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自発性の期待

誰かが自発的に何かをすることを期待する…という発想で作られた規定というものが、会社法の中にいくつかありますよね。民法不動産登記法でさんざん出てくる不動産の権利の登記は、他の人に対して権利を主張したい人がするのであって、そうでなければしなくてもよい、という建前になっています。私的自治の原則の表れとでも言うんでしょうか。でも所有権にしたって抵当権にしたって登記しなければほとんど誰にも対抗できないのだから、普通はしますよね。そういうのも自発的と言えなくもないかもしれませんけど、ここではもうちょっと施政者側のこうなってくれたらいいな…という意図が感じられるものを見てみたいと思います笑

 

●会計参与

会社の会計を監査する役割というのは、明治23年の商法制定時から監査役の制度があって、結構歴史があります。戦後に入って大規模な企業不祥事が連発して、次第に規制が強化されてきました。現在は、会計監査と業務監査の両方を行う監査役と、会計監査に特化した会計監査人がいますね。しかし、監査役も会計監査人も、何となく大規模な会社が設置するものって感じがします。大会社は会計監査人の設置義務があるとか。それに対して会計参与は、中小企業での活用が想定されている機関です。株式会社で取締役と協同して計算書類の作成を行う会社役員で、平成17年の会社法によって導入された、割と新しい制度なのですね。道理で馴染みのない言葉だなーと思った笑 公開会社ではない取締役会設置会社監査役を置かない場合に必置とされていますが、それ以外の機関設計を採用する会社は設置するもしないも任意です。

中小企業では、日々の会計帳簿を付けるところは社長さんなどが自分でやるとしても、決算報告など計算書類の作成にはある程度以上の知識が必要なため、税理士さんに手助けしてもらうということが以前から一般的に行われていました。そこで、計算書類についての助言をしてくれる人を会社内に組み込むことで、より公正な会計を中小企業にも広めようという目的で作られた制度なのです。個人事業から成長して会社が大きくなったという場合に、社長さんが個人の感覚でお金を管理していて、いわゆるどんぶり勘定で経営していて危なっかしい、みたいな話はよくあるようです。そういうところに専門的な知識のある人が会計参与として入っていけば、会社としての管理が適正化され、経営の安定にも資するだろうというわけです。こういった沿革から、だいだいは税理士さんが会計参与になるようですね。ただし制度的には、会計参与になれるのは税理士および税理士法人または公認会計士および監査法人であり、税理士法人または監査法人が会計参与になった場合は職務を行うべき者を会社に通知することになっています。

 

で、この会計参与という機関は、中小企業が自発的に設置することを期待して作らているのです。たとえば普段助言してもらっていた税理士さんを会計参与として会社に来てもらった場合、会社役員が一人増えたということになりますから、その分会社にとっては役員報酬などのコスト増につながります。税理士さんから見ても、単に外部からアドバイスしていただけの立場から会社役員になるので責任が重くなり(会計参与は株主からの責任追及の対象になります)、より多額の報酬を請求することになるでしょう。一方、この会社と取引のある銀行などからすると、会計参与を置いたことで会社の財務状況が正確に分かるようになる、と思えます。そうすれば会社の信頼度が向上し、金融機関から見て融資してもよいと思いやすくなるかもしれません。確かにコスト増な部分もあるけれど、それ以上のメリットを得られる可能性があるというわけですね。大規模な会社については監査役や会計監査人による監査制度の導入を法律によって義務付けていますが、中小規模の会社に対しては自発性を求める制度にしたところが興味深いなと思います。まあ単に法律で義務付けるまでもない(義務付けられない)てことかもしれませんけど^^;

 

新株予約権

新株予約権は、発行した株式会社に対して行使することにより、株式の交付を受けられるという権利です。これもあまり馴染みがなかった言葉です。

とはいえ株式の交付を受ける権利というもの自体は前からあって、自分がまだ若い頃は新株予約権ではなく「転換社債」とか「ワラント債」とか呼ばれてました。転換社債は一定の価格で株式に転換してもらう権利の付いた社債ワラント債は一定の価格で新株を購入できる権利の付いた社債です。いずれも社債のオプションという形式だったのですね。これらが2001年の商法改正で整理されて「新株予約権」という仕組みになりました。新株予約権社債とセットで新株予約権社債(昔のワラント債とほとんど同じと思ってよいのですかね)として発行されることもあるけど、新株予約権だけを単体で発行することもできます。で、転換社債ワラント債の「一定の価格で」というところは、新株予約権の行使価格に当たります。行使価格は、この価格の金銭を払い込むことによって株式の交付を受けられる、という金額です。ある新株予約権1個を行使して1株の交付が受けられるとして、行使価格が100万円と決められていたら、事象としては100万円で1株買うことができるわけです。

新株予約権を投資対象と見る場合、次のようにしてリターンを得ます。まず、先ほどの新株予約権を発行した会社の株価が1株=110万円になったとしましょう。そうしたら新株予約権者は早速100万円を払って新株予約権を行使し、会社から株式1株の交付を受け、それを110万円で売却すれば、差額の10万円を取得することができます。成長著しいベンチャー企業が上場するタイミングなんかだったら、もっとリターンが大きくなるかもしれません。夢が膨らみますね^^

 

この仕組みによって、新株予約権は取締役や従業員の報酬として利用されています。ストックオプションというものですね。先ほどの会社で新株予約権を報酬として取締役に与えたとすると、株価が行使価格100万円を上回っているときであれば利益が得られます。すると取締役としては、仕事を頑張って会社を盛り立てれば株価が上昇して自分の儲け分が増えるわけで、業務遂行に対する強いインセンティブになるわけです。それは会社にとっても株主にとっても良いことだし、社会的な効用も大きいのだろうと思われます。

企業の取締役などになる人というのは有能な人が多いと考えられ、会社の業務に集中させるためには法律の規定で縛りをかけるより、報酬が高くなる可能性を与えて自発的に頑張らせる方が良い、ということでしょうかね。その方が良いパフォーマンスを発揮してくれそうですし。そして業績を上げて高額な報酬を出してくれる会社には、また有能な人が集まってくる…まあ、実際にはそんなに単純なものではないのでしょうけど、ストックオプションの話ってなぜか特有の雰囲気があって微妙に苦手です。人がお金に群がっている場面をイメージしてしまうからでしょうか^^; いやいや、お金がなかったら生きていけないし、お金を稼ぐことの何がいけないの?と言われればその通りなのですが、同じ理由で経済学の本なんかもちょっと読むのが面倒と思ったりすることがあります笑

 

最後話がそれてしまいましたが、何だかんだ言っても自発性って大事ですよね。強制されるより自分から勉強する方が頭に入る気がするものです。それでちゃんと結果が出れば言うことなしですが^^;