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司法書士のお仕事(6)

映画やドラマ、小説や漫画などで、弁護士を主役にしたものはいろいろありますよね。庶民的な人々の日常の人情話から巨悪と対決する熱血ヒーロー譚まで幅広く話を作れそうですし、何より法廷で真実を明らかにし正義を実行するという他のキャラにはない見せ場がありますからね。そこへいくと司法書士は、確かに弁護士よりは地味なのかも…と思わなくもないです。建設機械や農業用動産につき抵当権設定登記をする主人公…て考えづらいですもんね。でもそれは自分がまだ司法書士という仕事をよく知らないし、そもそも発想が貧困なせいなのでしょう^^; というのも、司法書士とその仕事を題材に、こんなミステリーを書き上げてしまう人だっているのですから。

 

書類に記載されている内容とか、依頼人の言ったこととか、普通はあまり注意をひかないようなことが、後々になって重大な意味を持ってくる…という話が多くて、読み応えがあります。あー、あんなこと言ってたのはそういう意味だったのかー、という。それに、登場人物もいろいろと特徴というか、クセのあるキャラ設定になってて面白いです。何人か出てくる司法書士は、皆さんとても多様で多彩で魅力的。子供がいる人だとこういうところに気付きやすいのか、みたいなシーンがあったりして、実務をそばで見ているような気分になれます。また、脇役として出てくる人も設定がしっかり作り込まれているのがいいですね。銀行員の魂の叫びみたいなシーンは、どのくらいリアルな話なのかは分かりませんが、心に訴えかけるものがありました笑

司法書士の仕事のレポートとして読むと、やはり人相手の部分は大変そうだなぁ…と思いました。地面師のようにあからさまな悪意を持って近付いてくるのならともかく、そうではない普通の人でも話が難しくなることがあるのですよね。兄は進学を我慢して弟妹のために働いて家計を助け、ようやく家業を継ぐことになった、だから家の財産は自分がすべて相続すべきだと思っているのに、弟妹は昔から兄が継ぐのが当然視されて自分たちは蔑ろにされ家を出ざるを得なかった、家の財産も兄が当然相続するという態度でいるのは納得がいかない、なんて一家は現実にもありそう。こういう家の相続登記等はお兄さんから依頼を受けることになりそうですけど、その場合でも司法書士としてはお兄さんにばかり肩入れしているわけにはいかず、法律的に間違いがないことはもちろん、弟さんや妹さんも納得できる解決策を提案しなければならず、長年の感情のわだかまりにふれなければいけないのは相当重い仕事になりそうです。また、お客さんばかりでなく司法書士同士の付き合いも人間同士なのだから当然合う合わないはあるはずで、大きな司法書士事務所に就職したはいいけど自分には合わなかったとか、地元で独立開業したらその地域の大御所的な立場の司法書士に配慮しなければいけないとか、一般的な企業で働くサラリーマンとまったく同じ悩みを抱える人だっていそうですね。まあ、そこは社会人なんだしどんな仕事だって同じと言えばその通り。繊細な人はダメージを受けやすい、というのは年代も性別も職種も関係なく当てはまりますね。この本を読むと司法書士の仕事がリアルにイメージできる分、かえってマイナスな部分もリアルに想起させられて、少し心が痛くなるような感じがしますよ^^;

 

ところでネタバレになるといけないので詳しく言いませんけど、一つ不思議だなと思ったのが自宅の閉鎖登記簿から住宅ローンを借り換えたことを知るシーンです。借り換え後には普通の金融機関を抵当権者とした抵当権が設定されますが、借り換え前は根抵当権になっています。この根抵当権の債務者はノンバンクに勤務するサラリーマンで、根抵当権者はその勤務先のノンバンクなのですが、個人の住宅ローンで根抵当権を付けるって普通はしないですよね。カードローンとかリバースモーゲージとか、自分が思っているよりも利用されているのかな? または、ノンバンクの従業員が自社でローンを組む場合、根抵当を設定するのが普通なんでしょうか。話の設定やストーリーからは根抵当権である必然性が分からなくてちょっともやもやしました。いや、何か自分が気付いていない要件があったのかな? 本番の記述式でこの一編が出題されて、当初根抵当権を設定していた理由を答えなさいみたいなことを聞かれたら、問題としてはめっちゃ面白いけどちょっと困るな…と思います笑

 

受験生の立場ではテキストや問題集以外のものを読む時間を取るなんて時間の無駄遣い!であることは確かですが、たまに息抜きにこういう本を読んでみるのも気分転換になっていいと思いますよ。読み終わってから、さあ相続にまつわる各種論点の復習をするか!という気持ちになれましたし。要は、ちょっと勉強に疲れたときに、モチベーションを回復してくれるものなら何でもいいのですけど^^;