じでいいかな〜。まあ筆記用具はともかく、ボールペンで書くのが面倒な漢字を素早く書く練習をしといた方がいいですかね。前回の本試験も、この間の模試も、どのくらい丁寧に書くかによって答案を書き上げる時間に差が付くので、ちょっと悩むところです(逆に言えば、どのくらいまで適当でも大丈夫なのかが知りたいって感じですね)。特に商業登記法は書く量自体が多いですし。取りあえず人の名前はきちんと判別できるように書かないと減点幅が大きいと聞いたことがあるのですが、実際に仕事で書類を作るときのことを考えたらそれはそうかもしれないと思います。でも最近は問題に出てくる人名って「甲山太郎」みたいなのではなく単に「A」だったりするので、そこまで気にしなくても大丈夫な気もしますね。それよりもむしろ、画数の多い「議事録」「取締役」「監査役」「譲渡」みたいなのを素早く楽に、しかもきちんと読める字形で書ける方が、全体的な時間短縮になるかもと思ったりします笑 それに比べると不動産登記法の方は申請人の住所とか代表者の名前とか書かなくていいし、添付情報も一覧表から選ぶ形式なので、答案を書き上げる作業自体は随分楽です。でも平成20年度の問題から順番に解いていくと、最近になるにしたがって如実に難しくなってきており、どんよりした気分になりますけどね^^;

 

ということで、追い込みの時期なので気分盛り上げていきましょう! でも、何かこう焦って落ち着かない気持ちから抜け出せないときは、逆に思い切って勉強はやめて寝るってのも気分転換としてはイイかもしれないですね。それはそれで悩みどころになりそうですけど^^;

確認の利益(3)

今回は残りの要件2つを見ていきますよ〜。

 

●即時確定の利益

要するに確認判決をする必要性が現に認められるか、ということです。これが認められるかどうかは、原告が保護を求める法的地位が充分に具体化されているか、被告の態度や行為の態様が原告の地位に対して危険や不安を生じさせていると言えるか、の2点から判断されるそうです。原告が将来の自己の法的地位に不安を感じて確認の訴えを提起したり、まだ紛争が現実に発生していないのに先制攻撃的に訴えを起こしたり、といった場合に即時確定の必要性が特に問題となります。将来の不安については、実際に紛争が発生したときに裁判でも何でもすれば原告の保護としては充分だし、事前に確認判決をしたのにその後実際の話が予想とは違う方向に進んでしまう可能性があるのですね。先制攻撃的な確認の訴えは、たとえば交通事故の加害者が、被害者の損害賠償請求訴訟の準備が整わないうちに債務不存在確認の訴えを起こすようなものです。そんな訴えは確認の利益が否定されて然るべきですが、一方でそういう発想でする確認の訴えには紛争を予防する機能があるとの考え方もあるようです。なかなか難しいですね^^;

 

まず、上記したように原告が保護を求める法的地位は充分に具体化・現実化している必要があります。それが将来の地位であって、現状では事実上の期待しか存在しないという場合は、確認の利益は認められません。たとえば、遺言者の生存中に推定相続人が遺言の無効確認を求める訴えには確認の利益は認められないとされています(最判H11.6.11)。被相続人生存中の推定相続人の地位は、将来被相続人の権利義務を包括的に承継するという事実上の期待に過ぎず、また生存中の遺言者はいつでも遺言の内容を撤回できるからです(最判S31.10.4)。

これに対して、将来において具体化する法的地位であっても、それが条件付権利のような形で現在の法律関係として保護するに値すると評価できるときは、確認の利益が認められます。こんな感じで出題されてます。

賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対して敷金返還請求権が存在することの確認を求める訴えは、賃貸人が敷金交付の事実を争っているときであっても、条件付請求権の確認を求めるものであるから、確認の利益がない。(平成23年 問3-ウ)

建物賃貸借における敷金返還請求権とは、賃貸借終了後に建物の明渡しがされた時に、それまでに生じた敷金の被担保債権一切を控除してなお残額があることを条件に、その残額につき発生するものです(最判S48.2.2)。賃貸借契約終了前であっても、このような条件付権利として存在するものと言うことができます。すると、上の問題での確認の対象はそういう条件付権利と解されるので、現在の法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないとされました(最判H11.1.21)。さらに本問では、賃貸人は賃借人の主張する敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないと主張していますから、敷金返還請求権のような条件付権利の存否を確定すれば、賃貸人の法律上の地位に現に生じている不安・危険が除去されます。そのため、この訴えには即時確定の利益があるともされました。なので答えは×です。もっとも、原告の法的地位が将来のものなのか現在の条件付権利なのかの判断はケースバイケースで、結局のところ原告を保護する必要がある、原告が保護に値すると考えられる場合に現在の条件付権利とされるようです。もう完全に弁護士さんにお任せの領域ですね^^;

 

さらに、原告には保護に値する法的地位があるとしても、それに対して危険や不安が何もないのなら、あえて確認判決をする必要はありません。なので、確認の利益が認められるためには、確認判決によって除去されるべき危険や不安が生じていなければいけないのです。これは、たとえばこんな感じでしょうかね。

戸籍上離縁の記載がある養子縁組の当事者の一方が提起した離縁無効確認の訴えは、被告において当該離縁が無効であることを争っていないときであっても、確認の利益がある。(平成23年 問3-イ)

こういう場合は確認の利益が認められます。なので答えは○です。なぜかというと、原告は離縁無効であることを確定することによって、戸籍の記載を訂正するという利益があるからです(最判S62.7.17)。つまり、誤った戸籍の存在は原告の地位に対する危険・不安であり、それを除去するためには確認判決が必要ということですね。

 

●被告選択の適切性

誰を被告として訴えるべきかという話で、当事者適格の問題と言えます。まず、原告の現在の法律関係に危険や不安が存在し、確認対象の選択や即時確定の利益から考えて原告の危険や不安を除去するためには確認判決が有効と言えるときに確認の利益が認められるのですから、原告適格はすんなりと認められるでしょう。そしてそういう場合は、即時確定の利益を基礎づける被告の行動があるということですから、被告適格も認められます。その結果、確認の利益が認められる以上は、原告被告間の法律関係が主張される場合でなくても当事者適格が認められます。たとえばAとBが互いにCへの債権を有するとして争っている場合に、AがBを被告として自らのCへの債権が存在することの確認を求める、というようなことです。この点、給付の訴えの場合は、原告が誰と誰の間の給付請求権を主張するかよって当事者適格が決まるというのと違うところですね。

 

というわけで、確認の利益が認められるための4つの要件を見てきました。でも結局、よく分からないままです笑 たとえば法定地上権の成立要件とか債権者代位権を行使できる要件とかいうものよりも、ずっと微妙な判断が必要そうに見えますよね。いや、法定地上権だって債権者代位権だって微妙な判断が必要なケースはいくらでもあるでしょうけど、自分のような初学者レベルの人にもスッキリわかる説明が可能かという意味では、確認の利益の話は相当に難しいと思います^^; まあ、取りあえず司法書士試験で出題されるものをクリアするには、やっぱりそんなに深入りすべきではないのでしょうね。タラタラと3回もやっててこんなことを言うのも何なんですが笑

確認の利益(2)

司法書士試験の出題傾向からして、そんなに深入りする必要があるとは思えないところなのですが、こんなにのんびりこの話をしていていいんでしょうか…まあ何にしてもサクサクと進めていきましょう^^;

 

●対象選択の適切性

確認の訴えの対象は、原則として権利や法律関係があるかどうか、という点です。Aが所有している土地について、Bがその土地は自分のものだからよこせ!と言ってきたら、Aとしては自らの所有権の確認を求める訴えを起こす意味があるわけですね。一方、純然たる事実の確認を求める訴えは確認の利益が認められません。たとえば「富士山の高さが3,776mであることの確認を求める」との訴えは、それを裁判所が確認したからといって何らかの紛争解決に役立つわけではなさそうですよね。だから確認の利益は認められないのです。「私が人間であることの確認を求める」という訴えは、シチュエーションによってはまるで憲法に出てくる人権問題のようですね。でも確認の訴えとしては却下されてしまうでしょう。ただし例外的に、証書真否の確認を求める訴えは、事実の確認ですが認められています。証書とは遺言書や契約書などのことで、それらが真正に成立したものであるとの確認を求めるわけですね。そして、その真否如何によって確認を求める原告の法律上の地位を左右し、その後の紛争解決について重大な影響を及ぼします。だから、証書の真否は事実の確認であっても確認の利益を認める意味があるわけです。また「国籍が日本であることの確認を求める」という訴えは一見事実の確認のようですが、国籍が日本であることを起点にしていろいろな法律関係が出来上がっていくはずです。だから、国籍の確認を求める訴えにも確認の利益があるとされています。

 

次に、過去の法律関係についての確認も基本的に認められないとされています。つまり確認というのは現在の法律関係についてすべき、ということですね。たとえばA→B→Cと土地が転売されて、AがAB間の売買の無効を主張してCに土地の返還を求めた場合、CとしてはBから土地を買い受けたときにBが所有権を有していたこと(過去の法律関係)の確認を求め、それが認容されたとしても、だからといって現在Cが所有者だと言えるわけではありません。それよりも、Cはストレートに自らの所有権(現在の法律関係)の確認を求めた方が良い、というわけなのです。

といっても現在の有様はどんなことでも過去と無関係なはずはなく、それは法律関係についても言えることですよね。前回見た最判S61.3.13のように、ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えは、ある人が死亡した時点での法律関係を確認するのだから、過去の法律関係とも言えますね。しかし、ある財産が遺産に属するかどうかが確定することにより、その後の遺産分割などの手続きに役立つから認められているのでした。このように、過去の法律関係が現在の法律関係の基礎となっていて、それを確認し確定することで現在の紛争を直接的抜本的に解決できるのであれば、過去の法律関係であっても確認の利益が認められるとされています。

ただし、それに関連した相続財産絡みの事例でこんな問題が出題されています。

亡Aの相続人は、X及びYのみである。この場合、XがYに対して提起した、亡Aの相続に関し特定の財産がYの特別受益財産であることの確認を求める訴えは、却下される。(平成19年 問1-オ)

最判H7.3.7によれば、民法903条1項は被相続人が相続開始時に有していた財産の価額に特別受益財産の価額を加えたものを具体的相続分を算定する上での相続財産とみなすと言っているのであって、特別受益財産を持ち戻すべき義務は生じないし、特別受益財産が相続財産に含まれるのでもない、だからある財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、現在の法律関係の確認を求めるものとはいえない、とされています。さらに、特別受益財産は具体的な相続分や遺留分を定めるための一要素に過ぎず、より直接的抜本的な紛争の解決ができる他の方法(遺留分侵害額請求や遺産分割審判など)があるのだから、確認の利益を欠くとも言っています。過去の法律関係であっても現在の紛争を直接的抜本的に解決できるのなら確認するけど、特別受益財産かどうかはそうじゃないでしょ、ということです。だから答えは○ですね。

具体的相続分についても判例があります。

共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、訴えの利益を欠く。(平成30年 問2-イ)

最判H12.2.24は、具体的相続分は遺産分割手続における分配の前提となるべきものであって、それ自体を実体法上権利関係ということはできない、また遺産分割審判や遺留分侵害額請求訴訟を離れて具体的相続分だけを判決によって確認しても紛争の直接的抜本的な解決に必要とはいえない、したがって確認の利益を欠く、と言っています。具体的相続分だけを別個に確認してもそれで遺産分割などの中身が決まるわけではないし、遺産分割審判などでそれらの前提問題として判断すれば充分でしょ、ということです。だから答えは○ですね。

 

もう一つ、相手方の権利の不存在といった消極的な確認ではなく、自分の権利の存在といった積極的な確認を求めるべきだ、とも言われているそうです。相手方に所有権がないことの確認を求める、というよりも、自己の所有権の確認を求める、と訴えた方が、より直接的で適切である場合が多いからでしょうね。ただし、前回見た債務の不存在の確認を求める訴えなどは、積極的な訴えなんてあり得ませんので、当然ですが消極的な確認を求めるということになります。何々する義務なんてないはずだ!という争いは割とありそうですし、消極的な確認の訴えって意外と多そうな気がしますね。

 

なんか話が終わらなかったので次回に続く^^;

確認の利益(1)

民事訴訟法の中で、民事訴訟には給付の訴え、確認の訴え、形成の訴えという3種類があるのだということを習いますよね。そして、実際に裁判所に訴えを起こすには、訴えの利益が必要なのだ、ともされています。裁判所という国家機関を動かし、被告にも時間を割いてもらうのだから、それだけの必要性や正当性がなければいけない、ということです。で、上記3種類のうち給付の訴えは分かりやすいですね。要するに相手方に対して「何々せよ」と求める訴えであり、まさにそれが訴えの利益と言えるでしょう。将来の給付を求める訴えさえ認容される場合があります。形成の訴えは形成権の行使による法律関係の形成・変更をするための訴訟で、ちょっとイメージしにくいですが、典型例としては株主総会決議の取消訴訟が挙げられることが多いと思います。法律で定められている場合のみ提起することができ、普通は訴えが可能なときは訴えの利益があると認められます。逆に、事情が変わって形成権を行使する意味がなくなったときは訴えの利益を欠く、と言われた方が分かりやすいですかね。重婚の場合に後婚の取消しを求める訴えは形成の訴えで、後婚が離婚によって解消されたときは訴えの利益を欠くとされています(最判S57.9.28)。

 

ところが、確認の訴えのおける訴えの利益、または「確認の利益」と言われているものって分かりにくくないですか? 権利または法律関係の確認を求める訴えが確認の訴えというものですが、その確認の利益と言われると…。一般論として確認の利益が認められるのは、原告の有する権利や法律上の地位に危険または不安が存在し、そうした危険や不安を除去するために確認判決を得ることが有効かつ適切な場合とされています(最判S30.12.26)。そして、そういう場合に当たるかどうかは、確認の訴えが手段として適切か(方法選択の適切性)、確認対象の選択が適切か(対象選択の適切性)、確認判決をすべき必要性が現に認められるか(即時確定の利益)、被告とされている者が確認判決の名宛て人として適切か(被告選択の適切性)、といった点で判断されます。これら4つの要件を満たさなかったら、確認の利益は認められないとして訴えが却下されるわけですが、そう言われてもやっぱり分かりにくいですね^^; ということで、これらの要件を簡単に見ていきたいと思います。

 

●方法選択の適切性

確認の訴えよりも適切な法的手段が他に存在するときは、確認の利益は認められません。たとえば給付の訴えが可能な給付請求権があるとして、その確認を求める訴えには確認の利益がないとされています。給付の訴えが認容されれば執行力を伴う給付判決が得られ、より適切に解決できると考えられるからです。したがって、給付の訴えができるのなら給付の訴えをすべき、ということなのですね。一方、債務者側から債務の不存在確認を求める訴えを起こすことは原則認められます。しかし、被告である債権者側から給付を求める反訴を提起されると、本訴である債務不存在確認は確認の利益を失うとされています。それが問われているのがこちら。

債務の不存在の確認を求める本訴に対して当該債務の履行を求める反訴が提起された場合には、当該債務の不存在の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。(平成30年 問2-エ)

答えは○です。最判H16.3.25によれば、債務者側が提起した債務不存在確認の訴えの係属中に、債権者側から債務の履行を求める反訴が提起された場合、これら2つの訴訟の中身は結局のところ給付の義務があるかないかを判断する点で共通しており、それなら給付の訴えの方が執行力を付与できる分だけ確認の訴えよりも紛争解決能力が高い、反訴として給付の訴えが提起された以上、債務不存在確認についての審理は不要であり確認の利益がない、との見解が示されています。実務上は、債務不存在確認の訴えが提起されて被告が応訴すると、裁判所は被告に対し反訴提起を求め、一方で原告に対し本訴を取り下げるよう求めるそうですよ。それでも原告が取り下げない場合は、確認の利益なしとの理由で却下することになるわけです。

なお、確認の訴えの話とは別に、上記の問題のケースでは重複起訴の禁止に抵触しないかという問題もあります。債務不存在確認の訴えの被告は、本来それとは別の訴訟として給付の訴えを提起できるはずです。ところが上にも書いたように、この2つの訴訟は実質同じこと(給付義務の有無の判断)をするのであって、それなのに別々に裁判をするのは不経済ですし、矛盾した判決が出てしまうと困るので、別訴を提起することはできないとされているのです。しかし、反訴を提起するのはOKなのですよ。本訴の手続の中で審理する反訴なら、重複審理のムダもないし矛盾する判決が出るのを防ぐことができますからね。

 

こんな問題もあります。

亡Aの相続人は、X及びYのみである。この場合、XがYに対して提起した、特定の財産が亡Aの遺産であることの確認を求める訴えは、却下される。(平成19年 問1-エ)

答えは×です。ずっと以前は、遺産確認の訴えを過去の法律関係の確認と捉えて確認の利益を認めないとする考え方もあったようです。しかし最判S61.3.13は、遺産確認の訴えはある特定の財産が現に被相続人の遺産に属し、現に共同相続人の遺産分割前の共同財産であることの確認を求める訴えである、と述べました。原告が勝訴し確定すると、その特定財産が遺産分割の対象となる財産であることが既判力で確定され、続く遺産分割の審判手続やその確定後に遺産であるかどうかを争うことができなくなるため、原告の意思に沿った解決を図ることができます。だからこの確認の訴えは適法だと判断されたわけですね。遺産確認の訴えは、後続の遺産分割の前提として行われるものですが、それ自体が実体法上の権利関係なのであって、独自に確認の訴えの対象とする実益があるということでしょう。

 

民事訴訟法の話は、どうもややこしくて長くなっちゃいますね^^; ということで次回に続く。

ここにも所有者不明問題が!

限界集落とは、住民の高齢化が進むとともに人口が減少して、一つの共同体としての機能を維持できなくなりつつある集落のことですよね。たまに山奥の峠道を辿ると人が住まなくなって何十年も経った家々が固まっているところなんかがあったりします。限界というより、集落としては死んでしまったという感じですけど。まあでも、東京から車で何時間もかかるということでなくても、その地域の中心都市まで車で行くのに1~2時間かかるようなところは、自給自足の生活でもできない限り暮らしていくのは難しいよなぁ…と思います。自分はまだ50手前で往復数時間程度の車の運転は何ともないですけど、もっと年を取ったら相当にキツそうな気がしますし。冬とか困りますよね。限界集落になってしまうのは、そういう位置的な要因は大きいと思います。

一般に限界集落は、山の中に昔ながらの木造の住家が散在していて、戦後しばらくは杣人が山や畑の仕事をして細々と暮らしていたけど、その子供世代はみんな山を下りて都会へ出て行って、今では高度に高齢化が進んでしまった…というイメージです。山奥の峠道沿いの廃集落なんかは、そういうものなのでしょう。しかしそうではなくて、都会へ通勤する人のために(そればかりではないけど)開発された住宅地が限界集落化する事例も出てきました。以前ここでも記事にした「茨木台ニュータウン」など、好事家?から限界ニュータウンと呼ばれたりするところですね。

 

ちなみに、自分がだいたい小学生から高校卒業あたりまでを過ごした実家があったのが、とある政令指定都市ベッドタウンとして、山を切り開いて造成されたニュータウンでした。山を切り開いて…ということで、ニュータウンの入口から奥に向かって坂道を登る一方という構造。そして一区画ごとにコンクリートブロックの擁壁で区切られて、区画の中は平らに整地されていました。全体的に見ると段々畑のようになっているわけですね。で、その一区画単位で土地が分譲され、そこを買った人が各々自宅を建てて住んでいるのでした。

ニュータウンといっても元々は山なので、自然…かどうかは分かりませんけど、少なくともカブトムシとかクワガタとかトカゲとかカナヘビとかアオダイショウが珍しくない程度にはいましたよ。実家の目の前はちょうど道路と山の境目の法面になっており、斜面にニセアカシアがたくさん植わっていて、初夏になると白い花が咲くのでした。造成地から外れた山の中はだいたい松林で、その中を縫うように山道が付けられていたので、あちこち歩き回ってこの道をこっちに行くとここに出られるのか!みたいな遊びをよくやってましたね。多分、秋になると山に入るキノコ狩りをする人とかのために付けた道なんじゃないかと思うのですが、松茸が採れるって話は聞いたことなかったな…。隣の家に住んでいた爺さんは猟銃を持っていて、たまに警察の人が来てました。でもイノシシとかクマとかが出るって話も聞いたことないな〜。まあ住宅地の近くに、そんな動物がいるとも思えませんけどね。

さて、そんなこんな思い返してみた子供の頃の生活は、まるでいつでも自然と触れ合える意識高い系サブアーバンライフみたいな感じがしてきますが、実態はそんなものではないのです^^; 何しろ、実家から最寄駅まで徒歩25分。行きは下り坂だから楽ですが、帰りは駅から家まで登る一方。真夏はかなりツライですよ。自転車なら行きは10分もあれば余裕で駅まで行けました。でも帰りは徒歩より大変なんですよね。とはいえ横浜とか神戸とかの山沿いの住宅地なんかで見られるハンパない急坂に比べればまだマシだったかも笑 それと、朝出かけて駅で忘れ物に気付いた!なんてことになったら大変です。自転車なら30〜40分、徒歩なら1時間近いロスになってしまいます。だから出かける前にアレを持ってコレを持って…と確認するのが習慣づけられますけど、それでも絶対忘れ物をしないとは言い切れませんよね。

車ならどうかというと、駅前に駐車場でも借りられれば、あるいは最近ならパークアンドライドの駐車場が整備されているところも増えているので、それなら利用しやすいと思います。自分が子供の頃は、駅近くのスーパーが駐車場を月極で貸すというサービスをやっていて、ニュータウン住民の中での利用者は多いようでした。そのうち、家庭の主婦が盛んに自動車の運転免許を取得して個人用の軽自動車や小型車を買うのが流行りだして、自分の母親もあるとき普通免許を取得して原付から乗用車に乗り換え、朝の通勤時に父親を駅まで車で送っていくようになりました。でも、そういう家庭が割と短期間に増えたためか、駅とニュータウンを接続する道路が渋滞するようになりました。駅へ通じる道路は1本だけ。朝になると、そこに車が集中するのです。しかも、ある決まった人がいつもゆっくりめに車を走らせるのを、急いでいるのに追い越すに追い越せなくて後ろに付いて走らざるを得ないのが迷惑!などと母親が騒いでいたりもしました。冬になると路面が凍結して、そこに夏タイヤのまま突っ込んで動けなくなって渋滞する、なんてことも毎年の恒例行事みたいな感じでしたし、車があっても不便なところは残るのですよね。
ご近所付き合いみたいなのは、昭和50〜60年代だけあって、ニュータウンといえども今より濃密だったと思いますが…ゴミ捨てのルールとか町内会のイベントとか回覧板が回ってくるとか、そういうのでトラブっているのはあまり見たことないような。でも近所で葬式があって、ある人が焼香のための香炉を動かしたらそのタイミングが気に入らないとか、何人かの兄弟が続けて病気になって霊能者?的な人に見てもらったらその区画は家を建ててはいけない場所なのだと言われたとか、今考えると奇妙としか言いようのない話がたくさんあったように思います笑 自分はそういうの煩わしいと思う方なので、そういう場所には絶対に住めないですねぇ^^;

 

…おっと、つい長々と自分語りをしてしまった。年寄りの悪いクセですね笑 それで以前、日本で最も有名であろう限界ニュータウン「茨木台」を取り上げました。実際に茨木台に物件を所有している方の動画を見て、限界ニュータウンとは言われているけど、意外と良い感じで生活できるんじゃない?という印象を持ったのですが、こちらの動画を見るとやっぱり厳しそう…とも思えますね^^;

youtu.be

こちらでは、開発初期に土地を買って住み続けておられる方が登場し、開発当初のパンフレットを見せてくれます。いやぁ、味わい深い。そして、60坪ほどの土地の価格が当時約1,200万円だったということで、バブル期の狂乱ぶりがよく分かります。現在の住民の平均年齢は70代半ばとのことで、茨木台の立地を考えると空恐ろしいものがありますね。コロナに罹ったとき救急車で運ばれた身からすると、現実に生命の危険さえあるよなぁ…と思えてしまいますよ。その現実としては、手入れされていない擁壁が崩れて下の住宅を壊してしまい、人命に関わるので仕方なく亀岡市が処置をした、ということがあったそうです。でもそのシーンでナレーションが「(下の住宅が)幸い空き家だったため大事には至らなかった」とか言ってて、空き家が幸いってことになるのはスゴイな…と思いました^^;

前に紹介した動画のうぷ主さんも出演なさっています。茨木市内に(ちゃんとした意味での)自宅があって、茨木台の家は別荘として、あるいは仕事のために使っておられるわけですね。というか、この動画には他にも何人かにインタビューしているのですが、茨木台に定住していると思われるのは開発初期から住み続けている方だけです。他の人はみんな他に自宅があって、そこだけで生活や仕事はできるけど、家がもう1軒あったら便利だから、あるいは安く借りられるから、という理由で茨木台に来ているのですよね。やっぱりここ(だけ)に住むのは…大変そうですもん^^;

 

世の中、コロナの影響で一気にテレワークやリモートワークが定着し、さらには居住地の制限を撤廃する会社も出てきています。ネットでデータをやり取りし、時々ZoomやTeamsで打ち合わせすれば仕事が回るというのなら、働く人が北海道にいても沖縄にいても特に関係ないですからね。だからゴミゴミした都会を抜け出して、空気の綺麗な地方でのびのび生活しよう!と考える人が出てきても不思議ではありません。そういう人には、大阪から近くて、それでいて車でなければアクセスが難しくそれなりに隔絶されていて、標高500mで空気も良い茨木台は、なかなか住みやすいところに思えたりするんでしょうか。しかし、定住するのはやっぱりハードル高そうだなぁ、という気がします。いくらネットが通じても、それだけでは現実に食べ物を運んできてくれたりするわけではありませんし。すると、動画に出てくる人の多くがそうであるように、別荘等として活用するのが良さそうな感じがしますね。自治会に支払う水道施設のお金なんかも含めて100万円台で一戸建てが手に入るのなら買いたい!て人は割といそうです。しかしそこに立ちはだかるのが、所有者不明の問題…ということなのですね^^;

最後に登場した不動産業の方は、司法書士に依頼したりしなかったのでしょうか? といっても、茨木台のように価格が低めな物件の所有者捜索や移転登記手続は、ひょっとしたらあまりやりたいという人はいないかもですね。手間の割には報酬が…という^^; 自分は個人的に興味のある仕事だからやってみたい気もしますが笑

伊藤塾プレ模試

先ほど大きな地震があり、東京も結構揺れましたが皆さん大丈夫でしょうか? 揺れはともかく停電するのが困りますよね^^;

 

さて、もう30年ほど前のことですが、自分が大学を受験していた頃は、大手予備校がやっていた模試を定期的に受けていました。全国総合模試とか、何とか大学模試とか、そういうやつですね。で、学校の先生にも予備校の先生にも「模試を受けたらしっかりと復習しておきなさい!」と、よく言われたものです。でも正直、模試の復習てほとんどやらなかったなぁ…復習は使い慣れた問題集を繰り返すって感じでした。模試の問題って、なぜか2度は解く気にならなかったんですよねぇ…。

 

それはともかく、この前の土曜日に伊藤塾のプレ模試を受けてきました。渋谷のフォーラムエイトという、道玄坂の途中にあるちょっと古いビルの大きな会議室でした。受験者は意外と多く、70〜80人くらいはいたんじゃないですかねぇ。自分は電車の時間を読み間違えてて到着が9時15分くらいになりましたが、その時はもう空席が少なかったです。朝9時に渋谷って、自分としてはちょっと行きにくくて面倒なのですよね笑 あとこれは会場に行ってから気付いたんですけど、プレ模試って記述は採点されないのですよ(解答用紙を持ち帰って自己採点)。それにはちょっとがっかり。でも逆に考えれば気楽に受けられるって感じでしょうか。

 

まず、午前はじっくり問題を読みます。組合せ問題でも選択肢を5つともちゃんと読んで、選択肢ごとにどこが間違っているかを確認するようにしましたよ。民法はまあまあそれでやれるし、そういえばコレ過去問で見たなぁ…みたいな問題もチラホラあって、前回の同時期に比べたら知識量が増えてきたんだな〜とは思います。しかし、会社法はまだまだあやふやなところが多いし、憲法や刑法は過去問で見たことのない論点というか、隙を突かれる感じがしました笑 全体としては、もうちょっと余裕を持って解けるようになるといいんですけどねぇ…。

そして午後。まず多肢択一を60分で解答することを目標に、第1問から第11問までのマイナー科目を一気に片付ける…はずが、なかなかそうは上手くいかないのです^^; 民事訴訟法とか、ちょっと問われ方が変わったりすると思わず問題文をじっと見入ってしまって思いのほか時間を使ってしまいます。結局、マイナー科目を全部解答するのに15分ほどはかかりました。第12問から第27問の不動産登記法は、前回受けた伊藤塾の模試よりは易しく感じましたが、やはりスムーズに次々解けるって感じではないのです。第28問からの商業登記法も同様。確信を持ってこの選択肢はダメでこの選択肢はOK、と思える問題よりも、何となくコレとコレは違うっぽいなぁ…みたいな感じで曖昧に解答してしまう問題が多かったです。これはいけませんね。

まあでも一応60分ちょいで多肢択一の解答が終了し、マークシートを塗り潰してから記述式を解きました。不動産登記法は、申請すべき登記が何かは割とすぐ分かるのですけど、「~の理由を書きなさい」というタイプの問題がたくさん出て、それの解答を考えるのが大変でした。要件を何となく覚えているという程度でも多肢択一なら解答はできますけど、記述となるとそれではちゃんと書けないですしねぇ。商業登記法も、大筋で何が起こっているのかはすぐ分かるのですけど、いろいろなことを見落としてしまいまいた。こちらも「誰々が何々した理由を書きなさい」という問題が出ていて、そこで親会社子会社の関係になるから兼任禁止規定に引っかかる、というところには気が付いても(これは過去問にもありましたね確か)、そこからさらに親会社の社外取締役の社外性喪失には気が回りませんでした。まだまだだな^^;

 

ということで、取りあえず多肢択一の自己採点をしてみたところ、午前29問午後25問正解でした。う〜ん微妙^^; 午前は、刑法を2問も間違えてしまいました。過失犯とか殺人罪の周辺の話は正直あまりよく知らなかったので、この問題によって勉強させてもらいます。会社法も2問不正解だったのですが、そのうち1問は商法の代理商の問題。いや〜、そういえば行政書士の商法・会社法のテキストに代理商って載ってたような…。あとは憲法で1問、民法で1問落としていました。憲法も知らない話が出てきたので、この機会に覚えておきたいです。民法無権代理の問題で間違えてる…でも今読み返すとなぜ間違ったのか分かりません。舞い上がっていたのかなぁ…^^;

午後は、やっぱり多肢択一35問を60分で解くというのは、まだ実力的に難しいのかなぁという気がします。特に不動産登記法で4問、商業登記法で3問落としたのは困りものですねぇ…。とにかく速く答えを出さなくちゃ!と思いながら読んでいるので、単純な読み間違い(文末が「〜できない」となっているのを「〜できる」と思い込むとか)が増える感じがします。それに、そもそもの知識がまだしっかり固まってないのが大問題。正解できたところも組合せに助けられていることが多く、ちょっと聞き方を変えられたり、個数問題になったりしたら答えられないかもしれません。もっと知識を確実にして余裕を持てるようにならないと、読み間違いを減らすのも難しいかな…という感じで、気が重くなりますね。まあでも一応、前回の本試験で不動産登記法8問、商業登記法7問も落としていたことを考えたら、多少は良くなったと前向きに考えてもいいものなのか…笑 ともかく、午後の科目の多肢択一はもっと強化しなければ、です。

 

そして今さらですけど、今回初めてまじまじと記述式の採点基準というか、どの項目にどのように配点されているのかをじっくりと見たのですが…見れば見るほど、記述式は点数を取るという意味では効率が悪いな、と思いました。たとえば今回、商業登記法で「登記できることがあれば記入しなさい」という問題が出ました。登記すべきことがあれば解答欄にそれを書き、なければ解答欄に斜線を引きます。それで問題文や資料を何度読み返しても登記が必要な事柄は見付からないのですが、だからといって登記できることはない!と言い切ってしまうのは勇気が要りますよね? 斜線を引いたり、不動産登記法で「登記不要」と書いたりするのは、なかなか強い決断力が求められるのです。自分も結構長い時間迷って、最後の最後に斜線を引きました。で、試験時間が終わって正解を見たら、やっぱり登記すべきことはなかったのですけど、その配点がたったの3点なのですよ^^; 試験中、あ~これは引っかけ問題だろうか、自分が何かに気付いていないままなのだろうか、それともやっぱり本当に登記することはないのだろうか、ここで点数に差が付いて不合格になったらどうしよう…みたいなイヤなプレッシャーに耐えて、それで影響する点数は3点だけ…ってちょっと割に合いませんね笑

スタディングの山田先生は、この手の問題は「登記できることを前提に解答して良いと思います」とおっしゃっていますが、本当にその通りだよなぁ…と思います。何しろ、斜線を引くべき解答欄に勢い余って何かを書き込んだとしても、それで落とす点数は3点でしかなく、他の部分で充分に取り返せるのです。というか、ここで決断力がどうこう言っているよりは、多肢択一で1問上乗せして3点稼ぐ方が可能性が高そう。だから考え込んでいる時間がもったいないのですよね。もちろん、自信を持って「登記できることはない」と言い切れるのがベストなのは言うまでもありませんが、そんな完璧な状態にはなかなかなれませんし、割り切るべきところは割り切る決断の方が重要だと思いました。

 

そんなこんなで今回のプレ模試ではいろいろ課題が明らかにでき、受けて良かったです。前回の本試験以来、初めてまともに全科目を解答しましたが、やっぱり大変な試験だなぁと思いました。花粉症がツライ時期ですけど頑張りましょうね!^^