目指せ!47歳からの司法書士受験!

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さらに特殊?な登記

工場抵当・工場財団の登記、各種財団の登記というあまり見かけることのなさそうな登記について詳しく解説した本を2冊紹介してきましたが、さらにもう1冊、同じ著者による同じコンセプトの本があるのです。もちろんそれも買ってしまいました! 特殊?な登記三部作ついに完結!って感じですね^^;

 

第1部・工場抵当、第2部・各種財団に続く第3部は、各種動産です。そう、動産にも抵当権を設定できるのです。とはいえどんな動産でも良いわけではなく、産業振興などの国策的な目的を背景に法律で定められた動産が抵当物件になります。具体的には、本のタイトルにもなっている船舶、建設機械、農業用動産ですね。例によって目次と最初の解説部分を読んだだけですが、そこにはこれら3つの分野以外に自動車と航空機も登場するのですよ。それぞれ、自動車抵当法、航空機抵当法という法律を根拠に抵当権を設定できます。自動車に抵当権設定なんて、何だかちょっと新鮮ですね! ただし、これは個人がローンで車を買うとかいうときに設定するのではなく、自動車運送業者に金融の手段を与えるためのものですけど。航空機はそれ自体が非常に高価で担保価値がありますので、航空輸送に供しつつ事業資金などの担保にするというニーズは当然あるでしょう。

しかし、動産を担保化する制度というのはどちらかといえば中小企業の資金調達を考慮したものだそうです。というのも、中小企業は担保価値の大きい不動産を持っていない場合が多く、建設機械や農業用動産などの動産を担保にできれば利便性が高いからです。大規模な建設現場にはたくさんの建設機械が使われていて、大手ゼネコンの看板が立ってたりしますけど、実際に建設機械を持ち込んで作業をしているのは下請けの中小建設業者が多いし、農業も個人経営が圧倒的多数でしょうから、財産らしい財産は建設機械や農業用動産だけということもありそうです。カードローンみたいに個人の信用だけに依存する方法では調達できる資金に限界があるけど、手持ちの機械を担保にできるのなら金融機関としても融資しやすいし、融資額を大きくできるわけですね。

 

抵当権の内容としては、動産に設定するからといって民法の抵当権と物凄く違うものになる、というわけではなく、基本的には不動産の抵当権の規定がそのまま準用されるようです。たとえば異時配当のときに後順位抵当権者は代位の付記登記ができます。また追加設定をするときの登録免許税は金1,500円であり、根拠法令が登録免許税法第13条第2項であることも全く同じなのですよ(^^)

大きく違うのは、どれも消滅請求ができないことですかね。また動産に設定するだけあって先取特権との優先順位がジャンルによって違いがあり、自動車や航空機、建設機械では抵当権は動産先取特権の第1順位と同順位となり、農業用動産では抵当権よりも先取特権が優先することになってます。対抗要件の“対抗”にも違いがあり、農業用動産では登記がなくても悪意の第三者には対抗できるとか、登記があっても即時取得が認められるとか、取引の相手方に抵当権付きであることを告知する義務があるとか、民法では見慣れない規定があります。動産の取引で抵当権の有無を確認する習慣が根付いていないことへの配慮なのだそうですよ。

  

ところで、動産抵当を利用する人はその動産の所有者ってことになるわけですけど、今後動産抵当の利用が広がるか…というと、少なくとも現行の制度では特殊な方法というところから抜け出すことはできないだろうなという気がしますね^^; 少なくとも自動車や航空機に関してはリースでの調達が一般化していますし、おそらく船舶、建設機械、農業用動産も同じではないかと思います。自分で動産を所有しなくて済むし、細かいところまで対応してくれそうな感じがしますよね。それに対して動産抵当は、利用が少ないために金融機関が積極的に扱おうとしないだろうし、だから一般の人が知る機会もないし、それによってますます利用が少なくなるという負のスパイラルに陥る…というほどでもないかもしれませんが、あまり利用されていないのは確かなようです。

そもそも、動産の担保価値の評価って不動産より難しそうじゃないですか? 身近な動産である自動車でさえ、中古車を買う時にチェックすべきポイントはここだ!みたいな話は尽きないわけですが、それは車の状態が1台1台全然違っているからですよね。大まかに○○年ごろのLV234はこんな感じ…といった傾向はあるにしても、です。それが建設機械や農業用動産となったら、それらの専門的な知識があって担保価値をきちんと評価できる人がいないといけませんね。個々の金融機関がそれぞれそういう人を雇っておくなんてことは考えられないから、外部の専門家に査定を依頼するんでしょうけど…そんなことやれる人いるのかな? 不動産は不動産鑑定士がいて地価を公示する制度があってってことである程度客観的に担保を評価できますけど、動産でそれをやるのは結構難しそう。ということは、動産を担保にお金を貸すのは金融機関からすると難しい、ということになってしまいますね^^;

なお、動産を担保とする手段としては、質権を設定する方法があります。しかし質権は動産を質権者に引き渡さなければいけないので(しかも占有改定ではダメ)、自分でその動産を使って事業を行いながらお金を稼いで債権者に弁済する、みたいなことができないのです。これではあまりにも不便ですし、事業ができないのではお金を借りても仕方ないのですよね。譲渡担保という手もありますが、今度は担保権を公示する制度がありません。資金を貸し出す金融機関から見ると、自分の債権がどの程度優先的に弁済されるのか分からない→だから貸さない、ということになってしまいます。そのへんの不都合を解消するべく動産・債権譲渡登記制度というものが整備されており(民法の過去問にも出てきますね)、譲渡人が法人の場合に限られますが動産の登記ができます。これならわざわざ抵当権を設定しなくても譲渡担保でイケる!と思ったらそうでもなくて、債権譲渡の登記は割と普及が進んでいるものの、動産の方はまだまだ利用が少ないらしいです。それは結局、抵当権の場合と同じく評価や換価が難しいという問題点があるからですね。

 

著者の五十嵐先生は、本書の最初に企業の動産を一体として把握し担保化する制度の創設を提唱していらっしゃいます。これは第1部・第2部のような財団を作るようなものでしょうかね。何にしても、利用しやすい制度ができて経済活動が活発になるといいなと思います。それに伴って司法書士の仕事も増えるはずですしね(^^)